【日産スカイラインNISMO】語り継がれるスカイライン(森口将之)
高度経済成長時代にクルマに興味を持った多くの人にとって、「スカイライン」は特別な響きを持って感じられるはずです。
東京多摩地域の飛行機工場をルーツとする、プリンスという技術志向の会社から生み出されたこのモデルは、1964年の第2回日本グランプリで、ほぼレーシングマシンといっていい「ポルシェ904カレラGTS」に戦いを挑み、わずか1周ではありましたが、その前を走ったのです。
あのときプリンスは、前年のレースで屈辱といえる結果に終わったことから、上級車種「グロリア」に積まれていた2リッター直列6気筒エンジンを、1.5リッター4気筒を搭載していたスカイラインのノーズを伸ばして搭載し、「スカイラインGT」の名を与えて送り出しました。
あのレースにはいろいろなエピソードがあることは、僕も知っています。それでも第2次世界大戦の敗戦から立ち上がり、未曾有(みぞう)の経済成長を始めた当時の日本の勢いが、スカイラインGTに速さを与え、“スカG”の愛称とともに語り継がれていくことになったのだと思っています。
あれから約60年。スカイラインは今も生き続けています。6気筒エンジンをフロントに縦置きし、後輪を駆動するスポーツセダンであることも不変です。ここまで同じ構成を、同じ名前のまま受け継ぐ乗用車は、日本ではスカイラインくらいのものではないでしょうか。
しかも、ただ生き永らえているわけではありません。現行型は10年選手ですが、途中で追加されたV6ターボエンジンは、「戦うスカG」の系譜を受け継いで独立した「日産GT-R」と同じVR系。シャシーはその力に合わせた絶妙なチューニングが施され、グランドツーリングカーとしての快適と、後輪駆動スポーツセダンならではの快感をしっかり両立しています。
今回取材した「スカイラインNISMO」は限定販売であり価格も高価なので、パッと手を出せるようなモデルではないかもしれませんが、ベースとなった「400R」でも、60年以上にわたって培ってきたスカGならではの世界はしっかり堪能できます。
だからでしょう、最近街なかを走るスカイラインを目で追っていくと、リアに400Rの文字を見ることが多くなりました。世間のうわさに振り回されず、本質を見据えることができる人はまだいることがわかって、ホッとしています。
(文:モータージャーナリスト・森口将之)
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森口将之さんが解説する日産スカイラインNISMOの注目ポイント
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