レクサスISの頂点モデルIS500 Fスポーツパフォーマンスの魅力に迫る

現代では希少な自然吸気の大排気量エンジンを搭載する、「レクサスIS」の頂点モデル「IS500“F SPORT Performance”」。その魅力について、山田弘樹が熱く語る。

これだよ、これ。

IS500“F SPORT Performance”を走らせたら、クルマ好きならそう口走るはずだ。

もしかしたら「うほほ!」とか「むむむ~」かもしれないが、つまりはそういうことである。その乗り味は、すこぶるオールドスクール。しかしだからこそ、最近のクルマに食傷気味なあなたの心の琴線を、ピーン! とはじくに違いない。

その要因となっているのは、もちろん5リッターの排気量を持つV型8気筒「2UR-GSE」エンジンだ。今となっては「シボレー・コルベット」くらいしか思いつかない、ピュアなV8エンジン。

アクセルを少し深めに踏み込めば、それまで静やかだった室内は立体的な吸気サウンドに満たされる。アクセルペダルの踏み始めは、意外なほど線の細いトルク感。しかしその回転が上がっていくほどにパワーはみなぎり、あまりの心地よさに思わずほほがせり上がる。これだよ、これ! となるわけである。

さらに右足に力を込めれば、エンジンルームに取り付けられた吸気ボックスのフラップがガバッと開いて、大排気量のV8が、バイクのエンジンのようにパーン! とはじける。一気呵成とはこのことで、それまでいくらか理性的だったその所作が、いきなりヒステリックになる、その豹変ぶりも大いに楽しい。

一つひとつの行程にターボエンジンでは得られない濃密なドラマがあり、それがむしろ常軌を逸したスピードの追求よりも、心に深く突き刺さる。

しかしもっと驚かされるのは、この2UR-GSEユニットの息の長さだ。これを初めて搭載した「レクサスIS F」が登場したのは2007年。IS F自体は2014年にその歴史をいったん閉じているが、並行して「RC F」や「LC500」には継続され続け、再びこうしてISシリーズのエンジンルームに戻ってきたわけである。

そしてこの間レクサスが、5リッター自然吸気という形式を一切変えなかったことが、何より興味深い。

欧州のライバルたちが排気量をダウンサイジングしながらターボ化を推し進めるなか、レクサスはそれらのパワー競争にも翻弄されず、このエンジンを磨き続けてきた。その最高出力および最大トルクはIS F時代の423PS/505N・mから、481PS/535N・mにまで向上している。自然吸気エンジンのチューニングとして考えると、これは大したものだ。

そのアウトプットは、例えば「BMW M8コンペティション」(4.4リッターV8ツインターボ)が625PS/750N・m、「メルセデスAMG GT R」(4リッターV8ツインターボ)が585PS/700N・mを発生するのと比較すれば、やや迫力に欠けるかもしれない。

しかし結果的には、レクサスがこうした“ダウンサイジングターボの誘い”に乗らなかったからこそ、この2UR-GSEユニットは個性を強めた。ガソリン時代の終焉が叫ばれ続ける今になって、より一層その輝きを増したのだ。

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹 編集:GAZOO編集部)

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