【シトロエン C3エアクロス 新型試乗】現代流シトロエンらしさ満点!…中村孝仁
◆奇抜さで人を驚かせるシトロエンは過去の話
シトロエンと言えばその昔は変な恰好だったリ、独特の乗り心地だったリ、複雑怪奇なメカニズムだったリ、とにかく人を驚かせることが趣味のようなメーカーだった。
それが一時PSA傘下となってプジョーに同化して、正直どうでもいいクルマ作りをしていた時期もあった。だが今、シトロエンは再び独自の道を歩み始めているような気がする。実はつい先日、1919年生まれのシトロエン100周年を祝うイベントが開かれたばかり。そこに集まったシトロエンたちを見るとやはりこのメーカー、ただものじゃないという印象を改めて強くさせてくれた。
タイトルの「現代流シトロエンらしさ」というのは、昔のような奇抜さではなくて、どうやったら他メーカーと違うアイデアでメーカーの個性を引き出し、同時に特徴づけるかに力点が置かれ、元々センスの良いデザインだったリ色使いをその中に融合させてチョイスをしたくなる…即ち買いたくなる動機とさせるかに腐心している印象がある。
◆クリーンで安全なクルマ=いいクルマ
例えば『C4カクタス』で採用したエアバンプ。空気袋をボディサイドに埋め込もうなんて、誰も考え付かなかったけど、いいアイデアだと思う。それにそいつを上手く丸め込んだデザインも魅力的だった。今のシトロエン・デザインの源流は、まさにこのC4カクタスにあるのだから、メーカーが受け入れられたと判断したのだと思う。
乗り心地にもシトロエンらしさが戻りつつある。1955年にハイドロニューマチックという金属バネを使わない、極めて複雑でしかしながら抜群の乗り心地が得られる機構を開発して以来、その独自性では他の追従を許さなかったが、同時にそれはメーカーの息の根を止める金のかかるメカニズムでもあった。そこで、何とかそれに代わる簡単で快適なものを作れないか?シトロエンの挑戦はそれに終始している感がある。
勿論今ではコスト重視だから、高いのはご法度。価格の安い『C3』などは使えていないが、通常の金属バネのサスペンションで如何に快適な乗り心地を実現するかを見事に具体化している。
追い風となっているのはヨーロッパ全体の速度低下。ドイツに限らず一時は速いクルマ=いいクルマ的な風潮が強く、速度無制限の道路があるドイツのクルマ作りに全ヨーロッパのメーカーが右へ倣えしていたが、最近ドイツでも大半のアウトバーンには速度規制がかかり、環境重視になるとクリーンで安全なクルマ=いいクルマと公式も変わったので、スピードを求める必要がなくなったから、サスペンションのセッティングにも変化が出てきたというわけかもしれない。
◆なごみ系の演出にもシトロエンらしさ
一番現代流シトロエンらしさが出ているのは、やはりスタイルと内装のセンスだ。今回の『C3エアクロス』、エアバンプこそついていないものの、そのスタイルの源流にC4カクタスを感じ取ることが出来るし、何よりもSUVと言いながら、明確に他ブランドのそれとは差別化されていて、同じPF1プラットフォームを用いる現行プジョー『2008』とはエクステリアに関してどこにも共通点が無い。
インテリアも同様で、シート地と同じファブリックをダッシュボードに反映させているあたり、外観同様実になごみ系の演出が浸透している。厳ついお面流行りの日本では全く異色な存在。だからこそ、ある程度の確実な支持層を掴めるのだと思う。
メカニズムに関してはまさにPSAのこのセグメントのクルマと共通で、1.2リットルのピュアテック3気筒ターボと6速ATの組み合わせ。高級版ともいえる『DS 3 クロスバック』では新しいプラットフォームや8速ATが使われるが、コスト重視からか、そうした要素は排除されている。
決してビュンビュン系のモデルではない。それはC3の時でも感じられたものだが、このクルマもいつまでも走っていたい衝動に駆られるクルマ。C3よりボディは一回り大型化し、後席などの使い勝手も向上しているから、機能性も高い。本革シートや8速AT他高級な要素をふんだんに取り入れたDS 3 クロスバックだとお値段も400万円に届いてしまうが、C3エアクロスは高級仕様の「shine」でも300万円以下。オプションを装備した試乗車でも330万円程度に収まっているから、クルマが高価格化している最近では相当なお手頃価格と言える。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
