ボルボ XC60 B5 新型試乗 マイルドハイブリッドを得てより魅力的になった…井元康一郎
今年4月、ボルボのプレミアムDセグメント相当ミッドサイズSUV『XC60』のガソリンパワートレインのうち、低出力版の「T5」が新鋭のマイルドハイブリッド「B5」に置き換えられた。ヨーロッパで急速に採用が拡大しているシステム電圧48ボルトの簡易型ハイブリッドである。
そのマイルドハイブリッドモデルを半日テストドライブする機会があったので、新パワートレインを中心にファーストインプレッションをリポートする。
◆ボルボのマイルドハイブリッドシステムとは
走行感をお伝えする前に軽く技術的なおさらいを。新ハイブリッドシステムは内燃エンジンのスターターモーターと発電機をまとめたISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレータ)とエンジンをベルトでつなぎ、アイドリングストップからの内燃エンジン始動、発進加速時のパワーアシスト、そして減速時のエネルギー回収などを行う、いわゆるパラレルハイブリッドである。
ISGの駆動用電気モーターとしての能力は最高出力10kW(13.6ps)、最大トルク40Nm(4.1kgm)と、自重1.9トン台のボディをそれ単体で駆動するには足りない。ゆえにマイルドハイブリッドと呼称される。内燃エンジンとISGの間には動力分割機構はなく、ISGは常に内燃エンジンと同調して回転する。
一方でブレーキはバイワイヤ方式で、小出力ながらブレーキ時の減速エネルギー回生量を取りきれるだけ取るように作られている。リチウムイオン電池パックの容量は0.5kWh。
内燃エンジン側も改良を受けている。一番大きな変更点は気筒休止システムが実装されたこと。軽負荷のときには2気筒運転としてスロットル開度を大きく取り、ポンピングロスを低減する作戦だ。それ以外についてもエンジンの内部摩擦損失の低減、吸排気系の見直し、エンジンマウント改良と、結構いろいろ変わっている。
◆チューニングレベルの高さには驚愕する
ドライブは往路が東京タワーを望む東京都心の芝公園を起点とし、首都高~東京湾アクアライン~圏央道を経由して千葉の九十九里浜へ。そこからしばらく郊外路と市街路を走り、帰路は東金道路から東関東自動車道、首都高湾岸線などを経由するというルート。
さて、そのXC60 B5の初乗りの印象だが、言われなければマイルドハイブリッドとまったく気づかないようなドライブフィールだった。
ISGの駆動力アシストや回生ブレーキが内燃エンジン+8速自動変速機にほぼ完璧に溶け込んでるばかりか、4気筒、2気筒の切り替えもトルク変動からも騒音・振動からも察知できない。そのチューニングレベルの高さには驚愕したが、違和感のなさは「うおお、これがハイブリッドというものかーー」という特別感を持たれにくいということでもある。
ダイレクトドライブフィールにこだわるヨーロッパのユーザーを主眼としていることは明らかで、日本でもまず欧州型のクルマ作りに強い共感を覚える層から取り込んでいくことになるだろう。
◆アイドリングストップの「粘り腰」にも恩恵
もう少し突っ込んでフィールを述べてみよう。特徴的だったのは市街地から高速クルーズに至るまで、パワートレインは驚異的に滑らかで、変速時のトルク変動が非常に少ないことだった。高速道路の合流地点での加速など、2速、3速、4速…と変速する際にエンジン回転数だけが変わり、加速度は一直線という感じである。マイルドハイブリッドであることが途中で何度も頭から飛ぶくらいであった。
普段のドライブでも低速トルクがえらく太く感じられ、スロットルペダルを踏み込むと低い回転数のままヌルッとした感触で加速するようなフィール。従来型の非ハイブリッド「T5」もなかなか良いパワートレインだったが、それと比べても長足の進歩だ。後で関係者にきいたところ、変速ショックや4気筒と2気筒の切り替わりなど、多くの局面でISGが補完に回っているのだそうだ。
意識されないハイブリッド化の恩恵はアイドリングストップの粘り腰。混雑した東金の市街地をノロノロと走っているときもシステムが音を上げず、停止時にきっちり内燃エンジンが停まり、そのままブレーキを放すまで再始動しないこと。ただしエアコンは回生量の豊かなフルハイブリッドと異なり、コンプレッサーを内燃エンジンで回す方式なので、室温が保たれなくなるとバッテリー残量によらず再始動する。
◆マイルドハイブリッドを得てより魅力的になった
燃費は満タン法で正確に計測したわけではないが、極端に飛ばさず、燃費を気にしてのチンタラ走りもせずといった走り方で227.6kmのドライブを終えての燃費計値は14.2km/リットルだった。ボルボの燃費計は2015年に登場した『V90』を境に急に信頼度が上がったので、極端な過大、過小表示はないのではないかと思われた。
今どきのフルハイブリッドのようなインパクトのある数字ではないが、5、6年くらい前の2トンクラスSUVのストロングハイブリッド並みの数値は出ていると考えるとなかなかやるもんだという感じであった。
ちなみに瞬間燃費計を観察した印象では、燃費が上がったのはマイルドハイブリッドのおかげというよりは、エンジンの改良が圧倒的に効いているようだった。低負荷のクルーズでの燃費の良さは2気筒運転が効いていたのか、特筆モノ。クルーズコントロール任せにせず、空走をうまく使えば17、8km/リットルくらい走れそうな勢いだった。
それに対し、踏切待ち、信号待ちのオンパレードだった東金の市街地区間の燃費計値10km/リットル前後だった。
