イチオシ機能の“実効空力”は本物なのか? ホンダアクセス「モデューロ」が30周年!
ホンダアクセスのスポーティブランドである「モデューロ」が今年30周年を迎えた。モデューロのイチオシ機能である『実効空力』を体感する試乗会が、群馬サイクルスポーツセンターで開催。取材した。
まず、『実効空力』について説明しておく。『実効空力』はホンダアクセスが提唱する考え方で、60km/hあたりまでの実用領域で効果を発揮する空力性能のこと。
空力というとレースなどの高速走行のときに効果を発揮するものと思われがち。たしかに空気抵抗は速度の二乗に比例するので、高速で効果を発揮するという考えるのもよくわかる。しかし、ここでの効果は空気抵抗ではなく、さまざまなことに作用するもの。たとえば、人が夏の暑い日に歩いていて立ち止まると途端に汗が噴き出すことがある。人間の歩く速度は4km/hと微速だが、歩行時に受ける風による冷却効果は絶大であることの証拠。微速でも空気による作用は大きくなるのはよくあることだ。
ホンダアクセスが実効空力のアウトプットを始めたのは2008年のスポーツモデューロ『シビックタイプR』に採用されたテールゲートスポイラー(ウイングタイプ)が最初。この当時ホンダアクセスは、とくに走りに振った商品を「スポーツモデューロ」の名で呼んでいた。現在、「モデューロ」は走り系パーツ、「モデューロX」はコンプリートモデルという使い方になっている。2008年のシビックタイプRから始まった実効空力を生かしたエアロパーツは現在までにさまざま車種に採用されてきた。
今回の試乗はいくつかのパートに分かれていた。最初に2代目『N-BOX』を使ってのシェブロン(ノコギリ刃状)パーツの効果確認。
シェブロンパーツとは小さな三角形をいくつも並べたもの。このパーツをN-BOXのルーフエンドスポイラーに脱着して効果を確認するというもの。パーツに磁石が取り付けられていて、パーツの有無によって効果が確認できるようになっていた。まずパーツが装着されていない状態でコースを走り、その後装着した状態で同じコースを走った。速度は40~50km/h程度だ。装着後はリヤまわりがしっかりと落ちついている印象で、コーナリング時の修正舵も減っている。非常に単純で小さなパーツなのだが、その効果の大きさを確認できた。
続いて『フィット』を使って各所にボディ補強パーツを装着した実験車への試乗。なんで空力の話にボディ補強パーツが出てくるのかといえば、ボディ補強パーツを付けるとクルマがどのように変化するかを知り、その効果を空力で表現できないかを思考するめだという。この実験車はパーツを開発するための実験車というよりは、人を開発するための実験車。
まずはすべてのパーツがついた状態で走り、その後フロントクロスメンバー付近に追加された横バーを取り外し試乗した。フロント横バーを取り外すとコーナリング時のステアリングフィールが大きく低下した。路面のちょっとした段差によってタイヤの接地状況が大きく変化し、心許ないハンドリングとなってしまう。次にフロント横バーを元に戻し、車内のバーをいくつか取り外して試す。こうすると症状がさらに悪化し、コーナリング時にクルマの動きが不安定になりクルマの動きを把握できないレベルとなる。
各所に補強パーツを取り付けた状態なので、ボディ剛性が大幅にダウンしているわけではない。ボディ剛性のバランスが崩れることによって起きる現象を体験できるのだ。開発者この実験車に乗ることでクルマの剛性バランスを理解していくというのだが、それと同じように大切なのが自分たちでいろいろと試してみることだという。「こうすれば、ああなる」を体験するために自分たちでその実験車を作っていくことが大切だというのだ。
今回の試乗会には先頃ホンダアクセスを退職した名物開発者の田正剛氏も参加していた。福田氏は「これからはまた同じようなものを次の世代の人たちが作って、勉強していくことになるでしょう」と言う。つまり、このフィットをいつまでも使うのではなく、このフィットのような実験者を若い開発者が自分たちで作って勉強していくことこそ大切だというのである。この実験車の助手席にはW124型メルセデスベンツ『Eクラス』初期型のシートが取り付けられていた。このシートの乗り心地には非常に定評があり、その乗り心地を知るために取り付けているのだという。
今回の試乗会のメインイベントは、モデューロ新作のテールゲートスポイラー(ウイングスポイラー)を装着した「シビックRS」。先の2台と同様に比較試乗だ。ただしノーマル状態との比較ではなく、以前にホンダアクセスが発売したシェブロン形状なしのテールゲートスポイラーと、新作のテールゲートスポイラー装着状態の比較試乗。有無の比較ではなくモデューロのテールゲートスポイラーとの新旧比較ということになる。
モデューロの新作テールゲートスポイラーの最大の特徴はスポイラーの裏側にシェブロン形状の突起を採り入れていること。左右の一辺が3cm、高さは高いところで3~4mmの突起となっていて、これが背面全体に配置される。シェブロンがないとスポイラーを通過した空気が大きな渦となって乱気流を起こすが、シェブロンを付けることで小さな渦がいくつも発生し、それがスムーズに後方に流れていくため、空力効果を効率よく発揮できるという。価格は6万8200円で、ディーラーでの取り付け時の標準作業時間は1時間となっている。
