三菱 アウトランダーPHEV、大改良の2019年モデルに最速試乗…排気量拡大の恩恵とは
三菱『アウトランダーPHEV』の2019年モデル(プロトタイプ)に一早く試乗することができた。2013年の登場以来、これまでもマイナーチェンジを行っているが、今回はかなり大掛かりな変更。何とエンジンを2リットルから2.4リットルに拡大した。
エクステリアはフロントとリアバンパー、フロントグリル、ヘッドライトが変更され、ルーフスポイラーも装着された。ヘッドライトは従来ハイビームがハロゲンだったが、2019年モデルはフルLEDになった。インテリアではフロントシートが変更され、後席用のエアコンの吹き出し口が追加された。
フロントシートは、サイドサポートの形状を変更すると同時に位置によって硬さを変えることでサポート性を向上。「Sエディション」と「Gプレミアム パッケージ」の専用本革シートは、ダイヤモンドキルティングが施され高級感が増した。インパネに大きな変更はないが、パワーメーターの表示が変わり、エンジンの稼働状態と出力が一目でわかるようになった。
◆2.4リットルエンジンの恩恵は
従来の2リットルは高い燃費性能を実現していたし、動力性能もプラグインハイブリッドとしては充分納得ができるものだった。なぜ2.4リットルに排気量を拡大したのか。
疑問を三菱自動車工業 商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリストの大谷洋二氏に聞くと、「排気量を拡大することで発電効率を向上させ、同時にエンジン音を低減することが、おもな目的です。PHEVシステムの主要構成部品の約9割を改良しました」と答えた。
エンジンを変更しただけではなく、PHEVの主要構成部品のほとんどを変更したのには驚く。ここまで大掛かりな変更は、高速道路での高速域のパフォーマンスが求められるヨーロッパからの要望があったからだろうか。大谷氏は「ヨーロッパに対応するというよりはグローバルでの性能を考えた変更です」。
大谷氏と同じく商品戦略本部商品力評価部プロダクト評価主任の南谷 功氏は「排気量は拡大しましたがアトキンソンサイクル化することで熱効率が上がっています。発電効率も向上したことで実際の燃費性能は悪くなっていません。JC08モード燃費の数値は多少落ちています(従来19.2km/リットルから18.6km/リットル)が、実燃費は少し向上しています」と胸を張る。
2.4リットルに拡大したが高効率のアトキンソンサイクル化したことで、低回転域での発電効率が向上したため2019年モデルは総合的な燃費性能は向上しているようだ。低回転域で発電するため静粛性の向上にも貢献していて、発電機も最大出力が10%向上している。
PHEVとして重要なのがバッテリーだが、こちらも変更されて容量を12kWhから13kWhと15%アップさせた。同時に出力も10%アップさせたことでEVでの航続距離(JC08モード)を従来の60kmから65km
に延ばしている。またリアモーターの最大出力を60kWから70kWに高めたことで加速性能も向上しているという。従来はEVでの最高速は125km/hだったが、さらに10km/h拡大されて135km/hまでEVドライブが拡大された。
三菱自慢のS-AWCも改良され、従来のエコ、ノーマル、ロックの3つの走行モードから、スポーツとスノーの2つが加わって、合計5つになった。スノーは文字通り雪道などの滑りやすい路面に対応したモード。これによってロックモードの制御をオフロードに特化した特性に変更して走行性能を高めている。従来は雪道や氷結路での発進でロックを使うことが多かったが、新設定のスノーモードでは加速が向上しているという。
走り好きのファンにおススメなのが、新設定のスポーツモードだ。シフトレバー手前のセンターコンソール、従来EVスイッチがあったところにスポーツモードのスイッチが付いた。手前側のためブラインドタッチはやや難しいが、これを押すと走行時はエンジンがかかった状態になる。
◆2017年モデルとの違いはっきりと
袖ヶ浦フォレストレースウェイをスポーツモードで走らせると、加速レスポンスが明らかに向上していることがわかる。アクセルを踏んだ瞬間にモーターのトルクとエンジントルクが高まり、伸びのいい加速フィールを味わえる。リアモーターの出力がアップした効果で直線の加速だけでも従来型とはかなり異なり、加速感がよくなっている。
驚いたのは操縦性の高さだ。前回の変更時に登場したSエディションの2017年モデルと比較試乗したが、スポーツモードを選んで走るとターンインでの旋回性能が大幅にアップしていることがわかる。ここの4コーナーはブレーキングし回り込みながらアプローチするが、2019年モデルはブレーキングしながらでもクリップにつきやすく、狙ったラインをしっかりとトレースでき、コーナリングスピードも向上している。
この4コーナー出口は上り坂に続くため脱出時の加速がタイムを左右するが、ここでもリアモーターの出力が高められた効果で素早く立ち上がることができる。2017年モデルで同じコーナーを立ち上がるともどかしさを感じるほどの差がある。コーナリング性能が向上したのは、サスペンションのストラットとショックアブソーバーを共にサイズアップした効果もあるだろう。さらにステアリングのギア比を18.2から15.8にクイック化したのも、スポーティなハンドリングになった要因だ。