48ボルトマイルドハイブリッドを得たXC60 B5はプレミアムDセグメント相当のミッドサイズSUVとしてより魅力的になったことは間違いない。エコ性能については現時点では燃費、CO2排出量ともターボディーゼルの代わりになるほど良いというわけではないが、ガソリンエンジン派のプレミアムセグメントの顧客にとっては興味深い1台となるだろう。
そのマイルドハイブリッドモデルを半日テストドライブする機会があったので、新パワートレインを中心にファーストインプレッションをリポートする。
◆ボルボのマイルドハイブリッドシステムとは
走行感をお伝えする前に軽く技術的なおさらいを。新ハイブリッドシステムは内燃エンジンのスターターモーターと発電機をまとめたISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレータ)とエンジンをベルトでつなぎ、アイドリングストップからの内燃エンジン始動、発進加速時のパワーアシスト、そして減速時のエネルギー回収などを行う、いわゆるパラレルハイブリッドである。
ISGの駆動用電気モーターとしての能力は最高出力10kW(13.6ps)、最大トルク40Nm(4.1kgm)と、自重1.9トン台のボディをそれ単体で駆動するには足りない。ゆえにマイルドハイブリッドと呼称される。内燃エンジンとISGの間には動力分割機構はなく、ISGは常に内燃エンジンと同調して回転する。
一方でブレーキはバイワイヤ方式で、小出力ながらブレーキ時の減速エネルギー回生量を取りきれるだけ取るように作られている。リチウムイオン電池パックの容量は0.5kWh。
内燃エンジン側も改良を受けている。一番大きな変更点は気筒休止システムが実装されたこと。軽負荷のときには2気筒運転としてスロットル開度を大きく取り、ポンピングロスを低減する作戦だ。それ以外についてもエンジンの内部摩擦損失の低減、吸排気系の見直し、エンジンマウント改良と、結構いろいろ変わっている。
◆チューニングレベルの高さには驚愕する
ドライブは往路が東京タワーを望む東京都心の芝公園を起点とし、首都高~東京湾アクアライン~圏央道を経由して千葉の九十九里浜へ。そこからしばらく郊外路と市街路を走り、帰路は東金道路から東関東自動車道、首都高湾岸線などを経由するというルート。
さて、そのXC60 B5の初乗りの印象だが、言われなければマイルドハイブリッドとまったく気づかないようなドライブフィールだった。
ISGの駆動力アシストや回生ブレーキが内燃エンジン+8速自動変速機にほぼ完璧に溶け込んでるばかりか、4気筒、2気筒の切り替えもトルク変動からも騒音・振動からも察知できない。そのチューニングレベルの高さには驚愕したが、違和感のなさは「うおお、これがハイブリッドというものかーー」という特別感を持たれにくいということでもある。
ダイレクトドライブフィールにこだわるヨーロッパのユーザーを主眼としていることは明らかで、日本でもまず欧州型のクルマ作りに強い共感を覚える層から取り込んでいくことになるだろう。
◆アイドリングストップの「粘り腰」にも恩恵
もう少し突っ込んでフィールを述べてみよう。特徴的だったのは市街地から高速クルーズに至るまで、パワートレインは驚異的に滑らかで、変速時のトルク変動が非常に少ないことだった。高速道路の合流地点での加速など、2速、3速、4速…と変速する際にエンジン回転数だけが変わり、加速度は一直線という感じである。マイルドハイブリッドであることが途中で何度も頭から飛ぶくらいであった。
普段のドライブでも低速トルクがえらく太く感じられ、スロットルペダルを踏み込むと低い回転数のままヌルッとした感触で加速するようなフィール。従来型の非ハイブリッド「T5」もなかなか良いパワートレインだったが、それと比べても長足の進歩だ。後で関係者にきいたところ、変速ショックや4気筒と2気筒の切り替わりなど、多くの局面でISGが補完に回っているのだそうだ。
意識されないハイブリッド化の恩恵はアイドリングストップの粘り腰。混雑した東金の市街地をノロノロと走っているときもシステムが音を上げず、停止時にきっちり内燃エンジンが停まり、そのままブレーキを放すまで再始動しないこと。ただしエアコンは回生量の豊かなフルハイブリッドと異なり、コンプレッサーを内燃エンジンで回す方式なので、室温が保たれなくなるとバッテリー残量によらず再始動する。
◆マイルドハイブリッドを得てより魅力的になった
燃費は満タン法で正確に計測したわけではないが、極端に飛ばさず、燃費を気にしてのチンタラ走りもせずといった走り方で227.6kmのドライブを終えての燃費計値は14.2km/リットルだった。ボルボの燃費計は2015年に登場した『V90』を境に急に信頼度が上がったので、極端な過大、過小表示はないのではないかと思われた。
今どきのフルハイブリッドのようなインパクトのある数字ではないが、5、6年くらい前の2トンクラスSUVのストロングハイブリッド並みの数値は出ていると考えるとなかなかやるもんだという感じであった。
ちなみに瞬間燃費計を観察した印象では、燃費が上がったのはマイルドハイブリッドのおかげというよりは、エンジンの改良が圧倒的に効いているようだった。低負荷のクルーズでの燃費の良さは2気筒運転が効いていたのか、特筆モノ。クルーズコントロール任せにせず、空走をうまく使えば17、8km/リットルくらい走れそうな勢いだった。
それに対し、踏切待ち、信号待ちのオンパレードだった東金の市街地区間の燃費計値10km/リットル前後だった。
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