トヨタ アルファードをミニバンの独壇場に押し上げた「おもてなし」の要素(まるも亜希子)

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結婚が「人生の墓場」なんてやゆされるのと同じように(?)、ミニバンが一部の走り好きな人たちから「男の墓場」なんていわれていたのは、ミニバンブームが爆発的に盛り上がった1990年代後半の頃でしょうか。

ファミリーカーの定番がセダンからミニバンへと移り、「天井の高い室内」「3列シート」「アレンジで広くなる荷室」という、セダンでは逆立ちしても実現できない要素がマストになりました。私のおいっ子(1998年生まれ)なんて、5歳の頃、得意げに「あっこっこ(私)のクルマ、何人乗り? うちのはね、7人乗り!」なんて自慢していたくらい。子どもたちにとっては「ミニバン=カッコいいクルマ」になりつつあると感じたものです。

そんな、生活感でパンパンに膨らんだようなミニバンとは一線を画す、ラグジュアリー路線のミニバンを目指したメーカーがいくつかあり、トヨタもそのひとつでした。ホテルのエントランスに乗りつけた写真や、ソファのようにふかふかなベージュ系のシートを持つインテリアなどが強調された初代「アルファード」は、子どもがいないファミリーでも、ビジネスシーンでもサマになる雰囲気で、新鮮だったのを覚えています。

その後は代が替わるたびに、ライバルが一台、また一台と失速していき、ついにアルファードの独壇場となった現在。その理由を考えてみると、やっぱり、「おもてなし」という日本人の心を映し出すような室内空間と装備の進化が欠かせない要素だったと感じます。

初代の頃のシートを見てみると、まだ1列目が最も豪華で、快適そうなんですね。でも2代目になると、2列目がダンゼン、ゴージャスになっています。オットマンが付いたのにもかなりテンションアップしました。そして3代目では、2列目シートがガーッと後ろに下がる超ロングスライドにびっくり。実のところ、最後端にするとシートの位置がちょうどリアタイヤの上あたりにきてしまって、乗り心地は良いとはいえなかったのですが……。新型では新たなプラットフォームの採用などにより、それさえもクリアしてきたのだからさすがです。

新型は、先代とは似て非なるアルファード。乗る人にとって誇りであり、癒やしであり、喜びでもある。そんなミニバンではないでしょうか。

(文:カーライフ・ジャーナリスト まるも亜希子)

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