【動画】トヨタ・ヤリス クロスZ 試乗インプレッション 試乗編

車名に“ヤリス”の名はあれど、走りは「ヤリス」と全然違う! 自動車ライター伊藤 梓が、トヨタの新型SUV「ヤリス クロス」の乗り味についてリポートする。

前編で紹介したとおり、「ヤリス クロス」はそのデザインや荷室などの使い勝手を見ただけでも、「ヤリス」とは方向性が違うモデルだということが感じられた。後編ではたっぷり試乗して、その性格をもっと探っていこうと思う。

今回試乗したのは、1.5リッターガソリンエンジンの「Z」グレードで、駆動方式はFWDを採用している。ヤリス クロスにはもちろんハイブリッドモデルもあるし、さらにガソリンモデルとハイブリッドモデル、それぞれに適した2種類の4WDも用意されているのだが、今回は「なるべく素のモデルに乗って、その性能をきちんと体感しよう」という思いから、あえてこのモデルを試乗することにした。

走りだしてみると、すぐにヤリスとは全然違う! と感じた。ちょっとしたコーナーや交差点でもキビキビと走り回っていたヤリスに対して、ヤリス クロス、もちろん「走る、曲がる、止まる」の動作は素直だったのだが、ヤリスのようなキレは感じられない。乗り心地は少し硬めで、路面のちょっとした凹凸はパチンとはね返してくる。1.5リッターエンジンは、ヤリス クロスの体格に合わせて多少チューニングされているせいか、あるいはヤリスの時のように私が走らせるぞ! と身構えていなかったのもあってか、パワーは必要十分だと感じた。

ちょっと拍子抜けというところもあったが、これはヤリス クロスのあるべき姿なのかも……とも思う。ヤリスは、その走りの気持ちよさには目を見張るものがあったが、トヨタの中でもオールマイティーなコンパクトカーなはずなのに、こんなに走りに特化したクルマになっちゃって大丈夫!? という不安があったのも事実。「コンパクトで使い勝手が良く、どんな人にも受け入れられるクルマ」としての立ち位置は、このヤリス クロスに譲ったのだろう……。しばらくヤリス クロスを運転するうちに、ヤリス クロスのことをそんな風に受け入れられるようになっていた。

トヨタが「もっといいクルマづくりをする」と宣言してから登場してきたモデルは、どれも運転してみると、おっ! と驚きのあるクルマばかり。ただ、「いいクルマ」とは、単に「運転して楽しいクルマ」なだけではないはずだ。楽しさよりもむしろ、誰でもスッと運転できて、さまざまなアクティビティーにも使えそうな期待感があって、そして価格もなるべく求めやすい――そんな風にあえて性能を平均的に整えてつくられたのがヤリス クロスなのだろう。そして、そんなヤリス クロスによって、たくさんの人がクルマに触れる機会が増えるなら、それもまた「いいクルマ」なのだろうと思う。

(文:自動車ライター・伊藤 梓)

[ガズー編集部]

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