GRカローラRZ“モリゾウエディションの走りを島下泰久がリポート

国内限定70台のハイパフォーマンスモデル「トヨタGRカローラRZ“モリゾウエディション”」。その走りはどのようなものか、ベースモデルとの比較も交えつつ島下泰久がリポートする。

モリゾウ選手が求めた野性味を徹底的に突き詰めた、「GRカローラRZ」がベースの限定車が「GRカローラRZ“モリゾウエディション”」。今回の取材車だ。

エンジンは最大トルクが400N・mに向上。クロスレシオ化された6段MTは高強度ギア材を使いショット処理も施されている。また最終減速比も下げられた。

しかもボディーは構造用接着剤の塗布範囲を大幅に延長するなどして剛性をさらに強化。なんと後席は取り払われ、乗車定員は2人となっている。よく見るとリアドアウィンドウは開閉できなくなっているし、リアワイパーもない。

そしてサスペンションには倒立式としたモノチューブショックアブソーバーを使い、タイヤもサーキットでのドライグリップ重視の専用品で、しかもベース車からワンサイズ拡幅されている。そんな極めて刺激的なスペックに仕立てられているのである。

走らせると、クロスレシオ化された6段MTは変速が忙しく、さまざまなノイズもこころなしか大きく感じられるが、そのぶん加速は一層痛快なものになっていて、気分が高揚する。サスペンションはRZよりもさらに硬いけれど、土台となるボディーが強靱(きょうじん)なので問題なし。すべてがタイトで引き締まったその乗り味は、研ぎ澄まされたナイフのようだ。

GRカローラRZも、単体でみれば素晴らしいスポーツモデルに仕上がっている。しかし正直に言って、この“モリゾウエディション”を知ってしまうと、RZでは物足りなくなってしまうのも否定はできない。なのでRZのオーナーは、友達が“モリゾウエディション”に乗っていたりしても、味見はしないほうがいいかもしれない。

この“モリゾウエディション”は国内70台限定で、再販などの予定はまったくない。一方のRZについては、部品供給などの状況が整い次第、再度販売される予定だ。

つまり、“モリゾウエディション”はもはや手に入れることはできないクルマなのだが、しかしあのトヨタが、これだけのクルマをつくり上げたという快挙を皆さんに知っていただきたいということから、今回あえて取り上げた。いや、GRのことだから、将来的にはこの走りの刺激をさらに上回るGRカローラをつくり、世に出してくれるだろう。そんなことを期待しながらご覧いただければと思う次第である。

(文:モータージャーナリスト・島下泰久)

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