23歳ロバンペラがWRC連覇を達成…今季も全冠制覇のトヨタ、残すは“忘れ物”のジャパン凱旋勝利
2023年の世界ラリー選手権(WRC)第12戦“中欧ラリー”が10月29日に終了し、トヨタのカッレ・ロバンペラが2年連続2度目のドライバーズタイトル獲得を決めた。今季も全冠制覇のトヨタは若き覇者らとともに、昨季成し遂げられなかった最終戦ジャパンでの凱旋勝利を目指す。
◆ロバンペラとエバンス、トヨタ同門の王座争い
今季全13戦中の第12戦はドイツ、チェコ、オーストリアの3カ国を跨ぐ行程の「セントラル・ヨーロピアン ラリー」、“中欧ラリー”である。ここを迎える段階で、ドライバー、コ・ドライバー、マニュファクチャラーの各タイトルをトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team=TGR-WRT)が独占することは既に決定していた。
3年連続のマニュファクチャラーズタイトル獲得は第11戦チリで決まり、ドライバーズタイトルも「GRヤリス Rally1 HYBRID」で戦うトヨタ勢が手中におさめることは確定済み(コ・ドライバー部門王座は基本的にドライバー部門王座に連動)。現在は「Rally 1」規定に沿ってつくられているトップカテゴリーマシンによるタイトル争いは、今季もトヨタの“全冠制覇”である(3年連続)。
ドライバーズタイトル争いは、連覇を目指す#69 カッレ・ロバンぺラが優位な状況となっていた。ポイント首位で217点を獲得しているロバンペラを逆転できる可能性を唯一、残しているのは僚友の#33 エルフィン・エバンスだが、差は31点もある。
WRCは各ラリー、30点が個人の最大獲得ポイントとなる原則。優勝で25点、最終のスペシャルステージ(SS=競技区間)である「パワーステージ」で最大5点(1位)を追加できる仕組みだ。つまり31点ビハインドのエバンスは、少なくとも第12戦・中欧でロバンペラとの差を詰めない限り、最終第13戦ラリージャパンに初戴冠の望みをつなげることができないという厳しい状況にあった。
◆エバンスがクラッシュ、ロバンペラ戴冠へ
ドライバーズタイトル争いは第12戦・中欧の土曜(10月28日)に実質的決着を迎える。ラリー総合の3番手を走っていた#33 エバンスがコースオフ、コース脇の建物にクラッシュしてデイリタイアとなってしまったのだ。
こうなると#33 エバンスは最終日の日曜に再出走しても(もちろん再出走するが)、ラリーの総合順位で10位以内に入ってのポイント獲得は絶望的。あとはパワーステージ(PS)で加点して、#69 ロバンペラがこのラリーを無得点に近い結果で終える、という展開以外にエバンスの“望み”が最終戦につながる線はない。
#33 エバンスがクラッシュした時点で#69 ロバンペラはラリー総合の首位に位置していた。そして“状況”を理解して、2番手に下がるというリスク回避策を採る。このラリーでのロバンペラ連覇決定がほぼ確実な状勢となった。
#69 ロバンペラは第12戦・中欧を2位(以上確定の状況)で完走し、2年連続2度目の王座獲得を決めた(コ・ドライバーのヨンネ・ハルットゥネンも連覇)。
◆王者ロバンペラ「今季の戦いを誇りに思う」
2023年WRC王者カッレ・ロバンペラのコメントは以下の通り。
「今はとてもいい気分だよ。タイトル争いは常に両肩に大きな重荷を背負っているようなものだから、本当にホッとしている。今年は、昨年以上にタフでチャレンジングだった。競争は厳しかったけど、自分たちは本当にいい仕事をしたと思っている」
「今シーズンの戦いをとても誇りに思うし、1回目よりも2回目の方がタイトル争いを楽しもうとしてもいた。今回(第12戦)は、久々にトリッキーなコンディションに見舞われて難しいラリーだったけれど、自分たちのプランを冷静に進めることができた。エルフィン(エバンス)がコースオフした時点で(今回のラリーの)優勝争いをする必要がなくなったのは確かだ。なぜなら、自分たちはより大きなゴール(タイトル決定)を目指していたんだからね」