2017年モデルと大きく違うのが静粛性の向上。2019年モデルはアクセルを大きく踏み込んで高回転域を使う状況でもエンジンノイズが高まらず、車内は高い静粛性を維持している。2.4リットルの新エンジンは、低回転域から高回転域まで全域でノイズがかなり小さくなっている印象。エンジンを停止するEV走行を選ぶとロードノイズも小さくなっているのがわかる。
静粛性は走行時だけでなく、停車時の車外騒音も静かになった。停車時もエンジンが稼働するチャージモードを選んで2017年モデルと比べると、エンジン音と排気音が2019年モデルのほうが明らかに小さくなっている。エンジンはエアクリーナー下面の面剛性を向上させ、レゾネーターも追加することで吸気音を小さくしたという。
また排気側は触媒コンバーターのカバーを2層化することで最大5デシベルもの静音化に成功。後方で聞こえる排気音はボリュームが小さくなると同時に音質が低くなり耳に心地よくなった。2017年モデルは排気音に少しポコポコした軽い音が混じるが、これはメインマフラーが共振しているためだという。その対策としてマフラーの側面にプレートを追加することで、車内後席の騒音が最大7デシベルも静かになった。
アウトランダーPHEVはシステムをアップグレードしたことで、スポーティさと静粛性を大幅に向上させた。開発エンジニアによると実燃費も向上しているというから、今後の一般道試乗での燃費も期待したい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
丸山 誠|モータージャーナリスト
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
(レスポンス 丸山 誠)
エクステリアはフロントとリアバンパー、フロントグリル、ヘッドライトが変更され、ルーフスポイラーも装着された。ヘッドライトは従来ハイビームがハロゲンだったが、2019年モデルはフルLEDになった。インテリアではフロントシートが変更され、後席用のエアコンの吹き出し口が追加された。
フロントシートは、サイドサポートの形状を変更すると同時に位置によって硬さを変えることでサポート性を向上。「Sエディション」と「Gプレミアム パッケージ」の専用本革シートは、ダイヤモンドキルティングが施され高級感が増した。インパネに大きな変更はないが、パワーメーターの表示が変わり、エンジンの稼働状態と出力が一目でわかるようになった。
◆2.4リットルエンジンの恩恵は
従来の2リットルは高い燃費性能を実現していたし、動力性能もプラグインハイブリッドとしては充分納得ができるものだった。なぜ2.4リットルに排気量を拡大したのか。
疑問を三菱自動車工業 商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリストの大谷洋二氏に聞くと、「排気量を拡大することで発電効率を向上させ、同時にエンジン音を低減することが、おもな目的です。PHEVシステムの主要構成部品の約9割を改良しました」と答えた。
エンジンを変更しただけではなく、PHEVの主要構成部品のほとんどを変更したのには驚く。ここまで大掛かりな変更は、高速道路での高速域のパフォーマンスが求められるヨーロッパからの要望があったからだろうか。大谷氏は「ヨーロッパに対応するというよりはグローバルでの性能を考えた変更です」。
大谷氏と同じく商品戦略本部商品力評価部プロダクト評価主任の南谷 功氏は「排気量は拡大しましたがアトキンソンサイクル化することで熱効率が上がっています。発電効率も向上したことで実際の燃費性能は悪くなっていません。JC08モード燃費の数値は多少落ちています(従来19.2km/リットルから18.6km/リットル)が、実燃費は少し向上しています」と胸を張る。
2.4リットルに拡大したが高効率のアトキンソンサイクル化したことで、低回転域での発電効率が向上したため2019年モデルは総合的な燃費性能は向上しているようだ。低回転域で発電するため静粛性の向上にも貢献していて、発電機も最大出力が10%向上している。
PHEVとして重要なのがバッテリーだが、こちらも変更されて容量を12kWhから13kWhと15%アップさせた。同時に出力も10%アップさせたことでEVでの航続距離(JC08モード)を従来の60kmから65km
に延ばしている。またリアモーターの最大出力を60kWから70kWに高めたことで加速性能も向上しているという。従来はEVでの最高速は125km/hだったが、さらに10km/h拡大されて135km/hまでEVドライブが拡大された。
三菱自慢のS-AWCも改良され、従来のエコ、ノーマル、ロックの3つの走行モードから、スポーツとスノーの2つが加わって、合計5つになった。スノーは文字通り雪道などの滑りやすい路面に対応したモード。これによってロックモードの制御をオフロードに特化した特性に変更して走行性能を高めている。従来は雪道や氷結路での発進でロックを使うことが多かったが、新設定のスノーモードでは加速が向上しているという。
