【BMW M5 新型】電動化の重量増を逆手にとった7代目
ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン)は、新型BMW『M5』の販売を開始し、納車は11月中旬からを予定。価格は先代から据え置きの1998万円からである。
◆ドライビングモンスター
この新型M5を評して同社代表取締社長の長谷川正敏氏は、「ハイパフォーマンスなドライビングマシンというよりはドライビングモンスターというぐらいの実力のあるクルマだ」という。そう感じたのは、氏がオフの時間は先代M5を駆っており、かつ、サーキット走行や過去、自身が行っていたレース活動などの経験からそう感じ、発表会会場でも「アドレナリンを抑えられない」とコメントしていた。
長谷川氏は、BMW Mモデルが属する市場において、「昨2023年に20万台を超える販売台数を記録。一昨年は約17万台超えだったので、前年度比約14%増加する非常に成長市場でであるとともに、日本は重要なマーケットだと(本社でも)位置づけていることから、(このM5は)非常に期待している」と述べた。
◆最高峰のV8ツインターボ
最初にBMW Mモデルがデビューしたのは40年前の1984年で、それは初代M5であった。そこから数えて7代目にあたる新型M5は、初めて電動化されたのが最大の特徴といえる。
BMW M社はレースで培ったテクノロジーを積極的に投入しMモデルを開発してきた。それは、このM5も同様で、世界耐久レース専選手権(WEC)に参戦し、先日の富士スピードウエイで開催されたレースでも2位を獲得したマシン、BMW『MハイブリッドV8』と同じV型8気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載。BMWブランド・マネジメント・ディビジョン・プロダクト・マーケティングプロダクト・マネージャーの御舘康成氏は、「このBMWが誇るV8クロスバンクフローツインターボエンジンは、BMWの内燃機関としての最高峰であると自負している」とのこと。
通常のV型8気筒エンジンは、「滑らかでジェントルでラグジュアリーカーのエンジンという印象があるかもしれないが、実はその通りだ。日常域で滑らかな回転を実現するという魅力のある一般的なクロスプレーンタイプのV型8気筒エンジンは、一方で高回転域で排気干渉を起こし、高回転でパワーが出しにくいという特性がある」と話す。それを克服するためにBMWは、ツインスクロールターボ2機を、向かい合うシリンダーの排気管を敢えて跨いで配置することで、ターボに排気のパワーが遅れずに干渉することなく理想的な間隔で加わるクロスバンクフローツインターボエンジンを採用。「まさにレーシングフィールド直結の技術をM5にも搭載している」とコメント。
◆モーターとの組み合わせの妙
さらにこのエンジンとモーターの組み合わせは「非常に難しかった」と御舘氏。その理由は、内燃機関は回転が上がるにつれてパワーとトルクが増加するが、一方のモーターは回転し始めが一番力強く、回転が上がるにつれて逆起電力でパワーが落ちていく特製があるからだ。そのため、一般的なハイブリッドは、エンジンの低回転部分をモーターがアシスト、あるいは環境に配慮してモーターを主体に動かし、エンジンはあえてダウンサイジングする傾向がある。
しかし御舘氏は、「(このハイブリッドでは)より高い性能を持つ、未来の駆けぬける歓びにつなげられない」とのことから、V型8気筒エンジンをダウンサイズすることなく搭載したうえで、「トランスミッションに内蔵されたコンパクトなモーターを採用しながら、BMW独自の技術であるプレギアリングシステムによって450Nm(システムトータル1000Nm)まで最大トルクを高めた。つまり、最高性能のV8エンジンと、高性能6気筒エンジンに相当するトルクを持つモーターを妥協することなく融合することで、未来のパフォーマンスを実現」したとし、これこそがM5のハイライトであると強調した。
◆電動化したからできること
さて、電動化に関しては車重の増加があり、これはモータースポーツにおいて避けたい事象だ。
そこでBMW M社ではレイアウトを見直した。重量増加につながるバッテリーをホイールベースの内側にレイアウト。「このようなレイアウトはBMW独自のもの」と御舘氏、これが実現できたのは2012年に登場した『i3』などの開発から育まれたノウハウがあったからだ。 結果として、「バッテリーの搭載が、ヨー慣性モーメントの悪化につながらないように、できるだけ重心点近くに搭載するという特別なレイアウト構造になっている」と説明。