シトロエンと言えばその昔は変な恰好だったリ、独特の乗り心地だったリ、複雑怪奇なメカニズムだったリ、とにかく人を驚かせることが趣味のようなメーカーだった。
それが一時PSA傘下となってプジョーに同化して、正直どうでもいいクルマ作りをしていた時期もあった。だが今、シトロエンは再び独自の道を歩み始めているような気がする。実はつい先日、1919年生まれのシトロエン100周年を祝うイベントが開かれたばかり。そこに集まったシトロエンたちを見るとやはりこのメーカー、ただものじゃないという印象を改めて強くさせてくれた。
タイトルの「現代流シトロエンらしさ」というのは、昔のような奇抜さではなくて、どうやったら他メーカーと違うアイデアでメーカーの個性を引き出し、同時に特徴づけるかに力点が置かれ、元々センスの良いデザインだったリ色使いをその中に融合させてチョイスをしたくなる…即ち買いたくなる動機とさせるかに腐心している印象がある。
◆クリーンで安全なクルマ=いいクルマ
例えば『C4カクタス』で採用したエアバンプ。空気袋をボディサイドに埋め込もうなんて、誰も考え付かなかったけど、いいアイデアだと思う。それにそいつを上手く丸め込んだデザインも魅力的だった。今のシトロエン・デザインの源流は、まさにこのC4カクタスにあるのだから、メーカーが受け入れられたと判断したのだと思う。
乗り心地にもシトロエンらしさが戻りつつある。1955年にハイドロニューマチックという金属バネを使わない、極めて複雑でしかしながら抜群の乗り心地が得られる機構を開発して以来、その独自性では他の追従を許さなかったが、同時にそれはメーカーの息の根を止める金のかかるメカニズムでもあった。そこで、何とかそれに代わる簡単で快適なものを作れないか?シトロエンの挑戦はそれに終始している感がある。
勿論今ではコスト重視だから、高いのはご法度。価格の安い『C3』などは使えていないが、通常の金属バネのサスペンションで如何に快適な乗り心地を実現するかを見事に具体化している。
追い風となっているのはヨーロッパ全体の速度低下。ドイツに限らず一時は速いクルマ=いいクルマ的な風潮が強く、速度無制限の道路があるドイツのクルマ作りに全ヨーロッパのメーカーが右へ倣えしていたが、最近ドイツでも大半のアウトバーンには速度規制がかかり、環境重視になるとクリーンで安全なクルマ=いいクルマと公式も変わったので、スピードを求める必要がなくなったから、サスペンションのセッティングにも変化が出てきたというわけかもしれない。
◆なごみ系の演出にもシトロエンらしさ
一番現代流シトロエンらしさが出ているのは、やはりスタイルと内装のセンスだ。今回の『C3エアクロス』、エアバンプこそついていないものの、そのスタイルの源流にC4カクタスを感じ取ることが出来るし、何よりもSUVと言いながら、明確に他ブランドのそれとは差別化されていて、同じPF1プラットフォームを用いる現行プジョー『2008』とはエクステリアに関してどこにも共通点が無い。
インテリアも同様で、シート地と同じファブリックをダッシュボードに反映させているあたり、外観同様実になごみ系の演出が浸透している。厳ついお面流行りの日本では全く異色な存在。だからこそ、ある程度の確実な支持層を掴めるのだと思う。
メカニズムに関してはまさにPSAのこのセグメントのクルマと共通で、1.2リットルのピュアテック3気筒ターボと6速ATの組み合わせ。高級版ともいえる『DS 3 クロスバック』では新しいプラットフォームや8速ATが使われるが、コスト重視からか、そうした要素は排除されている。
決してビュンビュン系のモデルではない。それはC3の時でも感じられたものだが、このクルマもいつまでも走っていたい衝動に駆られるクルマ。C3よりボディは一回り大型化し、後席などの使い勝手も向上しているから、機能性も高い。本革シートや8速AT他高級な要素をふんだんに取り入れたDS 3 クロスバックだとお値段も400万円に届いてしまうが、C3エアクロスは高級仕様の「shine」でも300万円以下。オプションを装備した試乗車でも330万円程度に収まっているから、クルマが高価格化している最近では相当なお手頃価格と言える。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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