【BMW 7シリーズ 新型試乗】強敵メルセデス Sクラス のライバルとなり得るか?…中村孝仁
◆「顔」が変わった7シリーズ
3サイズ、全長5265×全幅1900×全高1485mm、ホイールベース3210mmの堂々たる体格である。軽自動車ならホイールベース内にほぼ9割収まってしまう大きさだ。
基本的に今回デビューしたものはマイナーチェンジモデル。従ってコードネームはオリジナルがデビューした2015年(日本は2016年)以来変わらず、G11/12とされている。今回試乗した『M760Li』はロングホイールベースモデルのため、その呼称はG12である。ではマイナーチェンジでどこが変わったかと言えば、俗にフェイスリフトと言われる通り、顔がアップデートされた。
正直なところ、デビュー当初にこのクルマを写真で見た時は「BMWよお前もか!」という思いが強かった。それはやたらとグリルを巨大化させ、その存在感を誇示する手法は、日本製の大型ミニバンで良く取られる手法で、見た目にははっきり言って下品である。しかし、世のトレンドはまさにその方向に流れていて、市場では好評で迎えられているから、まさにマーケティングの勝利と言っても過言ではない。
だからBMWもそれにあやかって巨大グリルを装備したのだと思う。現車に対面するまで、どんなに下品な顔つきになったかと少し心配したのだが、写真と現物とはかなり異なっていて、現車を見た時は「なぁんだ。意外とまとまってるじゃん」という印象になったのである。
◆ロールスロイス・ゴーストと同じV12エンジン
外装だけでなく内装も変わった。それはインパネ。メーター周りのデザインが他のBMWと共通化されていた。従ってタコメーターは右から左へと(反時計回りに)盤面を駆け上がる。スピードメーターとは盤面の中央あたりで針がお辞儀する形となる。同じ手法はプジョーも使っているが、やはりどうも見づらい。恐らく慣れにもよると思うが、個人的には苦手な部類だ。
他にもヘッドライトやリアコンビランプなどフェイスリフトの常とう手段と思われる場所は改変されているが、全体としてみた時にはやはりグリルにのみ目が行ってしまう。巨大グリルを誰もが注視するわけで、まんまとBMWの策略に嵌められてしまった感も強い。
760用のエンジンは6.6リットルのV12である。短気筒(バイク)からV8に至るほとんどのエンジンは所有して乗ったことがあるのだが、流石にV12は無い。だから一度は味わってみたいエンジンなのだが、未来永劫ほとんど無理そうである。
コードネームN74というエンジンは同じグループ内でロールスロイス『ゴースト』に用いられているのと同じものだ。多少チューンは異なるが同じもの。トランスミッションも同じである。ただし、あちらはFRだが、こちらはxDriveの4WDというのが大きな違いだろうか。
◆モノではメルセデスに負けていない
東京駅近くのBMWからクルマを借り出して地下駐車場から表に出るところで、その1900mmある幅を味わった。流石に立っているポールが気になるサイズだ。しかし、一旦オンロードに出てしまうと、余程狭い道路に入り込まない限りはサイズを気にすることなく走れた。特に視認性が悪いというわけでもないし、何より最近はぶつかりそうな至近に障害物があれば、カメラや警告音でそれを教えてくれるから、以前ほど視界の悪さを気にする必要がなくなっていることが大きい。
滅多なことでV12搭載車に試乗することもないし、ましてやセダンとなると搭載しているのは他にメルセデスのSクラスぐらいしか思い当たらない。なので、比較のしようがないというのが正直なところだが850Nmの恩恵は顕著で、少し深く踏み込むと凄まじい加速感を伴って車速を上げていく。4WDということも手伝ってか安定感はすこぶる高く、ワインディングに解き放てば結構ドライビングを楽しめそうな雰囲気だったが、今回は都会の道路のみの試乗で堪能するまでには至っていない。
このクルマもドライバーズシートで走りを味わうというよりも、リアシートでの快適性を味わうのが主要な命題のように思えるが、如何せん一人で走るのだからそうもいかず、リアは静止した車両でその快適性をほんの少しだけ味わってみた。まあ、こんなクルマの空間に収まって移動すると、人間がダメになると感じるのは庶民の性。VIPにはこの空間が必要なのだと思う。
問題は日本というかなり特殊な市場において、モノでは決して負けていないはずのBMWが果たして強敵メルセデスのライバルになり得るかという点。繰り返すが、モノでは負けていない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
3サイズ、全長5265×全幅1900×全高1485mm、ホイールベース3210mmの堂々たる体格である。軽自動車ならホイールベース内にほぼ9割収まってしまう大きさだ。
