日産アリアに試乗してきました!…安東弘樹連載コラム

  • 日産 アリア

以前、トヨタのBEV、bZ4Xに試乗した時の印象を、お伝えしましたが、今回はライバル?の日産アリアに試乗しましたので、率直な感想を、お話したいと思います。

まずは基本のスペックを比較してみます

今回私が試乗したアリアのグレードはB6と名付けられた電力量の小さな66kwhのFFモデル。

  • 日産 アリア インパネ周り
  • 日産 アリア リア周り

BEVにとって最も気になる航続距離の指針となる、駆動バッテリーの総電力量はFFモデルの比較でbZ4Xが71.4kwhでアリアが66kwhと僅かにbZ4Xが上回り、同じWLTCモードでの航続距離も516kmと470kmとbZ4Xが電力量の数字通り、若干、上回ります。
しかし4WDモデルで比べると、FFモデルと同じ総電力量のbZ4Xに対してアリアの容量が大きいモデル(B9)は91kwhで、その4WDモデルの航続距離は580kmとなっているので、ここはアリアのグレードによって大きく異なりますがFFモデルに関してはbZ4Xの勝ち?と言えるでしょうか?

試乗してみます

乗り味に関しては、bZ4Xがサーキットでの試乗であったのに対して、アリアは高速道路も含まれるとは言え、一般道でしたので直接比較は難しいのですが、どっしりとしたイメージで高速域での急激なステアに対しても破綻が無かったbZ4Xに対して、アリアはよく言えば軽快で悪く言えば、重厚感に欠ける印象を受けました。一般道を走っている時に、路面の小さな凹凸を拾って、落ち着かない場面があったのです。

ちなみにbZ4Xは4WDモデルの方が更にスタビリティが高かったので、アリアの4WDモデルと比較してみたいものです。

日産の開発の方も、「重厚感が欲しい」という私の感想に対して「4WDモデルに乗って貰ったら印象が違います!」と自信有り気に話していました。

動力性能はBEVらしいスムーズでシームレスな加速と、走行モードをDポジションからBポジションにすると回生が強くなり瞬時に減速。更にe-Pedalモードにすると、減速Gが強くなり回生も最大になります。それらを駆使して加速、減速をコントロールしながら走っていると、殆どフットブレーキを踏む事は有りませんでした。ちなみに日産のBEVリーフのe-Pedalモードは停止までしてくれますがアリアのe-Pedalモードは完全停止はせず、最後はフットブレーキを踏まないとクルマは停まりません。

唯、そんな回生を自由自在に瞬時に変えられる、ステアリングパドルが付いていると尚、良いのですが、現状、その設定は無い様なので、今後に期待しましょう。このパドルはbZ4Xにも付いていないのですが兄弟車であるSUBARUソルテラには付いている事を、お伝えしておきます。

運転支援に関してはbZ4Xの方は試していませんが、アリアは最新のプロパイロット2.0が装備され、高速道路が渋滞気味の時、実際にハンズオフ機能がアクティブになり、暫くステアリングから手を離してドライブする事が出来ました。

また自分がクルマに乗っている状態での駐車支援やクルマを降りた状態でキーを操作してクルマを前後に動かす事が可能なリモートパーキングも試しましたが、非常にスムーズに安全に機能したのにも驚きました。

これらはアリアが少しリードしているようです。

デザイン、室内はどうでしょう

まずはエクステリア。若干、アリアの方が私にはクールに見えました。

アバンギャルドなbZ4Xに対して、シンプルでクリーンで未来的なデザインのアリア、という表現になるでしょうか?

