ボルボ XC60 T8ポールスターエンジニアード 新型試乗 キレイに遊ばせてくれるPHEV…南陽一浩
◆抑制の効いた外観が逆にそそる
AMGやMスポーツ、RSシリーズなど、ドイツ御三家と同じくボルボには「ポールスター」がある。日本市場でも堅調かつ好調のボルボが、満を持してモデルイヤー2021年のポールスター・エンジニアード(以下PSE)の限定シリーズに、従来の『S60』や『V60』のみならず『XC60』を加えた。つまり「XC60 T8ポールスター・エンジニアード」だ。
ノーマルのT8リチャージと外観の違いは、いちおうヒントが出ているレベルの判別しづらさ。前後フェンダーの張り出しに着目すると、ノーマルより4cm、R-デザインより2.5cmほど拡大した全幅1940mmを、視覚的に実感できる。
225/40 R21というタイヤサイズはB6 R-デザインと同じだが、PSE専用ホイールはスタッド位置からリムがかなり外側に張り出していて、スポークの隙間から曙ブレーキ製のイエローのキャリパーと大径ローターが覗く。メーカー謹製のストリート・チューンたるハイパフォ・モデルは外観の抑制ぶりが肝要ながら、近年はハデめが多かった中で、XC60 T8 PSEの「地味ハデぶり」はお見事といえる。
◆パワーに負けない大人仕様のブレーキ
ターボ+スーパーチャージャーの直4・2リットルはノーマルの318ps・400Nmから出力を向上させ333ps・430Nm。とはいえ前後の電気モーターの出力22kWと28kWはノーマルと変わらず、スペックで指名買いの対象にはならないだろう。だが走り出してこのパワー&トルクを受け止めるシャシーを味わい出すと、事情は変わってくる。
パワートレイン全体の調律はスムーズそのものだが、ノーマルT8より数値以上にトルクが厚く感じられ、しかも6000rpm近くのトップエンドまで、だれることがない。レスポンスよさに加え、息つぎなく伸びやかに回るのだ。さらに2.1トン超という重量級の体躯にも関わらず、曙ブレーキの制動力が踏み始めから頼もしく、しかも踏力でコントロールしやすい。
22段階もの減衰力調整機構を備えたオーリンズ製ダンパーは、スポーツサスどころか梨地仕上げの美しいストラットタワーバーともども、レーシング・エキップメントといっていい。S60やV60 PSEが工場出荷時に前6/後9段戻しであるのに対し、XC60は前後とも10段戻しがデフォルトだ。
◆セダンやワゴンになくてSUVにあるもの
前脚をしならせつつステアリングを切ると、ややアンダーステアは感じるが、路面や姿勢の変化が逐一、剛性の高いダンパーやボディを通じて伝わってくる。上下の凹凸にも意外なほど鷹揚で、伸び側まで含め、ダンピング動作の質がとにかく高い。
しかもワインディングの下りで、フロントだけ4段戻しに固めてみたところ、すぐさまハンドリングに変化が訪れた。スキール音が出にくくなり、明らかにニュートラルに近づいた。セッティングの変化という意味では、S60やV60よりルーフ高もあって重量級のXC60の方が、現象が確認しやすいところもあるだろう。しかもトドメに、約40kmのEVモードを謳うが、1時間ほど加減速を繰り返して走り込んでも、回生効率もまずまずなのだろう、バッテリー残量は2割ほどを示していた。
いわばSUVでPHEVパワートレインを搭載しつつもXC60 T8 PSEには、じつは油で手を汚して遊ぶのと同質の、セッティングを変えては乗る、昔風の楽しみがたっぷり残されている。価格は1024万円で2021年モデルは日本で30台限定。オーダーの予約受付はオンラインのみとなる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。
AMGやMスポーツ、RSシリーズなど、ドイツ御三家と同じくボルボには「ポールスター」がある。日本市場でも堅調かつ好調のボルボが、満を持してモデルイヤー2021年のポールスター・エンジニアード(以下PSE)の限定シリーズに、従来の『S60』や『V60』のみならず『XC60』を加えた。つまり「XC60 T8ポールスター・エンジニアード」だ。
ノーマルのT8リチャージと外観の違いは、いちおうヒントが出ているレベルの判別しづらさ。前後フェンダーの張り出しに着目すると、ノーマルより4cm、R-デザインより2.5cmほど拡大した全幅1940mmを、視覚的に実感できる。
225/40 R21というタイヤサイズはB6 R-デザインと同じだが、PSE専用ホイールはスタッド位置からリムがかなり外側に張り出していて、スポークの隙間から曙ブレーキ製のイエローのキャリパーと大径ローターが覗く。メーカー謹製のストリート・チューンたるハイパフォ・モデルは外観の抑制ぶりが肝要ながら、近年はハデめが多かった中で、XC60 T8 PSEの「地味ハデぶり」はお見事といえる。
◆パワーに負けない大人仕様のブレーキ
ターボ+スーパーチャージャーの直4・2リットルはノーマルの318ps・400Nmから出力を向上させ333ps・430Nm。とはいえ前後の電気モーターの出力22kWと28kWはノーマルと変わらず、スペックで指名買いの対象にはならないだろう。だが走り出してこのパワー&トルクを受け止めるシャシーを味わい出すと、事情は変わってくる。
パワートレイン全体の調律はスムーズそのものだが、ノーマルT8より数値以上にトルクが厚く感じられ、しかも6000rpm近くのトップエンドまで、だれることがない。レスポンスよさに加え、息つぎなく伸びやかに回るのだ。さらに2.1トン超という重量級の体躯にも関わらず、曙ブレーキの制動力が踏み始めから頼もしく、しかも踏力でコントロールしやすい。
22段階もの減衰力調整機構を備えたオーリンズ製ダンパーは、スポーツサスどころか梨地仕上げの美しいストラットタワーバーともども、レーシング・エキップメントといっていい。S60やV60 PSEが工場出荷時に前6/後9段戻しであるのに対し、XC60は前後とも10段戻しがデフォルトだ。
◆セダンやワゴンになくてSUVにあるもの
前脚をしならせつつステアリングを切ると、ややアンダーステアは感じるが、路面や姿勢の変化が逐一、剛性の高いダンパーやボディを通じて伝わってくる。上下の凹凸にも意外なほど鷹揚で、伸び側まで含め、ダンピング動作の質がとにかく高い。
しかもワインディングの下りで、フロントだけ4段戻しに固めてみたところ、すぐさまハンドリングに変化が訪れた。スキール音が出にくくなり、明らかにニュートラルに近づいた。セッティングの変化という意味では、S60やV60よりルーフ高もあって重量級のXC60の方が、現象が確認しやすいところもあるだろう。しかもトドメに、約40kmのEVモードを謳うが、1時間ほど加減速を繰り返して走り込んでも、回生効率もまずまずなのだろう、バッテリー残量は2割ほどを示していた。
いわばSUVでPHEVパワートレインを搭載しつつもXC60 T8 PSEには、じつは油で手を汚して遊ぶのと同質の、セッティングを変えては乗る、昔風の楽しみがたっぷり残されている。価格は1024万円で2021年モデルは日本で30台限定。オーダーの予約受付はオンラインのみとなる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
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フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。
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