「(コ・ドライバーの)ヨンネ(ハルットゥネン)とチーム全員、そして応援してくれたみなさんに心から感謝したい。次のラリージャパンは、とにかく楽しんで走りたいと思っている」
父もWRC優勝経験者のハリ・ロバンペラで、少年時代から“神童”との評価も聞かれたカッレ・ロバンペラ(フィンランド国籍)。2000年10月1日生まれなので23歳になったばかりだが、早くもWRC王座V2である(昨年はぶっちぎりの最年少王座獲得記録も樹立、22歳の誕生日の翌日だった)。今季の勝利数はここまで3に留まっているが、安定した戦いぶりで王座をキープ。この先、どんな時代を築いていくのかが注目される新世代覇者だ。
エバンスはPS1位を獲り、意地を見せた。しかしタイトル争いに関しては、最終戦を前に“最後の敗者”ということに。ラリー後のコメントで「この週末を迎えるにあたってタイトル獲得が望み薄であることは分かっていた。それでもやってみようという気持ちだった」と語っており、状況とその決意から、クラッシュはやむを得ない結果でもあっただろう。悲願ともなりつつあるエバンスの初王座獲得は来季以降に持ち越された。
◆勝田は今回5位。次のジャパンで2年連続表彰台を狙う
第12戦・中欧の優勝者は#11 ティエリー・ヌービル(ヒョンデ i20 N Rally 1 HYBRID)。2位が#69 ロバンペラで、3位には#8 オット・タナク(Mスポーツ・フォード プーマ Rally 1 HYBRID)が入り、ヒョンデ、トヨタ、Mスポーツ・フォードが表彰台を分け合う結果となった。
ちなみにMスポーツ・フォードの#8 タナクは来季2024年、ヒョンデに復帰することが決まっている。2019年にはトヨタで王者となった経歴も有するタナク、かなりの“渡り鳥”ぶりである。
日本の期待、#18 勝田貴元(GRヤリス Rally1 HYBRID)は第12戦・中欧を5位でフィニッシュした。今季の勝田は、通算8冠(トヨタでは20、21年に戴冠)を誇り現在はパートタイム参戦の#17 セバスチャン・オジェが不在の際にトヨタ(TGR-WRT)のマニュファクチャラーポイント対象となる“登録ドライバー”の重責も担ってきた(第12戦・中欧には#17 オジェも参戦=4位)。
勝田のシーズン最高位は第9戦フィンランドでの3位で、3シーズン連続となる「WRC総合での表彰台1回以上」を既に果たしている。
迎える最終戦は母国戦のラリージャパン。昨季は3位で自身通算3度目の表彰台だった。通算5度目となる2年連続の母国表彰台を決めてほしいところであり、今度は3位と言わずに自己最高タイの2位、あるいはその上も、と期待は高まる。ともあれ、表彰台登壇には(あたりまえの話だが)堅実かつ速い走りが必須だろう。“世界の走り”を披露して、日本のファンを沸かせてもらいたい。
◆WRC最終戦ラリージャパンは11月16~19日に開催
2年連続開催となる愛知・岐阜でのラリージャパン、その日程は11月16~19日。昨年、新生ラリージャパンの初代ウイナーに輝いたのは#11 ヌービルで、ヒョンデの1-2フィニッシュだった。トヨタに全冠制覇されたヒョンデがトヨタの母国でひとつやり返した格好だが、ヌービルとヒョンデ陣営はその再現を狙ってくるだろう。
トヨタの方は、当然、昨季果たせなかった「全冠&日本凱旋勝利」という“シーズン・コンプリート”を目指す。TGR-WRT会長でもある豊田章男トヨタ会長も今回の勝利コメントのなかで「まだ“忘れ物”がある」という表現を多用しながら、チームの面々にシーズン最後のエールを送っている。ラリージャパンには#17 オジェも参戦するので、マニュファクチャラー登録外となる#18 勝田を含めた4台のGRヤリス Rally1 HYBRIDがトヨタの母国勝利に向けてスタンバイする。
そしてMスポーツ・フォードの#8 タナクも、ヒョンデ移籍を前にMスポーツ・フォードへの置き土産となる勝利に照準を据えてくるはずだ。総合上位でどんな戦い模様が描かれるのか、楽しみである。
