「電費は世界トップに拘る」トヨタ、次世代BEVで航続1000kmを2026年に実現へ

  • トヨタは次世代BEVで航続1000kmを2026年に実現する。写真は開発するBEV向け全固体電池
トヨタ自動車は、「クルマの未来を変えていこう」をテーマにした技術説明会「Toyota Technical Workshop」を報道向けに開催。その中で、航続距離1000kmを実現するBEV(バッテリー式電気自動車)を2026年に導入することを発表した。

◆トヨタが開発する4つの次世代バッテリー
説明会では、BEV向け全固体電池の実用化、水素を燃料とする次世代燃料電池セルの実用化計画など、開発中のコンセプトを含めた様々な技術を報道陣に公開した。

中でも目下注目されているのが世界的な普及が急がれているBEVに対するトヨタの戦略だ。同説明会でも大きなトピックとして取り上げられ、「2026年に導入される次世代BEVでは、航続距離1000kmを実現。その車両への搭載を目指し、性能にこだわった角形電池を開発中」であることが発表された。

「パフォーマンス版」と名付けられたこの角形電池は、電池のエネルギー密度を高めながら、空力や軽量化などの車両効率向上により航続距離を伸ばし、同時にコストは現行『bZ4X』比で20%減、急速充電20分以下を目指すという。

さらに、「普及版」としてこれまでハイブリッド車(HEV)の『アクア』や『クラウン』に搭載してきたバイポーラ構造の電池をBEVに適用。材料には安価なリン酸鉄リチウムを採用し、2026~2027年の実用化に向けチャレンジをおこなうとした。廉価モデル向けとしながらも、現行bZ4X比で航続距離は20%向上、コスト40%減、急速充電30分以下をめざす。

この普及版と並行して、バイポーラ構造にハイニッケル正極を組み合わせ、さらなる進化を実現する「ハイパフォーマンス版」の電池も、2027~2028年の実用化に向け開発を進めている。パフォーマンス版角形電池と比べてもさらに航続距離10%向上、コスト10%減、急速充電20分以下と、「圧倒的性能を実現」するという。

そして、次世代電池として期待されている全固体電池の実用化についても新たな計画が発表された。当初トヨタはHEV向けの導入を明かしていたが、「課題であった電池の耐久性を克服する技術的ブレイクスルーを発見したため、従来のHEVへの導入を見直し、期待の高まるBEV用電池として開発を加速」するという。現在量産に向けた工法を開発中で、2027~2028年の実用化にチャレンジする。これは上記のパフォーマンス版角形電池と比べても航続距離で20%向上するといい、さらに一段レベルアップした同電池比で航続距離50%向上する仕様も研究開発中と説明した。

こうした電池の進化や、車体を3分割の新モジュール構造とし生産工程を大幅に削減する生産技術「ギガキャスト」の採用、コンベアをなくした自走による生産ラインの実現などにより、次世代BEVを2026年から市場に投入し、2030年には350万台のうち170万台をBEVとする。「電費は世界トップに拘り、稼いだ原資で、お客様の期待を超える商品力向上を図り、収益を確保する」とBEVファクトリープレジデントの加藤武郎氏はアピールする。


  • トヨタは次世代BEVで航続1000kmを2026年に実現する。写真は開発するBEV向け全固体電池
  • トヨタが開発する次世代バッテリー(写真を一部加工済み)
  • トヨタ自動車 副社長 CTO 中嶋裕樹氏
  • トヨタ自動車 BEVファクトリープレジデントの加藤武郎氏
  • トヨタが描くBEVのビジョン。航続距離1000kmを実現する
  • トヨタは2030年、350万台のうち170万台をBEVとする計画
  • BEVで生産工程、工場投資などを2分の1にする計画
  • BEVの車体の新モジュール構造
  • トヨタのBEV収益
  • ギガキャスト(右)による生産で工程を大幅に削減できる
  • 小型eAxle。左が現在『bZ4X』に搭載されるもので、さらに小型化が見込まれる
  • 電動車の原価低減を実現する要素技術
  • 自動運転システムを搭載するe-Palette
  • 移動コンビニ仕様のe-Palette
  • 電動車いすの「JUU」は階段などの段差も昇降が可能。タイヤにはヤマハのオフロードバイク『セロー』のものを採用している
  • Toyota Technical Workshop

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