苦節3年!L.L.Bean「ブーツモービル」ができるまで

「すごい車おっwww」「靴の形した車 見た!!」など、Twitterで話題になっている「L.L.Bean」のブーツモービル。公道を走っていて、後ろからこんなクルマがやってきたら、思わず写真を撮っちゃいますよね。

L.L.Beanとは、言わずもがなアメリカ・メイン州に本社を構えるアウトドアブランド。そのブランド創業のきっかけとなったアイコン的商品がこちらのクルマのモチーフとなった8インチの「ビーン・ブーツ」です。

このビーン・ブーツを模したブーツモービルは、2012年に創業100周年を記念してアメリカ本社で制作されたキャンペーンカー。5年に渡り14の州を横断し、25万km以上を旅してSNSなどで話題になりました。現在も本国では2台が活躍しているそうです。

2017年春、日本生まれのブーツモービルが誕生!

アメリカでの動きを受けて、日本でも「安全基準を満たして公道を走れるブーツモービルを制作しよう!」ということに。そして企画・構想・開発が行われ、3年もの年月を経て、2017年春、日本生まれのブーツモービルが誕生しました。

なんでも製作の道のりは大変なものだったとか。日本の道路交通法は厳しく、公道を走らせる特殊車両の制作を請け負ってくれる制作会社がなかなか見つからなかったそうです。

難航を極めた制作会社探しの中、やっと巡り会えたのが北海道にある「光源舎オートプロダクツ」。幼稚園バスをメインとした幼児専用車の製造メーカーです。陸運局に何度も問い合わせをしながら、トヨタ・ハイラックス(AT/2WDの2人乗り)をベースに、高さ3.4mのブーツモービルが形作られていきました。

実際の8インチビーン・ブーツそのままのフォルムに近づけるため、L.L.Beanと光源舎オートプロダクツは何度も議論を重ね、試行錯誤したそうです。

ブーツモービルはFRPと発泡ウレタンでできていた?

では詳しい製作工程を写真でご紹介しましょう。

(1)ベースとなる車体を軽量化するため、荷台などの不要なパーツをできるだけ取り外し、車体後部はほとんどシャーシのみの状態に
(1)ベースとなる車体を軽量化するため、荷台などの不要なパーツをできるだけ取り外し、車体後部はほとんどシャーシのみの状態に
(2) 車体上に発泡スチロールと発砲ウレタンでFRPの型を作り始める
(2) 車体上に発泡スチロールと発砲ウレタンでFRPの型を作り始める
(3)ブーツの丸みを帯びた曲線を出すため、議論を重ね、フォルムを調整。発泡スチロールを削ってラインを作っては、やり直し、また削って……を繰り返す
(3)ブーツの丸みを帯びた曲線を出すため、議論を重ね、フォルムを調整。発泡スチロールを削ってラインを作っては、やり直し、また削って……を繰り返す

ブーツの形は、発泡スチロールと発泡ウレタンでフォルムを作っていき、FRP(繊維強化プラスチック)を重ねて仕上げていきます。真冬の北海道での作業だったため、巨大なFRPの塊はなかなか硬化せず、ヒーターを3台に増強して対応したとか。

(4)硬化したFRP樹脂から発泡スチロールを取り除き、細かな仕上げを行う
(4)硬化したFRP樹脂から発泡スチロールを取り除き、細かな仕上げを行う

ブーツの形のボディと同時に、靴紐やソールなどのパーツの製作や塗装も行います。靴紐には、船舶の係留用ロープを着色し流用。靴紐を通す穴は本物のブラスを使ったそうです。

(5)各部の形が整えられたら、塗装や別パーツの取付けが行われて完成となる
(5)各部の形が整えられたら、塗装や別パーツの取付けが行われて完成となる

中でも、ビーン・ブーツの特長である「チェーンパターンのソール」は、実物を横に置きながら一つひとつ掘り出していったという細かい手仕事。またブーツの革部分の微妙な曲がり具合も、職人が精魂込めて再現していったそう。ラバー部分(こげ茶部分)の塗装では、ビーン・ブーツにあるごく細かな凸凹を再現することが、難しかったといいます。

ブーツモービルは日本各地を走行中!

こうして多くの困難を乗り越えて完成したブーツモービル。ユニークでかわいらしいフォルムのこのクルマは2017年7月25日現在、日本各地を走行中で、多くの人のスマホにその写真が収められています。街でブーツモービルを見かけたら、製作の過程を思い出してみてくださいね。

▼ブーツモービル L.L.Bean Bootmobile Japan Tour 2017
http://www.llbean.co.jp/Bootmobile

(別役ちひろ+ノオト)

[ガズー編集部]