【BMW 1シリーズ 新型試乗】FF化でBMWが得たものと失ったもの…中村孝仁
◆FRを捨てたBMW 1シリーズ
BMW『1シリーズ』がフルチェンジされて第3世代に移行した。しかし、今回のモデルチェンジは従来とは大きく違う。それは駆動方式を変えたことだ。
過去2世代、Cセグメントのハッチバックモデルでありながら、BMWは頑なにFRの駆動方式に拘った。初代がデビューした時、「えっ?FRですか?スペース効率的に不利なんじゃないですか?」という質問に対してBMWから帰ってきた答えは、「BMWですから、走りに拘ってFR駆動とするのは当然です」といったような内容だった。勿論その時点でBMWにFWDなどあろうはずもなく、1シリーズはそれまで作られていた『3シリーズコンパクト』というモデルの後継だったのだから、まあ当然の帰結ではあった。
ご存知の通りBMWが変節するのは2014年のこと。BMW自身が「UKL2」なる横置きFWDプラットフォームを開発し、それを使って『2シリーズアクティブツアラー』を市場に送り出した時だ。この時はそれこそ「BMWよお前もか」的な声も多く聞かれた。ただ、車種がおよそ「駆け抜ける歓び」とは次元の異なるジャンルであったことから、これがFWD化されるのはある意味当然との受け取りもあったように思う。
しかし、1シリーズはなりは小さくても駆け抜ける歓びを体現するクルマである。それに最終型となったFRの1シリーズの出来がすこぶる良かったものだから、FWD化に抵抗感のある人も多いように感じた。
◆まあ普通に優等生だよねぇ
さて、新しいFWD化された1シリーズである。まず日本に導入されたのは1.5リットル3気筒ターボガソリンエンジンの『118i』と、2リットル4気筒ターボとxDrive(4WD)を組み合わせた高性能版の『M135i』の2種。とても気になるディーゼルはやってきていない。というわけで今回試乗したのはエントリーモデルともいえる118iである。と言っても素の118iではなく「118i play」と称するグレードで、車両価格は375万円である。
対面した1シリーズの印象としては、先代で感じた特別感が無くて普通になった。特別感というのは例えハッチバックの1シリーズと言えども、サイドウィンドグラフィックにはホフマイスターキンクと呼ばれた独特の折り返しがあるデザインがしっかりと採用されていたのだが、今回のデザインを見る限りその面影は…ない。実はBMW、『X2』を出した時も結構苦しい言い訳でこのホフマイスターキンクの話をしていたが、やはりセダン系と先代1シリーズのように顕著なものは薄れつつある。
そんなデザインを採用していたから、同じハッチバックでもスタイルは独特だった。でも新しいのは普通である。走りも言っちゃあ何だが、普通である。MINIのようなチャキチャキ感はないし、要するに優等生のFWD Cセグメントハッチバックだから、抜群にいい走りなんだけど、室内狭いし、ユーティリティーも低いよねぇ…だった先代と比べて、走りはそこそこ、室内広くなったし、快適だし、ユーティリティーも高くなったし、まあ普通に優等生だよねぇ…と言うのが今回の1シリーズである。
つまり、走りの面で尖った印象はゼロ。多分BMWが今回の1シリーズで失ったところと言えばそこだ。これだけは抜群!というイチ押しが無い。
◆時代という巨大な津波にのみ込まれた
一方で得たものは?まずはメカ空間を小さくしたことで室内が広くなった。前席と後席のスペースが約40mm拡大したと説明された。大型化されたサンルーフが居住性をさらに高めるともある。ラゲッジスペースも広がった。先代比20リットルアップの380リットルになったそうだ。アジャスターを使用するとさらにラゲッジスペースは拡大できるという。
また、トノカバーはラゲッジスペース下に収納できるとも説明された。走りの面ではタイヤスリップコントロールなるものが付いてアンダーステアを抑制するという。動画を見たが、専用のクローズドコースでかなり頑張ったツッコミをするとその差が出るようなイメージ。だから、一般道で試してみてもその差はわからない。
敢えて言うと、3気筒ながら1.5リットルエンジンは実に快適で不快な振動もないし、何よりも低速域では3気筒を感じさせないサウンドと力強さを見せる。ここはBMWらしい。
とまあ、新しい1シリーズは従来の跳ねっ返りモノから、仲間に迎合したお友達グループに入ったという印象。スペース効率やユーティリティーと言った多くのユーザーベネフィットをもたらした一方、先代1シリーズが持っていた強烈な個性は影を潜め、何よりも時代という巨大な津波にのみ込まれて、聖域だったはずのFRへの拘りを捨てた新しいBMWがそこにあったような印象を受けた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
