日産新型アリアB6 新しいバッテリープラットフォームの走りは?

ステアリングを握ったモータージャーナリスト島下泰久も「長年BEV開発に取り組んできた日産ならではの一台」と評価。BEV専用のニューモデル「アリア」の走りについてリポートする。

今回試乗した日産アリアはエントリーモデルの「B6」。リチウムイオンバッテリーの容量は66kWhで、電気モーターは前輪を駆動する1基を搭載する。スペックは最高出力218PS、最大トルク300N・m。車重は1900kgとされる。

まず好印象なのが、その発進のマナーだ。アクセルペダルを踏み込んでいくと、いきなりトルクが湧き出てドーンと蹴飛ばされるように加速していく……なんてことはなく、操作に対してまさに欲しいだけの力がじわっと出てきて、スムーズにそして力強く走りだすことができるのである。

その後の加速感も、とてもリニアリティーが高い。トルクの立ち上がりは鋭いけれど、その先は伸びがない………電気モーターの特性そのままだとBEVの走りはそうなりがちなのだが、そのあたりがしっかり調律されていて、違和感なく、しかし力強い走りを可能にしている。

それでいて、「e-Pedal Step」を使えばアクセルオフで回生ブレーキによる減速が行われて、ブレーキペダルへの踏み替えが少ないワンペダルドライブに近い感覚で走行することが可能。まさに電気モーター駆動のうまみである。ちなみに、「ノート」などと同様にアクセルオフだけで完全停止させることはできない。その代わりに発進時にはクリープが使えるようになっているから、これはユーザーの声を聞いて、実際の使い勝手に即したかたちにされたのだろう。

フットワークも、やはりBEVの良さがごく自然なかたちで生かされている。バッテリーをフロア下に積むため重心は低く、前後重量バランスは54:46と上々。軽やかでスポーティーな身のこなしは、前輪駆動のエンジン車では実現できないものだろう。ハンズオフ走行が可能な「プロパイロット2.0」もオプションで選択できるが、それだって制御の前にベースの走りがよくできているからこそ、使えるものになっているのは間違いない。

要するにアリアは、自動車メーカーがつくったBEVなのだ。日産にしてみれば、内燃エンジンを使おうと電気モーターを使おうと、目指すクルマの理想のかたちは一緒であり、奇をてらったことをする必要はない。ただそのメリットを存分に生かして、BEVならではのうまみのにじみ出たクルマをつくり出したという話なのだ。

(文:モータージャーナリスト・島下泰久)

[GAZOO編集部]

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