非現実の世界に誘う三菱・トライトンに必要なもの

  • 三菱トライトンGSR

    三菱トライトンGSR

果たして「トライトン」が見せてくれそうな現実とは何か?

何とも大仰な一文で前回を締めたけれど、断っておきたいのは、トライトンが憧れの対象になり得ないなどと言うつもりはない、ということだ。

社会情勢の変化に応じて自動車の肩身が狭くなり、目立つのを避けるため画一化しつつあるように感じられるなか、日本市場では需要が低めのピックアップトラックを、わざわざタイ工場から引っ張ってくる決断には、それこそ憧れたくなる。

しかし、それはそれ。社会的立場を誇示し所有欲を満たすためだけの、ごく一部の高級車を除けば、クルマは暮らしの道具にすぎない、と僕は思っている。それがまた労働への意欲をアピールする荷台付きなら、これほど使えそうな道具はない、と僕は考える。

これがトライトンの現実。道具は使う者の創造力に委ねられる。動画のなかでは「何を積みますか?」とたずねられ、慌てて「夢かな」と答えてしまったが、荷台があるから荷物を載せなきゃいけないという縛りも捨てていいと思う。日ごろは空にしておいて、出かけた先で空を仰ぐ昼寝用のベッドにするという使い方もあるだろう。それが楽しかったなら、そのうちもっと良いアウトドア系寝具類を求めるようになり、おのずと積載物が増えていくのではないだろうか。

だからトライトンという現実の道具が指し示すのは、それまで非現実だった世界の入り口なのだ。それもこれも、荷台がなければ始まらない話である。

以上は、それでもトライトンが欲しい人だけに向けた、道具らしいクルマが好きな僕からの提言だ。言われなくてもわかっている。どこまでいっても精神論であることくらい。

けれど、あまたある道具のなかでピックアップトラックに憧れてしまった人に対して製品を説明したところで、的を射た話にはならないだろう。のるかそるか。にべもないが、それこそが選択のリアル。そんな勢い任せでもトライトンがこの国の三菱ディーラーで買えるというのは、現時点で最も麗しい現実にほかならない、と僕は思う。

(文:田村十七男)

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田村十七男さんが解説する三菱トライトンの注目ポイント

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