費用は50万円から?「ラッピング」でレーシングカーのカラーリングができるまで

迫力の走りやサウンドはもちろん、1台1台個性的なカラーリングも目を引くレーシングカー。最近では、カーラッピングの技術が進化し、複雑なデザインやグラフィックを持つマシンも多くなってきました。では、こうしたレーシングカーのカラーリングは、どのように作られているのでしょうか? カーラッピングを手がける合同会社エス・トリップの芹澤賢由さんに聞いてみました。

フリートマーキングからラッピングへ

今ではレーシングカーのカラーリングのほとんどが、ラッピングで施されています。では、ラッピングが登場する前は、どんな方法でカラーリングしていたのでしょうか?

「昔のレーシングカーのカラーリングには、『フリートマーキング』という屋外看板などに使われていた技術が用いられていました。薄いシートの裏に糊がついたカッティングシートと呼ばれる素材を、デザインに合わせてカットして貼りこんでいくものです。特徴は、屋外看板に使われることでもわかるように、耐久性が高いこと。それに対してカーラッピングでは、剥がすことを前提としたラッピングフィルムを使います」(芹澤さん)

フリートマーキングがカラーリングに使われる例は今でもあるそうですが、主流はラッピング。その理由は「デザイン性に優れているから」だと芹澤さんは言います。

「ラッピングフィルムは、単調な色だけでなく、カーボン柄やメッキ、迷彩柄など、さまざまな種類があるので、デザインの幅が広がります。カラーリングで使う場合は、ベース色となるラッピングフィルムを決定して、その上に細かなデザインやロゴをインクジェット印刷します。カーラッピングの登場によって、今まででは難しかった複雑なカラーリングも可能になりました」(芹澤さん)

ラッピング車両はどのように作られている?

では、実際にレーシングカーのカラーリングができるまでには、どのような作業が行われているのでしょうか?

「レーシングカーに限らず、社用車やトラックのカラーリングの場合も、まずはデザイン画をいただいて、それをベースに使用するラッピングフィルムやカッティングシートの種類や色を決めていきます。そこからフィルムに印刷が必要なものに印刷を施すなどの作業を行い、必要な素材を“貼るだけ”の状態にして、実際に貼りこむという流れになります」(芹澤さん)

シートを貼りこむ作業は、“車両持ち込み“が基本ですが、レーシングカーの場合はメンテナンスガレージへ出向き、その場で施工することがほとんどだそう。

「お客様からいただくデザイン画は、手書きやパソコンで描かれたものなどさまざまですが、実はこのデザイン画をデータに落とし込んでいくのが、もっとも大変なところです」(芹澤さん)

データ化には、デザインソフト「Illustrator」を使っているそうですが、手書きのデザイン画をデータにするためには、細部までデザインを作り上げていく作業が必要。これがとても難しく、技術が必要とされるのです。

「手書きのデザイン画は、どうしても曖昧な部分があります。そうした部分を、デザインとして仕上げていくのが、私たち業者の腕の見せどころ。この作業がもっとも難しく、時間もかかるところです」(芹澤さん)

そのため、カラーリングをする費用の内訳では、このデザインデータ料の割合が高くなるケースが多いと言います。Illustratorでデザイン画を用意できる場合、データ料はほとんどかからないそうです。

カラーリングにかかる費用はどれぐらい?

「料金はケースバイケースなので、一概に『これくらいです』とは言い切れませんが、クルマ1台を丸々ラッピングする場合は、『50万円から』とお考えください。しかし、『1本ラインを入れたい』といったご依頼でしたら、数千円からできるケースもあります。なお、すべてをラッピングで行うのではなく、デザインによってはカッティングシートも使います。単純な直線ラインをメインにしたレーシングカーでは、カッティングシートのみで約20万という事例もありました」(芹澤さん)

レーシングカーに個性と迫力を与えるカラーリングは、こんな風にしてできていたんですね。こうした“裏側”を知ると、これからレーシングカーを見る目が変わりそうです。

▼エス・トリップ (S・TRIP)
住所:静岡県裾野市岩波242-1
Webサイト:https://www.s-trip-jp.com/
Facebook:https://www.facebook.com/s.trip.jp/

(取材・文:西川昇吾 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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