ランドクルーザー70は日本の伝統工芸品
私にとってランドクルーザー“70”は、中学生の頃からの目標だったパリ・ダカールラリーへの参戦を実現してくれた、かけがえのない相棒です。1990年代のパリダカでは、三菱とシトロエンのワークス勢がトップ争いをしていましたが、モータースポーツとしてではなく、冒険として捉えて参戦するプライベーターも多かったのです。
完走を目標に最後まで生き残るためには、信頼性、耐久性、悪路走破性の高さはもちろん、整備のしやすさ、多少壊れても走れるしぶとさがマシンに求められます。そこで選んだのがランクル“70”でした。
1997年の初参戦では、初日に草むらに隠れた大きな穴に左フロントタイヤを落とし、リーフスプリングを曲げてしまいましたが、なんとかその日のキャンプ地まで到着することができました。フロントが独立懸架サスペンションだったら、間違いなくアームが曲がり、走行できなくなるほどの衝撃だったので命拾いしました。1998年もランクル“70”で参戦。20回の記念大会でルートの難易度が上がり、完走率は約30%と過酷を極めました。コドライバーとして参戦し、先輩ドライバーと2人きりで、スペアのパーツからタイヤまでランドクルーザー“70”に載せ、メカニックもサポートもない、昔のパリダカをほうふつとさせるスタイルで挑みました。
車検官からは「絶対フランスでリタイアするね」とからかわれましたが、アフリカ大陸に渡ってから、ミスコースもなく、毎晩整備をしながら順調に走っていました。しかし、ダカールのゴールまであと4日を残したところで、フロントのナックルアームのボルトがちぎれ、このままでは操舵ができないという状況に。ここでリタイアかと困っていたときに現地の人が「私のランクルからボルトを外して付けなよ」と言ってくれて、ボルトをもらって修理し、ダカールにゴールできました。しかも、クラス優勝のおまけ付きで。
前編で記したように、サハラ砂漠の奥地の村でもランクル“70”があったおかげで助かりました。今年でランクル“70”は40周年を迎えます。大きなモデルチェンジをせず、普遍的なつくりで共用できる部品も多いおかげで、パリダカで私が助かったようにアフリカに暮らす人々も、ランクル“70”の中古部品をさまざまな村で手に入れることができ、乗り続けられている。
ランクル“70”は、陶磁器や金工品のような日本の伝統工芸品のひとつだと思います。匠の技によってつくられ、長く愛用でき、多少壊れても金継ぎのように直して乗れる。私のランクル仲間には、親子2代にわたって乗り継いでいる家族も多いです。変わらないことで信頼が増し、愛着が深まる。それがランドクルーザー“70”だと私は思います。
(文:寺田昌弘)
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寺田昌弘さんが解説するランドクルーザー70の注目ポイント
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