【動画】「ロータス・エリーゼ スポーツ220」試乗インプレッション 車両紹介編

惜しまれながらも2021年9月に生産終了する、ロータスのライトウェイトスポーツカー「エリーゼ」。デビュー以来、長年にわたって親しんできた山田弘樹が、この名車に対する思いを熱く語る!

ロータス・エリーゼを初めて見たのは、自動車雑誌『Tipo(ティーポ)』の表紙だったと思う。

当時並行輸入ショップがいち早く導入した濃紺の“フェイズ1”。黄色いウインカーレンズとのコントラストがきれいで、ものすごく印象的だった。そのころボクはまだ学生で、「こんなクルマに乗れる仕事がしたい!」と本気で思った。そしてボクは実際に道を誤った(?)わけだから、エリーゼって、罪つくりなクルマである。

そのくらい、エリーゼのデビューはボクにとって衝撃的だった。

エリーゼに夢中になった理由の最たるものは、なんだかんだ言って、そのルックスだ。

販売の始まった1996年当時で既にレトロフィーチャーと言われていたけれど、名車「ヨーロッパ」からの流れを感じさせるその愛らしいフロントマスクや、コテコテのリアビューにロータスの伝統を感じて大いにシビれた。いまでもデザインは、このフェイズ1が一番好きだ。

かたやそのアーキテクチャーには、ちょっとだけガッカリしていた。

アルミ製のバスタブシャシーを使い、車重を800kg台におさめたライトウェイトっぷりは確かにすごかったけど、当時、軽さでは「ケータハム・スーパーセブン」にかなわなかった。そして何より、既存のFF車のコンポーネンツを使った「横置きミドシップ」という形式に、納得がいかなかったのだ。

いまの時代だと、そんなことにこだわるのはヲタクっぽくてナンセンスかもしれない。でも当時の筆者は、そういったことに真剣だった。1.6リッターのスポーツカーに500万円(当時の価格はそのくらいだったと思う)も出すのだ。きっちりドライサンプ化して重心を下げ、エンジンを縦置きに搭載して、“スポーツカーの皮をかぶったジュニア・フォーミュラカー”をつくってほしかった。そう、ヨーロッパのように。

もしその願いがかなえられていたら、お前はエリーゼ買ったのか?

そう聞かれたら、答えに詰まる。「クーラーが付いてない」(フェイズ1にはまだ設定がなかったのだ)とか「あまりにも荷物が積めない」とかいろいろと文句を付けて、結局は買わなかっただろうという気がする。500万円なんて大金は持っていなかったし、大借金までして清水の舞台を飛び降りる勇気は、そのころの自分にはなかった。

ロータス自身も、わかっていたに違いない。そうやって小さな“本物の”スポーツカーをつくったところで、高ければ誰も買わないと。自社製のロータス・ツインカムや、専用の縦置きトランスミッションを用意しても、利益率が悪くなるだけだということを。

理想に燃えても、食べられなければ仕方ない。ロータスはそうやって、ロマンと現実のはざまで苦しみながら生きながらえてきたメーカーだと筆者は思っている。

だからロータスは、「カーボン製のバスタブシャシーにしないのか?」とかいろいろ言われながらも、彼らはずーっと同じ手法でエリーゼをつくり続けた。モデルライフの途中からスーパーチャージャーを搭載したのは意外だったけれど、だからこそ四半世紀も生き残ることができたのだ。

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)

[ガズー編集部]

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