【動画】トヨタGRヤリス 試乗インプレッション 車両紹介編

モータースポーツで戦うことを視野に開発された、トヨタの高性能ハッチバック「GRヤリス」。その走りを支える特別なメカニズムや生産方法について、モータージャーナリスト島下泰久が解説する。

GRヤリスを走らせると、その速さやコントロール性といった部分はもちろん、何よりその機械としての精度の高さがありありと伝わってくるところに感心させられる。簡単に言えば、その“良いもの感”は半端じゃない。

そうした印象に何より貢献しているのが、GR車の専用工場「GRファクトリー」だ。ここでは一般的な量産ラインと、何千万円もするようなスーパースポーツカーの工場のようなほぼ手づくりのエクスクルーシブなモデルのラインの、中間というか“良いとこ取り”の生産体制が敷かれているのである。

車体は溶接の箇所が格段に増やされ、構造用接着剤の塗布される箇所も拡大されている。手作業の工程も多いのだが、実際に例えば構造用接着剤などは、その日の気温や湿度などによって微妙に塗り方を変える必要があり、ロボットには頼れないのだという。職人の勘が生きているのである。

このボディーはベルトコンベヤーにつられるのではなく自走式のロボットで1台ずつ運ばれ、部品が組み付けられていく。この取り付けにも工夫が施してあり、実はボディーも、取り付けられる部品も、事前に測定されている。

いくら前述のようにこだわってつくったボディーも、そして無数のパーツ類も、そこは工業製品だけに、何百分の1、何千分の1という単位の誤差は避けられない。そこでGRファクトリーでは、事前に計測した誤差を元にボディーと各パーツ、各パーツ同士の最適な組み合わせを事前に導き出しておいて、それを組み合わせている。こうして精度を突き詰めているのだ。

まさに従来の量産車ではあり得ない手間暇と精度でつくられているGRヤリス。しかも完成した車両は全数、各種チェックを受けたうえにテスト走行まで行われたのちにラインオフするのだという。それこそ何千万円もするわけではないこの価格で、これをやってのけたことには脱帽である。生産現場まで一体となった開発が功を奏しているのは間違いない。

冒頭に記した“良いもの感”は、まさにこうして実現された機械としての極めて高い精度のたまもの。単にスポーツ性能が高いだけではないところは、きっと大人のスポーツカー好きにもアピールするはずだ。

(文:モータージャーナリスト・島下泰久)

[ガズー編集部]

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