【BMW X5 新型試乗】果たして「デカい」ことは良いことなのか?…中村孝仁
◆全幅2メートルを超えた新型『X5』
4代目となるBMW『X5』がデビューした。デビューから大分時間が経つが、ニューモデルは再びデカくなった。どのくらいデカいかと言うと、全長4935×全幅2005x全高1770mmという外形寸法を持つ。特に全幅のデカさが印象的。
東京駅近くのBMW本社オフィスから街に乗り出してみると、まあ都会の雑踏に対してはサイズ感は感じないものの、いざこれを駐車場に停めようとすると、えらく苦労する。勿論白線内に停めることは可能だが、乗降の際隣のクルマとの間隔の近さはドアを開けるのをためらうほど。まあ、日本の駐車場事情には合っていないと感じる。
◆ワインディングもさらっとこなす
日本市場にやってきているのは3リットルの直6ディーゼルを搭載したモデル。先代モデルと基本は同じだが、パフォーマンスはさらに高まっている。直6エンジンはBMWのお家芸だから、最近やってきた新参者には負けるはずがない…と思いきや、その静粛性やパフォーマンスという点において、その新参者(敢えて名前は言わないが)には正直見劣りする。特に鋭く加速して行った時の回転上昇の荒さとエンジン音の高まりが予想外に大きくて、抜群の静粛性を見せつけた新参者の方が、その点を上回っていた。
ただそうは言っても、620Nmもあるビッグトルクに不満があろうはずもなく、グイグイ加速するその様は、このクルマの車重が2320kgもあるとはとても感じられない。しかもデカくなったと評したが、それでも先代よりわずかだが軽くなっているのだから恐れ入る。このあたりが技術の進歩なのだろう。
そんなわけで、最近何故か少しずつ大きくなっているキドニーグリルと周囲を圧倒するような巨体で闊歩すると、まさに「そこのけそこのけお馬が通る」じゃないが、極端な話スズメじゃなくて軽自動車を踏みつぶしそうな勢い。周囲を威圧するには十分過ぎるほどの存在感を示すのだ。
普通、デカいとどうしてもその動きに鋭敏なところが影を潜めるのが半ば常識なのだが、そうでないところを見せつけるのもこのクルマの凄いところ。まさしくスイスイという言葉がピッタリくるほどワインディングもさらっとこなす。運動神経抜群のデブ(失礼!)と言ったら言い過ぎだろうか…もちろん、そのスタイルからデブは想像しにくいから、まあ単にデカい…ということになる。となるとバレーボールの選手かバスケットボールの選手ということで、相撲レスラーではないのだろう。
◆デカいことは良いことなのか?
テールゲートは上下2分割に開くようになっている。このクルマの発祥を辿れば、当時BMWが所有していたランドローバー社のレンジローバーを下敷きにして作り上げたことが、この上下分割テールゲートを今に至るまで継承している大きな理由だと思う。
ただし、それもこれも基本的に使う人がデカい…という前提があって、そうした人にとっては無造作に積み上げたラゲッジスペースの荷物が、上側のテールゲートを開いた時に簡単には落ちない有難い構造なのだが、ここまで大きくなってしまうとチビには中と外を隔てる単なる隔壁にしかならない。従ってほとんどの場合何を取り出すにしても、下側のゲートまで開かなくてはならず、そうなると今度は奥に入ってしまった荷物に手が届かないという不便さを味わうことになる。というわけなので、この上下分割テールゲートはどうも好きになれないのだ。
冒頭書いたようにデカいことは果たして良いことなのか?その存在感を示したり、ゆとりの空間を生み出したり、そこに快適の粋を集めた最先端に技術があると、どうしてもその良さを認めざるを得ない。しかも今ではこれが頂点ではなくさらにデカい『X7』まで登場し、果たしてどこまでデカくなるのやらと少し心配してしまうが、日本の場合は正直言ってX5のサイズですら東京の雑踏で駐車場を探す時などは少々持て余し気味になる。
そう言えば試乗車にはなかったと思うが、『3シリーズ』で装備されたハンズオフでドライブできるACCや袋小路に嵌ってしまった時に、正確に来た道をトレースしてバックしてくれるリバースアシストなどが今手に入れればついて来る。クルマはどんどん便利になって、ドライバーはどんどん下手になる。これ、いいことなのか?