なお、「ジャパンモビリティショー2023」(東京ビッグサイト)の会期最終日である11月5日には、ラリージャパン開催を前にした関連イベント、トークショーやデモ走行がスケジュールされており、勝田貴元も参加する予定となっている(デモ走行は4日にも実施予定、勝田貴元が参加するのは5日の予定)。また、来季2024年もラリージャパンが11月に最終戦として開催されることが10月中旬に発表されている(来季もWRCは全13戦の予定)。
*上記の結果、内容は日本時間10月30日12時の段階の情報等に基づく。
◆ロバンペラとエバンス、トヨタ同門の王座争い
今季全13戦中の第12戦はドイツ、チェコ、オーストリアの3カ国を跨ぐ行程の「セントラル・ヨーロピアン ラリー」、“中欧ラリー”である。ここを迎える段階で、ドライバー、コ・ドライバー、マニュファクチャラーの各タイトルをトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team=TGR-WRT)が独占することは既に決定していた。
3年連続のマニュファクチャラーズタイトル獲得は第11戦チリで決まり、ドライバーズタイトルも「GRヤリス Rally1 HYBRID」で戦うトヨタ勢が手中におさめることは確定済み(コ・ドライバー部門王座は基本的にドライバー部門王座に連動)。現在は「Rally 1」規定に沿ってつくられているトップカテゴリーマシンによるタイトル争いは、今季もトヨタの“全冠制覇”である(3年連続)。
ドライバーズタイトル争いは、連覇を目指す#69 カッレ・ロバンぺラが優位な状況となっていた。ポイント首位で217点を獲得しているロバンペラを逆転できる可能性を唯一、残しているのは僚友の#33 エルフィン・エバンスだが、差は31点もある。
WRCは各ラリー、30点が個人の最大獲得ポイントとなる原則。優勝で25点、最終のスペシャルステージ(SS=競技区間)である「パワーステージ」で最大5点(1位)を追加できる仕組みだ。つまり31点ビハインドのエバンスは、少なくとも第12戦・中欧でロバンペラとの差を詰めない限り、最終第13戦ラリージャパンに初戴冠の望みをつなげることができないという厳しい状況にあった。
◆エバンスがクラッシュ、ロバンペラ戴冠へ
ドライバーズタイトル争いは第12戦・中欧の土曜(10月28日)に実質的決着を迎える。ラリー総合の3番手を走っていた#33 エバンスがコースオフ、コース脇の建物にクラッシュしてデイリタイアとなってしまったのだ。
こうなると#33 エバンスは最終日の日曜に再出走しても(もちろん再出走するが)、ラリーの総合順位で10位以内に入ってのポイント獲得は絶望的。あとはパワーステージ(PS)で加点して、#69 ロバンペラがこのラリーを無得点に近い結果で終える、という展開以外にエバンスの“望み”が最終戦につながる線はない。
#33 エバンスがクラッシュした時点で#69 ロバンペラはラリー総合の首位に位置していた。そして“状況”を理解して、2番手に下がるというリスク回避策を採る。このラリーでのロバンペラ連覇決定がほぼ確実な状勢となった。
#69 ロバンペラは第12戦・中欧を2位(以上確定の状況)で完走し、2年連続2度目の王座獲得を決めた(コ・ドライバーのヨンネ・ハルットゥネンも連覇)。
◆王者ロバンペラ「今季の戦いを誇りに思う」
2023年WRC王者カッレ・ロバンペラのコメントは以下の通り。
「今はとてもいい気分だよ。タイトル争いは常に両肩に大きな重荷を背負っているようなものだから、本当にホッとしている。今年は、昨年以上にタフでチャレンジングだった。競争は厳しかったけど、自分たちは本当にいい仕事をしたと思っている」
「今シーズンの戦いをとても誇りに思うし、1回目よりも2回目の方がタイトル争いを楽しもうとしてもいた。今回(第12戦)は、久々にトリッキーなコンディションに見舞われて難しいラリーだったけれど、自分たちのプランを冷静に進めることができた。エルフィン(エバンス)がコースオフした時点で(今回のラリーの)優勝争いをする必要がなくなったのは確かだ。なぜなら、自分たちはより大きなゴール(タイトル決定)を目指していたんだからね」