色の設定も、アリアの方がお洒落に見えました。

また薄いヘッドライトと大きなシーケンシャルタイプのウィンカーのバランスもアリアの処理が上手と言えるでしょう。

  • 日産 アリア パノラマルーフ

インテリアに関しても、こちらは圧倒的にアリアの方が先進的でマテリアルも高級感があり、室内の装備もアリアに軍配が上がります。

私にとっては必須のパノラマルーフも設定されており、試乗車も装備されているクルマでしたので開放感を楽しみながらの試乗となりました。

  • 日産 アリア 統合型インターフェースディスプレイ
  • 日産 アリア 統合型インターフェースディスプレイ

クルマが起動していない時は何も表示が無いウッドパネルに起動と同時にスイッチ類が浮き上がるインパネなど、こちらも未来感に満ちています。

アームレストにもなるコンソールボックスが電動で前後するのも、意外にも?便利な装備でした。

シートヒーターに加え、オプションとはいえ、シートベンチレーターの設定もあり、室内装備に関しては、欧州プレミアムブランドにひけを取らない内容と言って良いでしょう。

但し、一つだけ、これはアリアだけではなく殆どの日本メーカーに言える事ですが後席の分割可倒が6:4というのは私個人としては残念です。

これは大人4人が座った状態で後席の真ん中を独立して倒す事によって長尺物を積む事が出来る4:2:4の分割可倒にして頂きたいと、私は常に思っているからです。

実際、私の、これまでの愛車の後席は4:2:4の分割可倒が可能で、スキー板を室内に積んで家族4人でスキー場への往復が出来ました。
また最近はスキーに行く機会は減りましたが、先日、某家具量販店に家族4人で訪れ、居間に敷く「ラグ」を購入した際には、後席の真ん中だけ倒して荷室から、その「ラグ」を室内に通して、積んだまま家族で外食をして帰宅する事が出来ました。

これは6:4の分割では、ほぼ不可能なのです。

唯、これを指摘した際には日産の方に、初めて論理的に、「何故、日本メーカーは4:2:4の分割可倒後席のクルマが少ないのか」を解説して頂きました。

後席を分割可倒式にする為には後方や、側面から衝突された際の安全基準を満たすのに6:4にするだけで、10kgの重量増になり、これを4:2:4の分割にするには更に6kgの重量増になるそうです。そのため「グラム単位」での軽量化や1円単位のコストダウンを迫られる日本メーカーの場合、需要とのバランスを考えると、6:4の分割に、どうしてもなってしまう、との説明でした。ここまで論理的な説明をして頂いたら、納得せざるを得ません…思わず、「スミマセン」と謝ってしまいました(笑)。

改めて日産のスタッフの方の誠意に感謝です。

日本メーカーに頑張ってほしい

そんな中で、トヨタにしろ日産にしろ、BEVのSUVを造るには、600万円前後の価格帯になってしまう事にジレンマは有る様です。

トヨタがbZ4Xを日本ではサブスクリプションでのリース販売専用にしてしまったのも、そういった理由からだと推測できますし、日産も現在のアリアの受注状況は予想を上回ってはいますが、少なくとも日本では長期的に見た時には未知数だとの見解でした。

また欧州勢のBEVの開発スピードが速く、次から次へと新型モデルや、既存のモデルの変更がなされているのを見ると、まだ日本メーカーのBEVは多くて日産の2車種他のメーカーは実質、1車種か0です。

私は全てのクルマがBEVになるべきだとは思っていませんが、BEVも選択肢の一つになるべきだとは思っています。

そう考えた場合、日本メーカーには、もう少し頑張って頂きたいと率直に思います。

何故か日本では「全てのクルマがEVになったら電力が足りなくなる」といった論調が散見しますが、全てのクルマが、と考える必要は無く、BEVが効率的だというライフスタイルの方だけがBEVを使用すれば良いのではないでしょうか。
唯、その様なユーザーに対して、日本メーカー製のBEVの選択肢が少ないのはやはり寂しいというものです。

bZ4Xとアリア、日本を代表するメーカーのBEVを、それぞれ乗ってみて、改めて、そんな事を考えました。

それにしてもアリアのB9 e-4ORCE(4WD)、早く乗ってみたいです。

安東 弘樹