「新型ゴルフ8」乗用車のベンチマークと言われるゴルフはどう進化した?

長年にわたって「乗用車のベンチマーク」と言われてきた、フォルクスワーゲンの基幹モデル「ゴルフ」。時代を見据えた進化を果たしたという新型は、どんなクルマに仕上がっているのか? 島下泰久が解説する。

通算8世代目となる新型ゴルフのデビューに際しては、正直に言って期待よりも不安のほうが大きかったのを覚えている。大胆なBEVシフトを宣言していたフォルクスワーゲンは、新型車「ID.3」を発表する際に「『ビートル』、ゴルフの後を継ぐのはこのクルマ」と、まるでゴルフの時代は終わりだとでもいうようなアピールをしていたからだ。

しかも、その直後にデビューした“ゴルフ8”は先代から車体の基本アーキテクチャーを踏襲していたから、もはや気の抜けた変更でしかないのかもしれないと事前には危惧もした。しかし、やはり心配は要らなかった。実際に見て、触れて、乗ってみれば、新型ゴルフはまさにゴルフらしい、気合の入りまくったクルマに仕上げられていたのである。

キーワードはデジタル化、そして電動化だ。インテリアは10.25インチTFTディスプレイを使ったデジタルコックピットを全車に標準装備し、インフォテインメントシステムも10インチという大型のタッチスクリーンを用いる。

それだけなら今や珍しくはないが、ほとんどのスイッチ類がタッチ式とされているし、運転支援装備のオン・オフや感度の調整は、タッチスクリーン上の車両のアニメーション表示に触れるだけで、直感的に設定することが可能になった。そのうえ、今どきはやりの音声入力も用意している。運転以外のあらゆる操作の概念が変わりそうなほどの大進化といってもいい。

そして電動化について言えば、新型ゴルフは全車マイルドハイブリッド車となった。特に、今回紹介する「eTSIアクティブ」は、それに伴ってエンジンのダウンサイジングを敢行。なんと、1リッター直列3気筒ターボエンジンと電気モーターを組み合わせている。

これだけでも進化としては大きいわけだが、開発陣に話を聞くと、実は走りの面でも相当入念に手が入れられていた。シャシー性能は飛躍的に引き上げられ、運転支援装備の機能・制御も進化。クルマ全体の実力と魅力がトータルで高められている。

「ゴルフには気合が入っていないんじゃないかって? そんなことはまったくないよ!」

開発メンバーのひとりが、こんな風に答えてくれたのを覚えている。トップの意向はともかくとして、やはりフォルクスワーゲンの面々にとって、ゴルフというのは特別な存在なのである。

(文:モータージャーナリスト・島下泰久)

[ガズー編集部]

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