トヨタ アクア X-URBAN VS フォルクスワーゲン クロスポロ 比較リポート

正統派では物足りない人のためのSUV風クロスオーバー

いかにも活発に走りそうなワイルドスタイルが目を引く「アクアX-URBAN(エックス・アーバン)」は、先ごろのマイナーチェンジで新登場したクロスオーバーモデル。X-URBANは基本的なプロポーションはアクアのまま、随所にSUV風の仕立てを施し、全高を35mm引き上げている。

その35mmの内訳はタイヤの大径化とサスペンション変更による最低地上高で20mm、専用ルーフモールで15mm。基本的なメカニズムは普通のアクアとなんら変わりなく、内外装の仕立ても、あくまでディテールの違いにとどまるのだが、ボディの下回りにブロンズマイカメタリックのガーニッシュを追加することで、視覚的な「ハイライダー」効果は明らかに実寸以上である。

アクアX-URBANのような「小型ソフトSUV」というか「コンパクト・クロスオーバー」は今をときめく最先端トレンドのひとつだ。そして、その草分けとなったのは、実はフォルクスワーゲン ポロである。

2003年、当時(4代目)のポロに、車高を少しだけ引き上げてルーフレールを装着したポロファンというバリエーションが欧州で発売された。当時はフォルクスワーゲンも、市場の反応については半信半疑(?)で「こんなのもありますけど……」といったお試し特別仕様車的な存在だったが、結果は予想以上。その後2006年のポロのマイナーチェンジに合わせて、ポロファンは正式カタログモデルのクロスポロに格上げされて、以降、ポロの定番モデルとなったのだ。

いずれも悪路走行向けのモデルではない

アクアX-URBANにしても、クロスポロにしても、メカニズム的には普通のコンパクトカーとなんら変わりない。SUV的な雰囲気をたたえているといっても、あくまで「雰囲気」だけ。雪道や悪路を想定した4WD機構は備わらないし、そもそも足元も完全なサマータイヤ……というか、両車ともノーマルモデルより舗装路に似合うスポーツ銘柄を組み合わせているくらいなのだ。

しつこいようだが、アクアX-URBANもクロスポロも、良くも悪くもプチSUVの雰囲気を与えられただけのコンパクトカーという立ち位置である。特別に悪路が得意なわけではない。むしろ標準車よりもコーナリングを楽しめる操縦性にまとめられている。

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トヨタ アクアX-URBAN
フロントバンパーの形状はベースのアクアと共通だが、左右のフォグランプ(オプション設定)を囲むベゼルの大型化やフロントバンパースポイラーの装着でアクティブな印象を受ける。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
前後バンパーはベース車とは異なるクロスポロ専用設計。中央下部にシルバーのアンダーガードを装着することでSUVらしさを高めつつ、スタイリングを引き締めている。
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トヨタ アクアX-URBAN
スポイラーやマッドガードとルーフモールはブロンズマイカメタリックを標準とし、オレンジメタリックやブルーマイカメタリックもオプションで選べる。全長はベース車よりも35mm長い4030mmの設定。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
17インチのタイヤを組み合わせることで足元を大きく見せ、安定感のあるスタイリングを狙う。ボディ下部の樹脂パーツはマットブラック。アクアX-URBANよりも全長が35mm短く、全幅は10mm狭い。
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トヨタ アクアX-URBAN
縦型のテールランプを組み合わせるリヤビュー。コンパクトカーとしては天地方向に低いリヤウインドゥが特徴的だ。全高は1490mmで一般的な機械式立体駐車場を利用可能。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
フロント同様にバンパー下部にはシルバーのアンダーガードを装着。アクア同様にルーフレールも標準装備する。1460mmの全高は、アクアX-URBAN同様、機械式立体駐車場に対応する。

どちらも先進的だが対照的なパワーユニット

両車が最も似合うシーンはあくまで都市部の舗装路であり、ハンドリングはノーマル以上に俊敏で快活である。それも当然。ともにスポーティなサマータイヤを履いているうえに、わずかに引き上げられた全高と、クルマ自体のキャラクターに合わせて、ノーマルよりロール剛性の高い引き締まったフットワークチューンが与えられているからだ。

X-URBANとクロスポロの乗り味の違いも、ノーマルのアクアとポロの関係性と大差ない。 かたやハイブリッド、かたやダウンサイジングターボ+デュアルクラッチトランスミッション(DCT)……という最先端(にして双璧)の環境対応パワートレーンだが、その味わいは好対照である。

動力性能は、小気味いいDCTの変速もあってチャキチャキと快活なクロスポロに対して、X-URBANはあくまでスムーズで上品。豪快な排気音もあって体感的にはクロスポロは意外なほど迫力のある加速感なのだが、実際に乗り比べると、多くのシーンでX-URBANが一歩リードする。これこそ回り出しから最大トルクを供出する電動モーターを使うハイブリッドならではの美点だ。

