【初心者向け】似ている競技「ラリー」と「ダートラ」の違いはなに?後編 ~参加費用と観戦の仕方~

画像提供:平塚忠博様
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<前編>では、ラリーとダートトライアル(以下:ダートラ)の競技としてのあり方や、車両の改造やセッティングの方向性、そしてドライバーに求められる要素やメンタルの方向性について解説しました。今回は、両競技に出場するためにかかる費用や、観戦の違いを中心にお話しします。

引き続き「SMaSH(スマッシュ)」の取締役社長、平塚忠博さんにお話を伺います。

車両を作って参戦するには?

ドライバーとして全日本ラリー選手権や全日本ダートラ選手権に出場する場合、ともに国内B級のライセンスが必要になります。くわえて全日本ラリー選手権は免許証取得後、1年以上経過している必要があります。ラリーは公道を走行することが前提にあるため、ある程度の公道運転の経験が求められるためです。

「ライセンスを取得したら、次はチームの編成です。ラリーの場合は、コ・ドライバー(ナビゲーター)と、サービスチームに2~3人が最低限、必要です。大きいチームでは10人以上になります。ダートラの場合は、うまく競技に参加するほかのドライバーと行動をともにできれば、1人で参加することもできます。ラリーにせよダートラにせよ、経験の浅いうちは、専門店に相談して面倒をみてもらう、あるいはすでに競技参加しているチームに加入して一緒に行動することがおすすめです」(平塚さん)

ちなみに全日本選手権にフル参戦し、上位で争える車両で挑みたいのなら、ラリーで2000万円以上、ダートラでも1000万円以上の費用がかかるそうです。費用の分担はチームそれぞれですが、多くの場合、ドライバーが一番、負担することになります。

「ラリーがダートラの2倍もの額が必要な理由は、コ・ドライバーやサポートに必要な人員にかかる費用の差と、車両の改造費と維持費、エントリー費の違いによります」(平塚さん)

画像提供:平塚忠博様
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競技初心者はフレッシュマンシリーズから

これからラリーやダートラを始める人は、ラリーならばJAF地方選手権のフレッシュマンシリーズや「TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ」。ダートラならばJAF地方選手権のフレッシュマンシリーズへとエントリーすることになります。

「ラリーもダートラも、レギュレーションによりクラスが分けられており、クラス毎に使用できる車両や、改造できる範囲が決まっています。入門者向けのクラス区分に出場するための車両改造費はラリーで約250万円、ダートラで150万円ほど。前編でもお話ししましたが、改造費にかかる費用の差は、主にロールケージやアンダーガードといった安全装備の差になります。もちろんこれは最低限の額で、改造範囲の狭いクラスであっても、かけようと思えば改造費は無尽蔵にかけることができます」(平塚さん)

余談になりますが一昔前、ラリーに参加するなら必須だった「ラリコン」ことラリーコンピュータは、現在では時間を守る必要性が下がったこともあって装着する車両はほとんどないのだそう。代わりに専用のアプリケーションを入れたスマートフォンやタブレットPCを使用します。

全日本ラリー選手権に出場するトヨタ86。助手席のグローブボックスにはタブレットPCが装着できるようになっており、中央にもスマートフォンが装着できるようになっている
全日本ラリー選手権に出場するトヨタ86。助手席のグローブボックスにはタブレットPCが装着できるようになっており、中央にもスマートフォンが装着できるようになっている

ラリーやダートラに限らず、一般的に入門者向けとして(安全装備をのぞいた)無改造車両のみがエントリーできるカテゴリーがありますが、平塚さんはランニングコストがかさむため、安易にはすすめられないと言います。

「ノーマルのパーツは、競技での使用を想定していないため劣化が早く、大会毎に交換する必要が出てしまい、パーツ代と工賃がバカになりません。それならば、競技使用を前提としたパーツへの交換が許されているカテゴリーにエントリーした方が、最初に改造費はかかるものの、結果としてランニングコストを抑えられます」(平塚さん)

新車を購入してラリー、あるいはダートラ用に改造してもいいのですが、平塚さんが入門用にすすめるのは、専門店から完成された中古車を購入すること。JAFの公式サイトでは「モータースポーツショップガイド」で、GAZOOではラリーのみとなりますが「ラリーチャレンジ」の「サポートショップ」で、最寄りの専門店を調べることができます。

ラリーとダートラ、観戦するときの違いは?

最後にギャラリーとして参加する際の、ラリーとダートラの違いをお聞きしました。

「ラリーは近年、トヨタが本腰を入れてPRし、またファンサービスイベントを盛大に行っていることもあり、5万人ものギャラリーが訪れるようになりました。各ラリーのスケジュールや観戦場所(ギャラリーステージ)、観戦料といった情報は、イベント主催団体の公式サイトで公開されます。多くの場合、開催日の前日にはサービスイベントが催され、参加車両のデモンストレーション走行などを見ることができます。WRCの映像から、ギャラリーはコースの間近でラリーを観戦できるイメージがありますが、WRCであっても日本で開催される場合はコースから離れた場所に観戦場所が設置されます」(平塚さん)

一方でダートラの場合は直接、開催コースへと赴いての観戦となります。観戦場所はコースにより異なりますが、およそコースの周辺を自由に動いて観戦することができます。

「ダートラのギャラリーの人数は2000人ほどで、通常は前日のサービスイベントは行われません。ラリーと比べてずっと少ないですが、その分、競技終了後に同乗走行が行われるなど、より近い距離で選手と触れ合え、また間近で車両を見ることができます。こちらもイベント主催団体の公式サイトで情報が公開されますので、チェックしてみてください」(平塚さん)

<前編><後編>と2回にわたってラリーとダートラの違いをお聞きしました。どちらか、あるいは両方に興味を持ったのなら、まずは現地で足を運んで観戦してみてはいかがでしょうか? 映像や文章からは伝わらない情報や違いが、きっと見つかりますよ!

(取材・文・写真:糸井賢一 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
SMaSH(JAF内)
http://jaf-sports.jp/shop/detail_000052.htm
JAFモータースポーツ
http://jaf-sports.jp/
GAZOOラリーチャレンジ
https://toyotagazooracing.com/jp/rallychallenge/

[ガズー編集部]

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