線路を走る軽トラックが登場!どこで活躍する?

昨年(2019年)の11月に総合建設機械レンタル業である株式会社アクティオ(以下:アクティオ)から、軽トラックをベースにした「小型軌陸自動車」の開発が発表されました。軌陸自動車(きりくじどうしゃ、以下:軌陸車)とはいったいどのようなクルマで、どんな活躍をするのでしょうか?あえて軽トラックをベースとした意味は?車両を開発したアクティオを取材しました。

軌道(レール)と陸上(道路)の両方を走るのが軌陸車

軌陸車とは、軌道と陸上の両方を走れるクルマを意味します。軌道は鉄道のレールのことで、陸とは普通の道路のこと。つまり、普通の道だけでなく、線路の上も走れる特殊なクルマというわけです。

軌陸車には、普通の道路を走るタイヤのほかに、軌道を走るための鉄の車輪も備わっています。また、踏切から軌道に入るための転車台(ターンテーブル)も特徴です(備えない車両も存在します)。軌陸車は、踏切から軌道に対して90度の角度で進入し、転車台を使って軌道の方向に向きを変えます。そして、鉄道用車輪を降ろして軌道を走ります。

夜間に軌道の上を走るアクティオの小型軌陸自動車
夜間に軌道の上を走るアクティオの小型軌陸自動車

「鉄道の現場は、基本的に終電から始発の間の2~4時間に線路内に入って作業をします。ダンプカーは、レールの下に敷いている石(バラスト)や部材を運ぶために使います」

そう説明するのは、アクティオの鉄道事業部長である黒田大士さん。今回、発表された小型軌陸自動車を開発した担当者です。

アクティオが現在開発中の「軌陸両用自走式高所作業車」。現場内の移動はキャタピラ走行、軌道時は鉄輪走行
アクティオが現在開発中の「軌陸両用自走式高所作業車」。現場内の移動はキャタピラ走行、軌道時は鉄輪走行

軽トラックをベースにすることで、フットワークよく使える

これまであった軌陸車のほとんどがダンプカーなど、3t車・4t車のトラックをベースにしたものでした。そんな中、今回は軽トラックをベースにしたのは、「鉄道会社さんから、点検に使える小型の軌陸車が欲しいという要望があったからです」と黒田さんは言います。

これまで作業を行う大きな軌陸車以外で、人を乗せる小さなモノといえば「レールスター」と呼ばれる車両しかなかったそうです。

一般的に点検などで使われるレールスター。写真は4人乗りだが、2人乗りなどさまざまなバリエーションが存在する
一般的に点検などで使われるレールスター。写真は4人乗りだが、2人乗りなどさまざまなバリエーションが存在する

写真を見ればわかりますが、レールスターは「ゴーカートのような車両」という、まさに簡易的な乗り物です。使うときは、トラックの荷台に積んでいって、線路に下ろしてから走らせます。作業する時には点検者・レールスター運搬用のトラック・運転手・ガードマンなどが必要で、これを走らせるためには4~6名の人員が必要でした。

「台風などの急な災害で点検をするとなれば、夜中でも出動します。緊急時にそれだけの人を集めるのは大変です。でも、小型の軌陸車があれば、2名で点検に行くことができます。しかも、軽トラックがベースならば、雨風をしのげるメリットも大きいんですね。レールスターは吹きさらしですから正直、辛いんですよ。軌陸車ならば、暑さ寒さもしのげます。地方に行くと、クマやイノシシが怖いというケースも。小型の軌陸車があれば安心して点検ができるようになります」(黒田さん)

今回、開発した小型軌陸自動車の運転は、非常に簡単です。鉄道用の車輪を駆動するのは、中間輪を介した軽トラックのタイヤ。ですから、普通のクルマの運転と同じく、アクセルとブレーキで操作ができます。もちろん、ハンドル操作をする必要はありません。

軽トラックの駆動輪のタイヤから中間輪を介して鉄道用の車輪を回す
軽トラックの駆動輪のタイヤから中間輪を介して鉄道用の車輪を回す

ベース車両は、ホンダの軽トラック「アクティ」で、この車種を選択したのは「ミッドシップのため重量バランスが良い」「フレーム構造なので改造しやすい」というのが理由とか。

「本来ならば、こうした軽トラックの軌陸車の開発は無理でした。JRの規定では、もっと大きい車輪にしなくてはいけなくて、そうすると絶対に軽トラックに取り付けることができません。今回は規格外であることを特別に許してもらえたことで、開発することができました。ただし、その後で陸運局でナンバーを取得するのは、苦労しましたね。前後の車輪がはみ出ているので、軽自動車ではなく特殊車両の8ナンバーとなっています」(黒田さん)

建設機械レンタル業だけど車両開発も行う

アクティオの仕事は、建設機械のレンタルです。なぜ、軌陸車を自社開発するのでしょうか?

「メーカーは1000~3000台規模なら作りますが、10台ぐらいでは対応してくれません。でも、軌陸車を使いたいというお客様は存在します。そこで、もともと軌陸車を作っていたあるメーカーが軌陸車をやめるという話を聞き、その部門を買い取って、10年ほど前から自社開発するようになりました」(黒田さん)

軌陸車両メーカーは国内では少なく、しかもダンプカーを製造しているメーカーはさらに少ないため、アクティオでは過去に250台ほどのダンプカーベースの軌陸車を生産してきたと言います。

アクティオには軌陸車をレールに乗せ、講習や点検を実施する線路が用意されていた。レンタル時にここでお客様への講習を行うそう
アクティオには軌陸車をレールに乗せ、講習や点検を実施する線路が用意されていた。レンタル時にここでお客様への講習を行うそう

「お客様が困っているのを解決したいというのが私たちの思いです。日本は人口が減っていて、手助けとなる機械化が必要です。弊社はレンタルだけでなく、コンサルティングも行うのが特徴です。それを弊社ではレンサルティングと呼んでいます。レンタルを超えた技術提案を行っているんです」(黒田さん)

軌陸車というと馴染みの薄いものですが、電車を使ったことのない人はほとんどいないはず。つまり、電車を利用する人はみんな、軌陸車の恩恵を受けているとも言えます。知名度は低いけれど、意外に身近な存在。それが軌陸車のようです。

(取材・文・写真:鈴木ケンイチ 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
株式会社アクティオ
https://www.aktio.co.jp/

[ガズー編集部]

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