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トヨタ アクアX-URBAN
最高出力74PSの1.5リットルエンジンに61PSの高出力モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載。状況によってはエンジンを停止して走る。JC08モード燃費は33.8km/Lを達成。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
定番のダウンサイジングユニットとして最高出力90PSの1.2リットルターボエンジンを積む。1400r.p.m.という低回転域から160N・m(16.3kgf・m)のトルクを発生させる特性で扱いやすい。

アクアX-URBANの落ち着いたフィールが好印象

フットワークも同様。クロスポロは全身がいかにも欧州車っぽい硬質な剛性感に包まれて、パリッと俊敏。これと比較するとX-URBANは(ノーマルのアクアより俊敏ではあるが)しっとりと落ち着いた重厚感がある。……のだが、実際のスペックを見ると、アクアX-URBANのほうが成人男性ひとり分も軽いことを知って驚く。

トータルの乗り味でも、クロスポロよりX-URBANのほうが、ソツなくオールラウンド。ノーマルのアクアより明らかにスポーティだが、クロスポロほど意図的に固められた印象はなく、走行シーンによってはノーマルより乗り心地がよく感じられる。マイナーチェンジで強化されたボディ剛性も効いているのだろう。

内外装はベース車よりもカジュアル

アクアX-URBANやクロスポロをつかまえて「SUVのくせに軟派」などと揶揄(やゆ)したくなる向きもあろうが、そうではない。この種のコンパクト・クロスオーバーは、そこがいいのだ。だから今っぽいのだ。

たしかに特別に本格的な悪路が得意なわけではないし、最低地上高もノーマル比で、わずか15~20mm拡大しているだけなのだが、前後左右の見切りや見晴らしは確実にアップしている、また、都市部には出入り口の段差や駐車場の輪止めなど、考えてみるとちょっと気を使う障害物も意外に多いのだが、X-URBANやクロスポロに乗っていると、それらに対するストレスも確実に減少する。わずかとはいえ着座位置が高くなったことで、乗り降りだってベース車よりもしやすい。そして、そうしたメリットを日常生活で享受してしまうと、普通のクルマには戻りたくなくなる。この種のカジュアル・クロスオーバーがもてはやされる理由は、なにも見た目だけではないのだ。

ポロはインテリアの質感でもクラストップ級の評価を受ける。ただ、アクアも今回のマイナーチェンジで、ダッシュボードの一部にソフトパッドが貼られるなど、手の込んだ質感向上策が施された。X-URBANではさらに随所にカラフルな加飾が追加されており、今やその質感は両車伯仲している。

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トヨタ アクアX-URBAN
水平基調で左右の広がり感を重視。デジタルメーターを組み合わせるなどインターフェイスは先進的な印象を受ける。撮影車両のようにオレンジをアクセントとしたインテリアも選択可能だ。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
堂々としたセンタークラスターを組み合わせたT字型レイアウトで安定感のあるデザイン。専用ステアリングホイールやアルミペダルなども与えられる。
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トヨタ アクアX-URBAN
プリウスの流れを受けた、フルデジタルメーターを採用。最も右に速度計を大きく表示し、中央にはマルチディスプレイを組み込む。マルチディスプレイはオプションとして、表示項目を増やしたフルカラーのTFT液晶へとアップグレード可能だ。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
コンベンショナルなアナログメーターの採用による落ち着いた雰囲気がアクアと対照的。細い指針と目盛りが緻密な印象を与える。左右メーターの間にはマルチインフォメーションディスプレイが組み込まれ、平均燃費、瞬間燃費、平均速度、航続可能距離予測などを表示できる。
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トヨタ アクアX-URBAN
プリウスのような電子式ではなく、オーソドックスなスタッガード式シフトゲートを組み合わせる。シフトレバーは長めで、大きく手を動かしての、確実な操作を必要とする。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
ブーツを組み合わせたレバーはスポーティかつ上質な印象を与える。レバーを前後に倒してシフトアップ/ダウンするマニュアルモードで、MT感覚の走りも可能だ。
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トヨタ アクアX-URBAN
昨今のコンパクトカーとしては低めに設定された着座位置。シート表皮は合成皮革とファブリックの組み合わせで、カラーはブラックにシルバーまたはオレンジのアクセントが入る。メーカーオプションで、運転席と助手席にシートヒーターを組み込める。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
スポーツシートとして、スポーツドライビング時でも乗員をしっかり保持する大きめのサイドサポートを持つ形状のシートが組み込まれるのもキャラクターを表している。シートカラーはベージュ、グレー、そしてレッドを設定。
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トヨタ アクアX-URBAN
左右席の座面中央部分をえぐったシート形状。座面下にバッテリーを搭載するが、クッションの沈み込み感が絶妙で不快な底付き感はない。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
座面だけでなく背もたれも左右席部分に凹凸を設け、パッセンジャーの保持性を高めている。着座姿勢に対して妥協がないのもフォルクスワーゲンらしいところ。
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トヨタ アクアX-URBAN
荷室長は5人乗車時で722mm。このクラスとしては奥行きがしっかり確保されていることに加えて底が深くて十分な容量。ハイブリッド車だから、という言い訳は不要だ。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
荷室を上下に分割するボードが備わり、床下と床上に分けて荷物を積み込むことができる。容量は280リットル(ISO測定法)。撮影のために外してはいるが、トノボードも標準装備だ。
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トヨタ アクアX-URBAN
後席は6:4分割可倒式。折りたたみはシングルフォールディングで、床と倒した部分には段差が生じる。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
アクアと同じく6:4分割可倒式だが、「4」の部分はアクアとは逆の助手席側だ。格納はダブルフォールディングとなっている。
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トヨタ アクアX-URBAN
後席はワンタッチで手軽に折りたためるが、低いラゲージ床面と倒したシート部分との段差は大きい。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
段差のないフラットな床面を実現する。ただし、後席格納作業は座面を前方に跳ね上げる“もうひと手間”が必要。
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トヨタ アクアX-URBAN
ラゲージスペースの床下にも、予備の収納スペースが確保される。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
クロスポロも、ラゲージスペースのフロアは2段構え。床面積の大きな収納スペースが確保される。