基本的に今回デビューしたものはマイナーチェンジモデル。従ってコードネームはオリジナルがデビューした2015年(日本は2016年)以来変わらず、G11/12とされている。今回試乗した『M760Li』はロングホイールベースモデルのため、その呼称はG12である。ではマイナーチェンジでどこが変わったかと言えば、俗にフェイスリフトと言われる通り、顔がアップデートされた。
正直なところ、デビュー当初にこのクルマを写真で見た時は「BMWよお前もか!」という思いが強かった。それはやたらとグリルを巨大化させ、その存在感を誇示する手法は、日本製の大型ミニバンで良く取られる手法で、見た目にははっきり言って下品である。しかし、世のトレンドはまさにその方向に流れていて、市場では好評で迎えられているから、まさにマーケティングの勝利と言っても過言ではない。
だからBMWもそれにあやかって巨大グリルを装備したのだと思う。現車に対面するまで、どんなに下品な顔つきになったかと少し心配したのだが、写真と現物とはかなり異なっていて、現車を見た時は「なぁんだ。意外とまとまってるじゃん」という印象になったのである。
◆ロールスロイス・ゴーストと同じV12エンジン
外装だけでなく内装も変わった。それはインパネ。メーター周りのデザインが他のBMWと共通化されていた。従ってタコメーターは右から左へと(反時計回りに)盤面を駆け上がる。スピードメーターとは盤面の中央あたりで針がお辞儀する形となる。同じ手法はプジョーも使っているが、やはりどうも見づらい。恐らく慣れにもよると思うが、個人的には苦手な部類だ。
他にもヘッドライトやリアコンビランプなどフェイスリフトの常とう手段と思われる場所は改変されているが、全体としてみた時にはやはりグリルにのみ目が行ってしまう。巨大グリルを誰もが注視するわけで、まんまとBMWの策略に嵌められてしまった感も強い。
760用のエンジンは6.6リットルのV12である。短気筒(バイク)からV8に至るほとんどのエンジンは所有して乗ったことがあるのだが、流石にV12は無い。だから一度は味わってみたいエンジンなのだが、未来永劫ほとんど無理そうである。
コードネームN74というエンジンは同じグループ内でロールスロイス『ゴースト』に用いられているのと同じものだ。多少チューンは異なるが同じもの。トランスミッションも同じである。ただし、あちらはFRだが、こちらはxDriveの4WDというのが大きな違いだろうか。
◆モノではメルセデスに負けていない
東京駅近くのBMWからクルマを借り出して地下駐車場から表に出るところで、その1900mmある幅を味わった。流石に立っているポールが気になるサイズだ。しかし、一旦オンロードに出てしまうと、余程狭い道路に入り込まない限りはサイズを気にすることなく走れた。特に視認性が悪いというわけでもないし、何より最近はぶつかりそうな至近に障害物があれば、カメラや警告音でそれを教えてくれるから、以前ほど視界の悪さを気にする必要がなくなっていることが大きい。
滅多なことでV12搭載車に試乗することもないし、ましてやセダンとなると搭載しているのは他にメルセデスのSクラスぐらいしか思い当たらない。なので、比較のしようがないというのが正直なところだが850Nmの恩恵は顕著で、少し深く踏み込むと凄まじい加速感を伴って車速を上げていく。4WDということも手伝ってか安定感はすこぶる高く、ワインディングに解き放てば結構ドライビングを楽しめそうな雰囲気だったが、今回は都会の道路のみの試乗で堪能するまでには至っていない。
このクルマもドライバーズシートで走りを味わうというよりも、リアシートでの快適性を味わうのが主要な命題のように思えるが、如何せん一人で走るのだからそうもいかず、リアは静止した車両でその快適性をほんの少しだけ味わってみた。まあ、こんなクルマの空間に収まって移動すると、人間がダメになると感じるのは庶民の性。VIPにはこの空間が必要なのだと思う。
問題は日本というかなり特殊な市場において、モノでは決して負けていないはずのBMWが果たして強敵メルセデスのライバルになり得るかという点。繰り返すが、モノでは負けていない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
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1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。
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