この日の群馬サイクルスポーツセンターは雨上がりのコンディションで路面が濡れているのはもちろんだが、落ち葉が多く非常にスリッピーな状況であった。旧作が取り付けられた状態でコースを走るが、もちろん不満はない。速度は安全を重視して50~60km/h程度に抑えた。シビックRSの走りはスムーズで、しっかりとしたものであった。ひととおりコースを試乗しフィーリングをチェックをしたのちにピットインし、テールゲートスポイラーを交換してコースインする。
同じく50~60km/h程度で走りコーナーに進入する。まずステアリングを切った際のフロントタイヤの反応がいいことに気付く。エアロパーツの効果というと最初にダウンフォースを思い浮かべる方も多いだろう。実際、ウイングタイプのスポイラーはダウンフォースをねらったものが多く、このテールゲートスポイラーもダウンフォースをしっかりと確保している。一般的に強いダウンフォースを発生するウイングをリヤに装着すると後側が地面に押しつけられるため、前側が浮いてしまいフロントタイヤのグリップが低下、フロントタイヤの反応が落ちることがあるが、このテールゲートスポイラーではそうした部分はなく、コーナーリング中にステアリングを左右に動かした際の反応もいい。またステアリングを戻して直進状態となった際も修正舵もいらない。
面白いのは直進状態での安定感が向上しているところだ。リヤのキャンバー角を増したかのようにリヤまわりがビシッと引き締まる印象。これは流れる空気を上手に使って左右からボディを押さえつけるようにしているからだという。直進安定性が高まるのは高速移動はもちろん、一般道を走っているときにもイージーさが増すので大歓迎である。ダウンフォース増大の影響かも知れないが、若干リヤの突き上げ感が増える場面もあった。速度や路面の不整具合によって異なり、どの場面でも現れるというものではなく、テールゲートスポイラー装着によるコーナリング時のハンドリング正確さや直進安定性の向上といった得られる面からみれば微々たるものなので気にする必要はないだろう。
今回の試乗会では最初に実効空力という発想を最初に採り入れたスポーツモデューロ・シビックタイプRの試乗も行った。久しぶりに乗った3代目FD2型のシビックタイプRは素晴らしい仕上がり。実効空力を感じなくてはならない試乗だったのをついつい忘れて走りをそのものを楽しんでしまった。しかし、そうして乗った瞬間から走りを楽しんでしまえるところが実効空力のいいところだろう。
まず、『実効空力』について説明しておく。『実効空力』はホンダアクセスが提唱する考え方で、60km/hあたりまでの実用領域で効果を発揮する空力性能のこと。
空力というとレースなどの高速走行のときに効果を発揮するものと思われがち。たしかに空気抵抗は速度の二乗に比例するので、高速で効果を発揮するという考えるのもよくわかる。しかし、ここでの効果は空気抵抗ではなく、さまざまなことに作用するもの。たとえば、人が夏の暑い日に歩いていて立ち止まると途端に汗が噴き出すことがある。人間の歩く速度は4km/hと微速だが、歩行時に受ける風による冷却効果は絶大であることの証拠。微速でも空気による作用は大きくなるのはよくあることだ。
ホンダアクセスが実効空力のアウトプットを始めたのは2008年のスポーツモデューロ『シビックタイプR』に採用されたテールゲートスポイラー(ウイングタイプ)が最初。この当時ホンダアクセスは、とくに走りに振った商品を「スポーツモデューロ」の名で呼んでいた。現在、「モデューロ」は走り系パーツ、「モデューロX」はコンプリートモデルという使い方になっている。2008年のシビックタイプRから始まった実効空力を生かしたエアロパーツは現在までにさまざま車種に採用されてきた。
今回の試乗はいくつかのパートに分かれていた。最初に2代目『N-BOX』を使ってのシェブロン(ノコギリ刃状)パーツの効果確認。
シェブロンパーツとは小さな三角形をいくつも並べたもの。このパーツをN-BOXのルーフエンドスポイラーに脱着して効果を確認するというもの。パーツに磁石が取り付けられていて、パーツの有無によって効果が確認できるようになっていた。まずパーツが装着されていない状態でコースを走り、その後装着した状態で同じコースを走った。速度は40~50km/h程度だ。装着後はリヤまわりがしっかりと落ちついている印象で、コーナリング時の修正舵も減っている。非常に単純で小さなパーツなのだが、その効果の大きさを確認できた。
続いて『フィット』を使って各所にボディ補強パーツを装着した実験車への試乗。なんで空力の話にボディ補強パーツが出てくるのかといえば、ボディ補強パーツを付けるとクルマがどのように変化するかを知り、その効果を空力で表現できないかを思考するめだという。この実験車はパーツを開発するための実験車というよりは、人を開発するための実験車。