そしてサスペンションもこだわりがある。御舘氏は、「電動化によって重量増を招いたそのネガを電動化によって克服する」と明言。具体的には、路面状態によってダンピングフォースを調整するアダプティブMサステンション、路面状態やコーナリングによって後輪左右のトルク配分を適正化するアダプティブディファレンシャル、そしてM5として初となるインテグラルアクティブステアリングを搭載しているが、従来の内燃機関の場合(12V環境下の電圧)では、それぞれのアイテムは独立して作動。しかし電動化によって、「これらのサスペンション技術の全てを協調制御が可能となった。その結果、電動化によって増えた重量のクルマを常に姿勢制御や重心点制御を行うことで、人とクルマとが一体となって自在に操ることが可能となった」と語る。
また、通常の5シリーズにも搭載されているインテグラルアクティブステアリングは同相違最大2度、逆相違最大3度であるのに対し、M5はどちらも最大1.5度となり、小回り性よりも走行安定性に重きが置かれていることが伺われる。
御舘氏は、「電動化はパワーを上げ、しかしそのネガに対してもしっかりと責任ある答えを出す。それがBMWエンジニアの姿勢だ」と述べた。
◆M5とi5M60
こうした走りに対する性能に対し、BMWジャパンでもカーボンルーフを標準で採用。「非常に軽く指1本で持てるほど」と実演。これにより車重を30kgほど軽量化するとともに、最も高い位置にあるルーフを軽量化したことから、「重心をさらに下げ、コーナリング時の安定性やパフォーマンスをさらに高めている」という。
さて、5シリーズにはBEVのパフォーマンスモデル『i5M60』がある。BMWの中では、「M5をMハイパフォーマンス、i5M60をMパフォーマンスモデルと呼んでいる。これは上下関係ではなく、Mモデルは公道も走れるサーキットモデル。Mパフォーマンスモデルは公道におけるスポーティネスと快適性との最高バランスのクルマでありながら、サーキットを走るケーパビリティも併せ持っているクルマ。従って、お客様の価値、どのような“スポーツカー”に乗りたいかで選択してもらいたい。これは電動化による未来の駆け抜ける歓びの広がりだと捉えている」と語った。
◆ドライビングモンスター
この新型M5を評して同社代表取締社長の長谷川正敏氏は、「ハイパフォーマンスなドライビングマシンというよりはドライビングモンスターというぐらいの実力のあるクルマだ」という。そう感じたのは、氏がオフの時間は先代M5を駆っており、かつ、サーキット走行や過去、自身が行っていたレース活動などの経験からそう感じ、発表会会場でも「アドレナリンを抑えられない」とコメントしていた。
長谷川氏は、BMW Mモデルが属する市場において、「昨2023年に20万台を超える販売台数を記録。一昨年は約17万台超えだったので、前年度比約14%増加する非常に成長市場でであるとともに、日本は重要なマーケットだと(本社でも)位置づけていることから、(このM5は)非常に期待している」と述べた。
◆最高峰のV8ツインターボ
最初にBMW Mモデルがデビューしたのは40年前の1984年で、それは初代M5であった。そこから数えて7代目にあたる新型M5は、初めて電動化されたのが最大の特徴といえる。
BMW M社はレースで培ったテクノロジーを積極的に投入しMモデルを開発してきた。それは、このM5も同様で、世界耐久レース専選手権(WEC)に参戦し、先日の富士スピードウエイで開催されたレースでも2位を獲得したマシン、BMW『MハイブリッドV8』と同じV型8気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載。BMWブランド・マネジメント・ディビジョン・プロダクト・マーケティングプロダクト・マネージャーの御舘康成氏は、「このBMWが誇るV8クロスバンクフローツインターボエンジンは、BMWの内燃機関としての最高峰であると自負している」とのこと。
通常のV型8気筒エンジンは、「滑らかでジェントルでラグジュアリーカーのエンジンという印象があるかもしれないが、実はその通りだ。日常域で滑らかな回転を実現するという魅力のある一般的なクロスプレーンタイプのV型8気筒エンジンは、一方で高回転域で排気干渉を起こし、高回転でパワーが出しにくいという特性がある」と話す。それを克服するためにBMWは、ツインスクロールターボ2機を、向かい合うシリンダーの排気管を敢えて跨いで配置することで、ターボに排気のパワーが遅れずに干渉することなく理想的な間隔で加わるクロスバンクフローツインターボエンジンを採用。「まさにレーシングフィールド直結の技術をM5にも搭載している」とコメント。