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
4代目となるBMW『X5』がデビューした。デビューから大分時間が経つが、ニューモデルは再びデカくなった。どのくらいデカいかと言うと、全長4935×全幅2005x全高1770mmという外形寸法を持つ。特に全幅のデカさが印象的。
東京駅近くのBMW本社オフィスから街に乗り出してみると、まあ都会の雑踏に対してはサイズ感は感じないものの、いざこれを駐車場に停めようとすると、えらく苦労する。勿論白線内に停めることは可能だが、乗降の際隣のクルマとの間隔の近さはドアを開けるのをためらうほど。まあ、日本の駐車場事情には合っていないと感じる。
◆ワインディングもさらっとこなす
日本市場にやってきているのは3リットルの直6ディーゼルを搭載したモデル。先代モデルと基本は同じだが、パフォーマンスはさらに高まっている。直6エンジンはBMWのお家芸だから、最近やってきた新参者には負けるはずがない…と思いきや、その静粛性やパフォーマンスという点において、その新参者(敢えて名前は言わないが)には正直見劣りする。特に鋭く加速して行った時の回転上昇の荒さとエンジン音の高まりが予想外に大きくて、抜群の静粛性を見せつけた新参者の方が、その点を上回っていた。
ただそうは言っても、620Nmもあるビッグトルクに不満があろうはずもなく、グイグイ加速するその様は、このクルマの車重が2320kgもあるとはとても感じられない。しかもデカくなったと評したが、それでも先代よりわずかだが軽くなっているのだから恐れ入る。このあたりが技術の進歩なのだろう。
そんなわけで、最近何故か少しずつ大きくなっているキドニーグリルと周囲を圧倒するような巨体で闊歩すると、まさに「そこのけそこのけお馬が通る」じゃないが、極端な話スズメじゃなくて軽自動車を踏みつぶしそうな勢い。周囲を威圧するには十分過ぎるほどの存在感を示すのだ。
普通、デカいとどうしてもその動きに鋭敏なところが影を潜めるのが半ば常識なのだが、そうでないところを見せつけるのもこのクルマの凄いところ。まさしくスイスイという言葉がピッタリくるほどワインディングもさらっとこなす。運動神経抜群のデブ(失礼!)と言ったら言い過ぎだろうか…もちろん、そのスタイルからデブは想像しにくいから、まあ単にデカい…ということになる。となるとバレーボールの選手かバスケットボールの選手ということで、相撲レスラーではないのだろう。
◆デカいことは良いことなのか?
テールゲートは上下2分割に開くようになっている。このクルマの発祥を辿れば、当時BMWが所有していたランドローバー社のレンジローバーを下敷きにして作り上げたことが、この上下分割テールゲートを今に至るまで継承している大きな理由だと思う。
ただし、それもこれも基本的に使う人がデカい…という前提があって、そうした人にとっては無造作に積み上げたラゲッジスペースの荷物が、上側のテールゲートを開いた時に簡単には落ちない有難い構造なのだが、ここまで大きくなってしまうとチビには中と外を隔てる単なる隔壁にしかならない。従ってほとんどの場合何を取り出すにしても、下側のゲートまで開かなくてはならず、そうなると今度は奥に入ってしまった荷物に手が届かないという不便さを味わうことになる。というわけなので、この上下分割テールゲートはどうも好きになれないのだ。
冒頭書いたようにデカいことは果たして良いことなのか?その存在感を示したり、ゆとりの空間を生み出したり、そこに快適の粋を集めた最先端に技術があると、どうしてもその良さを認めざるを得ない。しかも今ではこれが頂点ではなくさらにデカい『X7』まで登場し、果たしてどこまでデカくなるのやらと少し心配してしまうが、日本の場合は正直言ってX5のサイズですら東京の雑踏で駐車場を探す時などは少々持て余し気味になる。
そう言えば試乗車にはなかったと思うが、『3シリーズ』で装備されたハンズオフでドライブできるACCや袋小路に嵌ってしまった時に、正確に来た道をトレースしてバックしてくれるリバースアシストなどが今手に入れればついて来る。クルマはどんどん便利になって、ドライバーはどんどん下手になる。これ、いいことなのか?
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