「(コ・ドライバーの)ヨンネ(ハルットゥネン)とチーム全員、そして応援してくれたみなさんに心から感謝したい。次のラリージャパンは、とにかく楽しんで走りたいと思っている」
父もWRC優勝経験者のハリ・ロバンペラで、少年時代から“神童”との評価も聞かれたカッレ・ロバンペラ(フィンランド国籍)。2000年10月1日生まれなので23歳になったばかりだが、早くもWRC王座V2である(昨年はぶっちぎりの最年少王座獲得記録も樹立、22歳の誕生日の翌日だった)。今季の勝利数はここまで3に留まっているが、安定した戦いぶりで王座をキープ。この先、どんな時代を築いていくのかが注目される新世代覇者だ。
エバンスはPS1位を獲り、意地を見せた。しかしタイトル争いに関しては、最終戦を前に“最後の敗者”ということに。ラリー後のコメントで「この週末を迎えるにあたってタイトル獲得が望み薄であることは分かっていた。それでもやってみようという気持ちだった」と語っており、状況とその決意から、クラッシュはやむを得ない結果でもあっただろう。悲願ともなりつつあるエバンスの初王座獲得は来季以降に持ち越された。
◆勝田は今回5位。次のジャパンで2年連続表彰台を狙う
第12戦・中欧の優勝者は#11 ティエリー・ヌービル(ヒョンデ i20 N Rally 1 HYBRID)。2位が#69 ロバンペラで、3位には#8 オット・タナク(Mスポーツ・フォード プーマ Rally 1 HYBRID)が入り、ヒョンデ、トヨタ、Mスポーツ・フォードが表彰台を分け合う結果となった。
ちなみにMスポーツ・フォードの#8 タナクは来季2024年、ヒョンデに復帰することが決まっている。2019年にはトヨタで王者となった経歴も有するタナク、かなりの“渡り鳥”ぶりである。
日本の期待、#18 勝田貴元(GRヤリス Rally1 HYBRID)は第12戦・中欧を5位でフィニッシュした。今季の勝田は、通算8冠(トヨタでは20、21年に戴冠)を誇り現在はパートタイム参戦の#17 セバスチャン・オジェが不在の際にトヨタ(TGR-WRT)のマニュファクチャラーポイント対象となる“登録ドライバー”の重責も担ってきた(第12戦・中欧には#17 オジェも参戦=4位)。
勝田のシーズン最高位は第9戦フィンランドでの3位で、3シーズン連続となる「WRC総合での表彰台1回以上」を既に果たしている。
迎える最終戦は母国戦のラリージャパン。昨季は3位で自身通算3度目の表彰台だった。通算5度目となる2年連続の母国表彰台を決めてほしいところであり、今度は3位と言わずに自己最高タイの2位、あるいはその上も、と期待は高まる。ともあれ、表彰台登壇には(あたりまえの話だが)堅実かつ速い走りが必須だろう。“世界の走り”を披露して、日本のファンを沸かせてもらいたい。
◆WRC最終戦ラリージャパンは11月16~19日に開催
2年連続開催となる愛知・岐阜でのラリージャパン、その日程は11月16~19日。昨年、新生ラリージャパンの初代ウイナーに輝いたのは#11 ヌービルで、ヒョンデの1-2フィニッシュだった。トヨタに全冠制覇されたヒョンデがトヨタの母国でひとつやり返した格好だが、ヌービルとヒョンデ陣営はその再現を狙ってくるだろう。
トヨタの方は、当然、昨季果たせなかった「全冠&日本凱旋勝利」という“シーズン・コンプリート”を目指す。TGR-WRT会長でもある豊田章男トヨタ会長も今回の勝利コメントのなかで「まだ“忘れ物”がある」という表現を多用しながら、チームの面々にシーズン最後のエールを送っている。ラリージャパンには#17 オジェも参戦するので、マニュファクチャラー登録外となる#18 勝田を含めた4台のGRヤリス Rally1 HYBRIDがトヨタの母国勝利に向けてスタンバイする。
そしてMスポーツ・フォードの#8 タナクも、ヒョンデ移籍を前にMスポーツ・フォードへの置き土産となる勝利に照準を据えてくるはずだ。総合上位でどんな戦い模様が描かれるのか、楽しみである。
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