走り好きのファンにおススメなのが、新設定のスポーツモードだ。シフトレバー手前のセンターコンソール、従来EVスイッチがあったところにスポーツモードのスイッチが付いた。手前側のためブラインドタッチはやや難しいが、これを押すと走行時はエンジンがかかった状態になる。
◆2017年モデルとの違いはっきりと
袖ヶ浦フォレストレースウェイをスポーツモードで走らせると、加速レスポンスが明らかに向上していることがわかる。アクセルを踏んだ瞬間にモーターのトルクとエンジントルクが高まり、伸びのいい加速フィールを味わえる。リアモーターの出力がアップした効果で直線の加速だけでも従来型とはかなり異なり、加速感がよくなっている。
驚いたのは操縦性の高さだ。前回の変更時に登場したSエディションの2017年モデルと比較試乗したが、スポーツモードを選んで走るとターンインでの旋回性能が大幅にアップしていることがわかる。ここの4コーナーはブレーキングし回り込みながらアプローチするが、2019年モデルはブレーキングしながらでもクリップにつきやすく、狙ったラインをしっかりとトレースでき、コーナリングスピードも向上している。
この4コーナー出口は上り坂に続くため脱出時の加速がタイムを左右するが、ここでもリアモーターの出力が高められた効果で素早く立ち上がることができる。2017年モデルで同じコーナーを立ち上がるともどかしさを感じるほどの差がある。コーナリング性能が向上したのは、サスペンションのストラットとショックアブソーバーを共にサイズアップした効果もあるだろう。さらにステアリングのギア比を18.2から15.8にクイック化したのも、スポーティなハンドリングになった要因だ。
2017年モデルと大きく違うのが静粛性の向上。2019年モデルはアクセルを大きく踏み込んで高回転域を使う状況でもエンジンノイズが高まらず、車内は高い静粛性を維持している。2.4リットルの新エンジンは、低回転域から高回転域まで全域でノイズがかなり小さくなっている印象。エンジンを停止するEV走行を選ぶとロードノイズも小さくなっているのがわかる。
静粛性は走行時だけでなく、停車時の車外騒音も静かになった。停車時もエンジンが稼働するチャージモードを選んで2017年モデルと比べると、エンジン音と排気音が2019年モデルのほうが明らかに小さくなっている。エンジンはエアクリーナー下面の面剛性を向上させ、レゾネーターも追加することで吸気音を小さくしたという。
また排気側は触媒コンバーターのカバーを2層化することで最大5デシベルもの静音化に成功。後方で聞こえる排気音はボリュームが小さくなると同時に音質が低くなり耳に心地よくなった。2017年モデルは排気音に少しポコポコした軽い音が混じるが、これはメインマフラーが共振しているためだという。その対策としてマフラーの側面にプレートを追加することで、車内後席の騒音が最大7デシベルも静かになった。
アウトランダーPHEVはシステムをアップグレードしたことで、スポーティさと静粛性を大幅に向上させた。開発エンジニアによると実燃費も向上しているというから、今後の一般道試乗での燃費も期待したい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
丸山 誠|モータージャーナリスト
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
(レスポンス 丸山 誠)
最新ニュース
-
-
トヨタ『ヤリス』、「GR SPORT」のスポーツ度がアップ…2025年型を欧州発表
2024.12.03
-
-
-
カスタムは『バランス』が超重要! 強弱付けて大失敗?~カスタムHOW TO~
2024.12.03
-
-
-
トヨタ『ヤリスクロス』の特別仕様車公開…仏工場の生産500万台を祝う
2024.12.03
-
-
-
メルセデス・マイバッハ『SLモノグラム』日本発表…高性能ラグジャリー2シーターの価格は?
2024.12.02
-
-
-
「3000GT誕生」初代トヨタ『スープラ』とセリカ、ソアラとの意外な関係性【懐かしのカーカタログ】
2024.12.02
-
-
-
【マセラティ GT2ストラダーレ】レーシングカーを公道で走らせる、マセラティならではのマジック
2024.12.02
-
-
-
「最後の本気出し過ぎだろ」トヨタ『スープラ』最終モデル発表に驚きの声あふれる
2024.12.01
-
最新ニュース
-
-
トヨタ『ヤリス』、「GR SPORT」のスポーツ度がアップ…2025年型を欧州発表
2024.12.03
-
-
-
カスタムは『バランス』が超重要! 強弱付けて大失敗?~カスタムHOW TO~
2024.12.03
-
-
-
トヨタ『ヤリスクロス』の特別仕様車公開…仏工場の生産500万台を祝う
2024.12.03
-
-
-
メルセデス・マイバッハ『SLモノグラム』日本発表…高性能ラグジャリー2シーターの価格は?
2024.12.02
-
-
-
「3000GT誕生」初代トヨタ『スープラ』とセリカ、ソアラとの意外な関係性【懐かしのカーカタログ】
2024.12.02
-
-
-
【マセラティ GT2ストラダーレ】レーシングカーを公道で走らせる、マセラティならではのマジック
2024.12.02
-
MORIZO on the Road