◆モーターとの組み合わせの妙
さらにこのエンジンとモーターの組み合わせは「非常に難しかった」と御舘氏。その理由は、内燃機関は回転が上がるにつれてパワーとトルクが増加するが、一方のモーターは回転し始めが一番力強く、回転が上がるにつれて逆起電力でパワーが落ちていく特製があるからだ。そのため、一般的なハイブリッドは、エンジンの低回転部分をモーターがアシスト、あるいは環境に配慮してモーターを主体に動かし、エンジンはあえてダウンサイジングする傾向がある。
しかし御舘氏は、「(このハイブリッドでは)より高い性能を持つ、未来の駆けぬける歓びにつなげられない」とのことから、V型8気筒エンジンをダウンサイズすることなく搭載したうえで、「トランスミッションに内蔵されたコンパクトなモーターを採用しながら、BMW独自の技術であるプレギアリングシステムによって450Nm(システムトータル1000Nm)まで最大トルクを高めた。つまり、最高性能のV8エンジンと、高性能6気筒エンジンに相当するトルクを持つモーターを妥協することなく融合することで、未来のパフォーマンスを実現」したとし、これこそがM5のハイライトであると強調した。
◆電動化したからできること
さて、電動化に関しては車重の増加があり、これはモータースポーツにおいて避けたい事象だ。
そこでBMW M社ではレイアウトを見直した。重量増加につながるバッテリーをホイールベースの内側にレイアウト。「このようなレイアウトはBMW独自のもの」と御舘氏、これが実現できたのは2012年に登場した『i3』などの開発から育まれたノウハウがあったからだ。 結果として、「バッテリーの搭載が、ヨー慣性モーメントの悪化につながらないように、できるだけ重心点近くに搭載するという特別なレイアウト構造になっている」と説明。
そしてサスペンションもこだわりがある。御舘氏は、「電動化によって重量増を招いたそのネガを電動化によって克服する」と明言。具体的には、路面状態によってダンピングフォースを調整するアダプティブMサステンション、路面状態やコーナリングによって後輪左右のトルク配分を適正化するアダプティブディファレンシャル、そしてM5として初となるインテグラルアクティブステアリングを搭載しているが、従来の内燃機関の場合(12V環境下の電圧)では、それぞれのアイテムは独立して作動。しかし電動化によって、「これらのサスペンション技術の全てを協調制御が可能となった。その結果、電動化によって増えた重量のクルマを常に姿勢制御や重心点制御を行うことで、人とクルマとが一体となって自在に操ることが可能となった」と語る。
また、通常の5シリーズにも搭載されているインテグラルアクティブステアリングは同相違最大2度、逆相違最大3度であるのに対し、M5はどちらも最大1.5度となり、小回り性よりも走行安定性に重きが置かれていることが伺われる。
御舘氏は、「電動化はパワーを上げ、しかしそのネガに対してもしっかりと責任ある答えを出す。それがBMWエンジニアの姿勢だ」と述べた。
◆M5とi5M60
こうした走りに対する性能に対し、BMWジャパンでもカーボンルーフを標準で採用。「非常に軽く指1本で持てるほど」と実演。これにより車重を30kgほど軽量化するとともに、最も高い位置にあるルーフを軽量化したことから、「重心をさらに下げ、コーナリング時の安定性やパフォーマンスをさらに高めている」という。
さて、5シリーズにはBEVのパフォーマンスモデル『i5M60』がある。BMWの中では、「M5をMハイパフォーマンス、i5M60をMパフォーマンスモデルと呼んでいる。これは上下関係ではなく、Mモデルは公道も走れるサーキットモデル。Mパフォーマンスモデルは公道におけるスポーティネスと快適性との最高バランスのクルマでありながら、サーキットを走るケーパビリティも併せ持っているクルマ。従って、お客様の価値、どのような“スポーツカー”に乗りたいかで選択してもらいたい。これは電動化による未来の駆け抜ける歓びの広がりだと捉えている」と語った。
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