24時間レースでしか見られない「夜の出来事」レポート【スーパー耐久 第3戦】
「ピレリスーパー耐久シリーズ2018 第3戦 富士SUPER TEC 24時間レース」が、6月1日(金)~3日(日)に開催されました。日本国内で24時間レースが行われるのは10年ぶり、富士スピードウェイでの開催はなんと50年ぶり!
スーパー耐久シリーズは、通常「3時間×2レース」もしくは「5時間」で戦われますが、今回は約5倍に近い「24時間」です。当然、いつもなら寝静まる深夜も50台のレーシングカーがサーキットのあちらこちらで火花を散らします。レースの結果はほかの記事をご覧いただくとして、ここでは普段なかなか見られない「夜のサーキットの出来事」を写真で紹介していきます。
- 夜のレースには欠かせない「ヘッドライト」はチームの工夫が光る! 右下の「CUSCO RACING 86」はラリーカーっぽい?
夜のサーキットでもっとも“熱い仕事“をしていることをアピールしている、ある「モノ」
それはレーシングカーにとって、勝負の左右をする「ブレーキ」のローター(ディスク)です。スーパー耐久は、市販車ベースのマシンで戦われるとはいえ、最高速度は250km/h前後。ここからフルブレーキングをすると、ブレーキローターは数百度という高温になり、赤く輝きます。文字通り、サーキットでもっとも“熱い仕事”をしているのが、ブレーキなのです。ちなみに、サーキット向けブレーキは、温度が上がることで強力なストッピングパワーを発揮しますが、それだけに消耗するスピードもとてつもなく速くなっています。
- ポルシェは、ブレーキだけでなくエンジンの排気系も高温で赤くなっているのが見える!
焦らず急げ!夜の勝負はここで決まる
深夜になると、ホームストレート正面のグランドスタンドで観戦していた人たちも、ほとんどが会場内のキャンプスペースかあらかじめ予約していたホテルで休みます。しかしこのころ、ホームストレートにあるピットビルでは、昼間以上の緊張した空気が張り詰めていました。
真夜中のレースが初めてというチームやドライバーもいるので、昼間以上にトラブル回避のための整備をしたり、的確な指示をドライバーに伝えたりしなければならないのです。今回のレースでは、通常の「タイヤ交換+給油+ドライバー交換」というピット作業とは別に、「メンテンナンスピット」という1回8分間のピット作業ができるルールがあります。
- マシンが到着すると整備箇所にピットクルーが集結。それ以外のクルーは、各部の点検や窓拭き(夜は特に視界の確保が重要!)をする
- 作業が完了するとマシンをピットロードへ。再び夜の戦いに戻っていく
クルマをピットの奥に入れて8分間で可能な整備を行います。「ST-TCRクラス」にエントリーしている97号車「Modulo CIVIC TCR」は、その時間で消耗したブレーキローターとパッドを交換していました。交換完了した時点では、制限時間の8分までまだ数分の余裕がありましたが、ここですぐにコースに復帰してしまうと、余った時間分のピットストップペナルティを課せられる「落とし穴」があります。作業中ピットクルーが「まだ余裕だから。焦らずやろう」と声をかけていました。
- 作業エリア外には、チームによってクルーの食事や休憩スペースがあったり、マシンのタイヤウォーマーが置かれていたりする
夜だからこそ迅速かつ確実な作業を求められるオフィシャル
夜間は視界が狭くなるので、アクシデントが起こりやすくなります。サーキットの様子を常に監視するコースマーシャル(オフィシャル)は、アクシデントが起こってしまったらレース進行を可能な限り妨げずに、迅速に対処しなければなりません。
- 積載車に載せられる98号車は、このあと修理され、無事にレースに復帰!
「ST-TCR」クラスの98号車「FLORAL CIVIC TCR」が、足回りを破損して「ダンロップコーナー」の芝生上で動かなくなりました。オフィシャルは、すぐさまほかのクルマに「追越し禁止」を示す黄色のランプを提示。自走不可能を確認すると、すぐさま積載車でダンロップコーナーに向かい、動かなくなったマシンを釣り上げコースの外に移動させました。この間、わずか数分。レースはすぐに、通常進行に戻りました。
夜明けは眠いけど、絶好の撮影タイミング!
朝の4時を回ると空が明るくなり始めました。眠くなる時間帯ではありますが、朝焼けが美しく、写真を撮るには絶好のタイミングです。コース後半のセクション、特に最終コーナーでは朝焼けで赤く染まった富士山をバックにした写真が撮影できました。
そして感動のゴールへ!
日が完全にのぼり、ゴールを意識する時間になってくると、夜とは異なる張り詰めた静かさに包まれます。そしてファイナルラップになると、チームクルーやプレス(取材陣)がピットボックス周辺に駆け出し、ゴールの瞬間を待ちます。
- 2台のディーゼルマシン、「マツダ・アクセラSKY-D(ST-2クラス)」、「マツダ・デミオSKY-D(ST-5クラス)」でエントリーした「TEAM NOPRO」は両クラス2位という好成績で完走を果たした
そしてゴール! ピットボックスには歓声が響きわたり、同時に長いレースが無事に終わったことをチームに関係なく労う場面に遭遇しました。ともに戦ったライバルを労う姿は、見ていて感動しますね。その後の表彰式は、ひときわ派手なシャンパンファイトで幕を閉じました。
- 総合優勝を飾った99号車「Y's distraction GTNET GT-R」がピットロードから戻ってくると両脇から歓声が送られた
- レース前半に他車とのクラッシュで運転席側のドアをチームの移動車から交換し話題をさらった59号車「DAMD MOTUL ED WRX STI」は満身創痍での完走となった
- 左上:総合優勝トロフィーを掲げる99号車ドライバー達。右上:ST-TCRクラスのシャンパンファイト。左下:ドライバー・関係者そして下の大勢のファンを背景に自撮り中のST-3クラス。右下:それからのST-3シャンパンファイト!
24時間レースを現地で観戦した経験がある方は、今まで少なかったと思います。筆者もその一人です。レース前は「夜はレース展開も静かになるのかな?」「眠気と勝負になりそうだ」と思っていたのですが、そんなことはまったくなく、昼間以上にワクワクドキドキ満載の時間を過ごしました。余談ですが、深夜帯にYoutubeやJsportsの生放送を見て、富士スピードウェイに入場したファンも多かったそう。次回の開催は未定ですが、日本でもこうした24時間レースが定着していくといいですね!
(取材・文・写真:クリハラジュン 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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