【ホンダ N-BOX JOY】「もう荷室とは呼ばないで」レジャーシートを広げたような空間をクルマに

  • 本田技術研究所デザインセンターデザインCMFの松村美月さん(左)とデザインパッケージ担当の飯泉麻衣さん(右)
ホンダから『N-BOX』をベースに「気楽さ」をテーマにした第3のモデル、『N-BOX JOY』が発表された。

N-BOXが持つ質感の高いデザインや軽乗用車最大級の室内空間を活かし、クルマを「まるごとくつろぎの場所」とするモデルだという。インテリアは、汚れが目立ちにくいチェック柄のシートを採用し、後部座席を倒すことで現れるフロア後端までフラットな空間など、新たなサードスペースを提案する。

そんなコンセプトだけに、こだわりはインテリアに詰まっている。特に「後部スペース」が最大の特徴だという。開発を担当したインテリアデザイナーやCMF(色、素材、表皮)デザイナーにそのねらいを聞いた。

◆レジャーシートを広げたような空間をクルマに
N-BOXといえば、軽自動車サイズをフルに活用した室内空間の広さが長所だ。N-BOX JOYでは、その長所を活用する方向で検討を始めたという。特に後席を全て倒した際の空間は、荷物を置くだけではもったいない。人が乗り込んでもさらに十分な広さがあったので、「この空間で楽しいことができそう」と考えた。

「ふらっとテラス」と名付けた後部の空間は、チェック柄が施されたくつろぎのスペースが広がる。本田技術研究所 デザインセンター デザインCMFの松村美月さんは、「N-BOXが多くのお客様に使っていただいているのと同じように、N-BOX JOYも幅広いお客様に使っていただきたいので、チェック柄や色も含めてジェンダーフリーで、年代も問わないものを目指した」と話す。

こうした考えに至った背景にはコロナ禍があった。「外に出かけてのんびりリラックスしたいという思いがありながらも、荷物を持って遠出するよりは、自分の身近なところで気軽に過ごしたいという価値観の変化があった」と松村さんは話す。そこでN-BOXの広い空間に、レジャーシートを広げてみたら、楽しい空間になるということに気づいたとか。

「実際に市販のチェックの布を買ってきて、N-BOXの中に敷いて、みんなで座ったりするとすごく楽しいし、落ち着いてリラックスできる空間が広がりました。それならばチェック柄をそのままつけてしまおう、というのがこの柄のスタートです。レジャーシートをパッと広げたような空間がシートを倒すだけでできるというところがポイントなんです」

インテリアデザインを担当した本田技術研究所 デザインセンター デザインインテリア担当の藤原名美さんも、「他車と比較しN-BOXはセンタータンクレイアウトにしているおかげで、シートがすごくフラットに収納でき、かつ、頭上高もかなり高い。そこで乗り込んでテールゲートを開けたところ、空間が抜けて、空間力の凄さを感じました」と明かす。

このチェック柄はフロントシートやリアシートだけでなく、リアシート背面から床面にまで敷かれている。いわゆる「荷室」とはまったく異なる空間をつくり上げた。防水加工も施されているため、気軽に、カジュアルに使えるのが嬉しい。

◆チェック柄のチョイスと国内初の新技術
ひと口にチェック柄といってもその色やパターンは様々だ。そのチョイスには松村さんのこだわりが光る。

「鮮やかすぎるとカジュアルすぎるとか若っぽい見え方になってしまうので、ベージュを基調としながらもできるだけ色味は落として、ベージュの柔らかさとか親しみみたいなところの色合いを担保しました」

チェック柄の中にはブルーとオレンジが織り込まれている。「ブルーとオレンジは反対色、補色なので混ぜるとグレートーンに見えるんです。ベージュ一色だとゴミや汚れが目立つので、ぱっと見はベージュでも、ブルーとオレンジとベージュが混ざり合う複雑な構成になっているからこそ、汚れがついてもあまり目立ちにくく、この上で過ごしていただくときに、ゴミや汚れを気にせずに使っていただけるかなと思っています」とこだわりを語る。

チェック柄そのものも「太さを吟味した」という。「細かすぎると女性らしいとか、太すぎると不骨で男性っぽい印象に繋がりますので、そういったところもジェンダーや年代を問わないデザインを意識しました。N-BOXのサイズの中にマッチするベストなものを見極めて、このサイズの柄にしました」と松村さんは話した。

またこの空間を作り上げるために、荷室部分に敷かれたボードに新技術を盛り込んだ。通常は樹脂で成形されたボードに不織布などが貼られているものだが、シートと同じ表皮を貼ることにこだわり、国内初の表皮と基材の整形同時接着を実現したという。「通常よりも一行程増やすようなイメージで、熱の掛け具合などを工夫して同時に接着することが可能になった」と松村さん。「もしこれができなかったらN-BOX JOYは誕生しなかったかもしれません」というほどの需要なポイントだ。

◆あえて80mm「上げた」床面のポイント
Dピラー付近には収納スペースが設けられている。スライドドアがあるクルマではスペースの都合上、採用は難しいがコンセプトである「ふらっとテラス」実現のためにあえてこだわった。「のんびりしているときに、モノが周りにあふれてしまうと、せっかくのふらっとテラスが台無しになってしまう」(藤原さん)からだ。実はこの収納スペースは新型N-BOXシリーズ共通で採用されている。つまり、新型N-BOXシリーズ開発当初からN-BOX JOYは計画されていたということだ。

ホンダのお家芸である「センタータンクレイアウト」(燃料タンクを前席下に収めることで、室内空間を最大化する技術)などにより床面が低く室内高も高いN-BOXだが、N-BOX JOYでは後端部分をあえて80mmかさ上げすることでフラットな形状としている。

パッケージングを担当した飯泉麻衣さん(本田技術研究所 デザインセンター デザインパッケージ担当)は、「外を見ながらくつろぐときには、飲み物を飲みたくなったり、自由な姿勢をとりたくなるでしょう。そうしたときに後端部分がフラットではないとリラックスできなかったり、飲み物を置く場所も正直困ってしまいます。そこで後端部分を80mm上げたのです」と工夫を語る。

同時にフラットになることからペットのゲージも水平に置きやすくなった。また80mm上げたことでその下できた空間には、小さな折り畳みテーブルと折り畳みチェアなどを入れられるようにもなっている。

近年、SUVテイストを纏った個性ある軽ハイトワゴンが多く出てきている。そのいずれもがCMFをはじめとした多くのデザイナーのこだわりが詰まっている。しかし、N-BOX JOYはもう1歩先をいってユーザーがそこから見る景色までデザインしているようだ。インテリアデザイナーの藤原さんはリアゲートから見える景色についてこう語る。「ピクチャーフレームと呼んでいます。ここから見える景色を四季折々切り取って眺めて欲しいですね」。

  • 本田技術研究所デザインセンターデザインCMFの松村美月さん(左)とデザインパッケージ担当の飯泉麻衣さん(右)
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