BMW『1シリーズ』がフルチェンジされて第3世代に移行した。しかし、今回のモデルチェンジは従来とは大きく違う。それは駆動方式を変えたことだ。
過去2世代、Cセグメントのハッチバックモデルでありながら、BMWは頑なにFRの駆動方式に拘った。初代がデビューした時、「えっ?FRですか?スペース効率的に不利なんじゃないですか?」という質問に対してBMWから帰ってきた答えは、「BMWですから、走りに拘ってFR駆動とするのは当然です」といったような内容だった。勿論その時点でBMWにFWDなどあろうはずもなく、1シリーズはそれまで作られていた『3シリーズコンパクト』というモデルの後継だったのだから、まあ当然の帰結ではあった。
ご存知の通りBMWが変節するのは2014年のこと。BMW自身が「UKL2」なる横置きFWDプラットフォームを開発し、それを使って『2シリーズアクティブツアラー』を市場に送り出した時だ。この時はそれこそ「BMWよお前もか」的な声も多く聞かれた。ただ、車種がおよそ「駆け抜ける歓び」とは次元の異なるジャンルであったことから、これがFWD化されるのはある意味当然との受け取りもあったように思う。
しかし、1シリーズはなりは小さくても駆け抜ける歓びを体現するクルマである。それに最終型となったFRの1シリーズの出来がすこぶる良かったものだから、FWD化に抵抗感のある人も多いように感じた。
◆まあ普通に優等生だよねぇ
さて、新しいFWD化された1シリーズである。まず日本に導入されたのは1.5リットル3気筒ターボガソリンエンジンの『118i』と、2リットル4気筒ターボとxDrive(4WD)を組み合わせた高性能版の『M135i』の2種。とても気になるディーゼルはやってきていない。というわけで今回試乗したのはエントリーモデルともいえる118iである。と言っても素の118iではなく「118i play」と称するグレードで、車両価格は375万円である。
対面した1シリーズの印象としては、先代で感じた特別感が無くて普通になった。特別感というのは例えハッチバックの1シリーズと言えども、サイドウィンドグラフィックにはホフマイスターキンクと呼ばれた独特の折り返しがあるデザインがしっかりと採用されていたのだが、今回のデザインを見る限りその面影は…ない。実はBMW、『X2』を出した時も結構苦しい言い訳でこのホフマイスターキンクの話をしていたが、やはりセダン系と先代1シリーズのように顕著なものは薄れつつある。
そんなデザインを採用していたから、同じハッチバックでもスタイルは独特だった。でも新しいのは普通である。走りも言っちゃあ何だが、普通である。MINIのようなチャキチャキ感はないし、要するに優等生のFWD Cセグメントハッチバックだから、抜群にいい走りなんだけど、室内狭いし、ユーティリティーも低いよねぇ…だった先代と比べて、走りはそこそこ、室内広くなったし、快適だし、ユーティリティーも高くなったし、まあ普通に優等生だよねぇ…と言うのが今回の1シリーズである。
つまり、走りの面で尖った印象はゼロ。多分BMWが今回の1シリーズで失ったところと言えばそこだ。これだけは抜群!というイチ押しが無い。
◆時代という巨大な津波にのみ込まれた
一方で得たものは?まずはメカ空間を小さくしたことで室内が広くなった。前席と後席のスペースが約40mm拡大したと説明された。大型化されたサンルーフが居住性をさらに高めるともある。ラゲッジスペースも広がった。先代比20リットルアップの380リットルになったそうだ。アジャスターを使用するとさらにラゲッジスペースは拡大できるという。
また、トノカバーはラゲッジスペース下に収納できるとも説明された。走りの面ではタイヤスリップコントロールなるものが付いてアンダーステアを抑制するという。動画を見たが、専用のクローズドコースでかなり頑張ったツッコミをするとその差が出るようなイメージ。だから、一般道で試してみてもその差はわからない。
敢えて言うと、3気筒ながら1.5リットルエンジンは実に快適で不快な振動もないし、何よりも低速域では3気筒を感じさせないサウンドと力強さを見せる。ここはBMWらしい。
とまあ、新しい1シリーズは従来の跳ねっ返りモノから、仲間に迎合したお友達グループに入ったという印象。スペース効率やユーティリティーと言った多くのユーザーベネフィットをもたらした一方、先代1シリーズが持っていた強烈な個性は影を潜め、何よりも時代という巨大な津波にのみ込まれて、聖域だったはずのFRへの拘りを捨てた新しいBMWがそこにあったような印象を受けた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
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