まずはすべてのパーツがついた状態で走り、その後フロントクロスメンバー付近に追加された横バーを取り外し試乗した。フロント横バーを取り外すとコーナリング時のステアリングフィールが大きく低下した。路面のちょっとした段差によってタイヤの接地状況が大きく変化し、心許ないハンドリングとなってしまう。次にフロント横バーを元に戻し、車内のバーをいくつか取り外して試す。こうすると症状がさらに悪化し、コーナリング時にクルマの動きが不安定になりクルマの動きを把握できないレベルとなる。
各所に補強パーツを取り付けた状態なので、ボディ剛性が大幅にダウンしているわけではない。ボディ剛性のバランスが崩れることによって起きる現象を体験できるのだ。開発者この実験車に乗ることでクルマの剛性バランスを理解していくというのだが、それと同じように大切なのが自分たちでいろいろと試してみることだという。「こうすれば、ああなる」を体験するために自分たちでその実験車を作っていくことが大切だというのだ。
今回の試乗会には先頃ホンダアクセスを退職した名物開発者の田正剛氏も参加していた。福田氏は「これからはまた同じようなものを次の世代の人たちが作って、勉強していくことになるでしょう」と言う。つまり、このフィットをいつまでも使うのではなく、このフィットのような実験者を若い開発者が自分たちで作って勉強していくことこそ大切だというのである。この実験車の助手席にはW124型メルセデスベンツ『Eクラス』初期型のシートが取り付けられていた。このシートの乗り心地には非常に定評があり、その乗り心地を知るために取り付けているのだという。
今回の試乗会のメインイベントは、モデューロ新作のテールゲートスポイラー(ウイングスポイラー)を装着した「シビックRS」。先の2台と同様に比較試乗だ。ただしノーマル状態との比較ではなく、以前にホンダアクセスが発売したシェブロン形状なしのテールゲートスポイラーと、新作のテールゲートスポイラー装着状態の比較試乗。有無の比較ではなくモデューロのテールゲートスポイラーとの新旧比較ということになる。
モデューロの新作テールゲートスポイラーの最大の特徴はスポイラーの裏側にシェブロン形状の突起を採り入れていること。左右の一辺が3cm、高さは高いところで3~4mmの突起となっていて、これが背面全体に配置される。シェブロンがないとスポイラーを通過した空気が大きな渦となって乱気流を起こすが、シェブロンを付けることで小さな渦がいくつも発生し、それがスムーズに後方に流れていくため、空力効果を効率よく発揮できるという。価格は6万8200円で、ディーラーでの取り付け時の標準作業時間は1時間となっている。
この日の群馬サイクルスポーツセンターは雨上がりのコンディションで路面が濡れているのはもちろんだが、落ち葉が多く非常にスリッピーな状況であった。旧作が取り付けられた状態でコースを走るが、もちろん不満はない。速度は安全を重視して50~60km/h程度に抑えた。シビックRSの走りはスムーズで、しっかりとしたものであった。ひととおりコースを試乗しフィーリングをチェックをしたのちにピットインし、テールゲートスポイラーを交換してコースインする。
同じく50~60km/h程度で走りコーナーに進入する。まずステアリングを切った際のフロントタイヤの反応がいいことに気付く。エアロパーツの効果というと最初にダウンフォースを思い浮かべる方も多いだろう。実際、ウイングタイプのスポイラーはダウンフォースをねらったものが多く、このテールゲートスポイラーもダウンフォースをしっかりと確保している。一般的に強いダウンフォースを発生するウイングをリヤに装着すると後側が地面に押しつけられるため、前側が浮いてしまいフロントタイヤのグリップが低下、フロントタイヤの反応が落ちることがあるが、このテールゲートスポイラーではそうした部分はなく、コーナーリング中にステアリングを左右に動かした際の反応もいい。またステアリングを戻して直進状態となった際も修正舵もいらない。
面白いのは直進状態での安定感が向上しているところだ。リヤのキャンバー角を増したかのようにリヤまわりがビシッと引き締まる印象。これは流れる空気を上手に使って左右からボディを押さえつけるようにしているからだという。直進安定性が高まるのは高速移動はもちろん、一般道を走っているときにもイージーさが増すので大歓迎である。ダウンフォース増大の影響かも知れないが、若干リヤの突き上げ感が増える場面もあった。速度や路面の不整具合によって異なり、どの場面でも現れるというものではなく、テールゲートスポイラー装着によるコーナリング時のハンドリング正確さや直進安定性の向上といった得られる面からみれば微々たるものなので気にする必要はないだろう。
今回の試乗会では最初に実効空力という発想を最初に採り入れたスポーツモデューロ・シビックタイプRの試乗も行った。久しぶりに乗った3代目FD2型のシビックタイプRは素晴らしい仕上がり。実効空力を感じなくてはならない試乗だったのをついつい忘れて走りをそのものを楽しんでしまった。しかし、そうして乗った瞬間から走りを楽しんでしまえるところが実効空力のいいところだろう。
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