使えばわかる、メリットの多さ

日本におけるアクアも欧州のポロも、ともに地元では押しも押されもせぬベストセラーコンパクトである。だから、街中で乗っていると、自分と同じ色、同じグレードのクルマとすれ違う……というのは、ある意味ベストセラーの宿命だ。

しかし、X-URBANやクロスポロなら、わずかなエクストラコストで、ベストセラーの安心感はそのままに、「あなたとはちょっと違うのよ」というプライドが満たされるわけだ。しかも、このわずかな車高アップは、実際に乗っても使っても、意外なほどメリットが大きい。クロスポロはすでにポロシリーズの稼ぎ頭になっているそうだが、アクアX-URBANも、なくてはならない定番アクアの一台になる可能性は非常に高い。

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トヨタ アクアX-URBAN
センターコンソール前方のカップホルダー。斜めにレイアウトしているのは、2本分を並列配置しつつセンターコンソールの幅を狭くして足元を広くする工夫。すぐそばにある小物入れも便利だ。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
アクア同様に2本のカップホルダーを備えている。やや奥まったところに、小物を置くスペースも確保されている。
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トヨタ アクアX-URBAN
上級グレードの「G」は大型のセンターコンソールボックスを備えるが、「X-URBAN」はポケット状の小物入れとしている。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
センターコンソール(シフトレバー後方)に備わるトレイに加え、センターアームレストも内部が収納スペースとなっていて便利。内部は植毛処理を施すことで上質感を演出している。
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トヨタ アクアX-URBAN
運転席の正面にトレイがあり、右側はスマートフォンを入れても落ちにくいように深く設計している。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
ドライバー正面をはじめ、インパネの右半分には小物を収納するスペースの用意はない。
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トヨタ アクアX-URBAN
グローブボックス上にはオープントレイもあり収納性は高い。純正ナビ装着車ではオープントレイの右端にUSB端子を装着することも可能だ。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
グローブボックスの内部にエアコンの風を導入する機構が組み込まれていて、入れた飲み物を冷やしておくことができる。
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トヨタ アクアX-URBAN
フロントドアアームレストにはプルハンドルを兼ねた小物入れが備わる。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
ドアハンドルはグリップタイプで、アクアのように小物を置けるスペースはない。
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トヨタ アクアX-URBAN
サンバイザーのチケットホルダーは大きめのカード類も差せるベルト式。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
アクアと同様にベルト式だが、チケットホルダーはサンバイザーの裏側に配置。
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トヨタ アクアX-URBAN
フロントドアの内側には、500mlのペットボトルや小さめの冊子を収納可能だ。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
ペットボトルホルダーのサイズが大きく、1リットルサイズまで置くことができる。
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トヨタ アクアX-URBAN
リヤドアのポケットは非採用。ドアハンドルを兼ねた小物入れが備わる。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
iPad mini程度は入れられる、薄型のポケットが用意される。
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トヨタ アクアX-URBAN
後席乗員のためのカップホルダー(1本分)とポケットをセンターコンソール後方に設置。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
センターコンソール後端に、折りたたみ式のリングを装備。後席乗員が飲み物を置く場所を提供する。
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トヨタ アクアX-URBAN
助手席の後ろに、シートバックポケットを用意。背もたれが湾曲しているので、大きな冊子を入れるのには適していない。

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フォルクスワーゲン クロスポロ
シートバックポケットを運転席と助手席の後ろに備えている。ポケットの幅はアクアと同程度だ。

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