日産GT-R 2024年モデルは一言で言えばオトナのGT-R(山田弘樹)
オッサンをとりこにする、「日産GT-R」の2024年モデル。そんなGT-Rにも、惜しいと感じる部分はあります。
本当は「リアエンドのガラスの位置がもう少しだけ高ければ(後ろに大人がきちんと乗れるのに)」とか、「これで4ドア版があったらなぁ」って思います。なぜなら、GT-Rに萌(も)えるのは大人だから。
日産GT-Rは2ドアスポーツクーペなので、リアシートはオマケです。開発当初のコンセプトでは、はなからそこを割り切ったのでしょう。とはいえ「ポルシェ911」の例を見てもわかるとおり、スポーツカーがかたちだけであれリアシートを備えることは、とっても大切です。この小さなスペースは、荷物置き場としてなら役目を果たしてくれます。シートバックが倒れないGT-Rは、911よりも使い勝手が悪いけれど。
4ドアについては、もちろん「そんなひよったクルマは、GT-Rじゃない!」 という声もあるでしょう。しかしNISMOが走りの部分を担ってくれる今、そこに需要はあると思います。歴史になぞらえれば、初代PGC10を引き合いに出すこともできます。BMWは「M4クーペ」と並んで「M3セダン」を併売していますし、こうしたスーパースポーツセダンの市場を、日産が開拓しなかったことが悔やまれます。
そして価格がちょっと高い。今回試乗した「プレミアムエディションT-spec」は車両本体価格が1896万1700円。オプション込みの試乗車だと1946万9192円。ベーシックな「プレミアムエディション」は1484万0100円ですが、M3セダン(1410万円)より高いですからね。国内仕様は、もう少し安くしていただきたい。これだと投資家の餌食です。
2007年に登場したとき、GT-Rの価格は777万円でした。さすがにこれはバーゲンプライスでしたが(それでも当時の筆者は驚きました)、16年近い歳月を経てその価格は、貨幣価値が変わったとはいえ倍くらいにまで上がったわけです。
日産のシンボルとして圧倒的な存在で居続けるためにはどんなことでもする、という気迫はあってもいいのです。それでもなおこの価格に違和感があるのは、この16年の間に、一度もフルモデルチェンジをしなかったからだと思います。
実際、いま乗ってもGT-Rは古さを感じさせません。ただ、実は新しさも感じさせてはくれませんでした。世のEVシフトが勢いを増す今だけに、そのシーラカンス的なギャップは尊く、乗ればVR38DETTのパワーとアテーサE-TSのトラクションには涙が出るほど感動できるのですが、私はその一歩先の進化が見たかった。運転支援システムの「プロパイロット2.0」も搭載してほしかったです。
クルマ好きにとって日産GT-Rは、特別な存在です。どんな風に文句を言われても、信じた道を突き進んでくれればそれで自分は満足です。まずは2024年モデルで販売を継続してくれたことに乾杯。そして必ず次期型を出して、また私たちを楽しませてほしいです。
(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)
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山田弘樹さんが解説する日産GT-Rの注目ポイント
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