ボルボ XC90 リチャージ T8 雪上試乗 雪道を極上ドライブに変えるイケメンPHEV…河西啓介
◆名前を「Recharge」にリニューアル
ボルボ『XC90』に試乗するため青森県に行った。新幹線で八戸まで行き、そこから八甲田山を超えて青森市に向かうという試乗コースだ。ご存知ボルボは北欧スウェーデンの自動車メーカーであり、必然的に“雪に強い”というイメージがある(ありますよね?)。で、スノードライブのシーズンになったことだし、そのあたりを今いちど体感してみようというのが、今回の試乗のテーマなのである。
我われが東北新幹線を降り八戸駅に降り立つと、そこは一面の雪景色…ではなく、東京と変わらない、サラッサラのドライ路面だった。一瞬、試乗終わったか…?と思ったが、幸い前日に山のほうで雪が降り、八甲田方面はしっかり積もっているという。「一面の銀世界に佇むボルボ」を撮るべく雪装備に余念のないカメラマンともども、ほっとひと安心した。
それにしてもボルボXC90に試乗して記事を書くのは何度目だろう?たぶん片手では足りないような気がする。現行XC90のデビューは2015年。もうそれなりに時間が経っている。思えば現在のボルボの“イケメン路線”はこのXC90から始まり、今や『V90』、『V60』、『XC60』、『XC40』などすべての兄弟がイケメン化完了。長兄たるXC90はその間、新たなグレード追加やマイナーチェンジを受けてきたが、そろそろモデルチェンジも近い、と言われている。
今回試乗するのは「XC90 Recharge(リチャージ)プラグインハイブリッドT8 AWD」という複雑なパスワードのような長い名前なのだが、どこが新しくなったのですか?と(ボルボの方に)尋ねると、ざっくり言えばとくに変わったところはないという。いやあえて言うなら名前が変わった。
XC90のプラグインハイブリッド(PHEV)モデルは前輪をガソリンエンジン、後輪を電気モーターで駆動させる独自の四駆システムを持ち、これを「ツインエンジン」と称していたのだが、昨年からこのツインエンジンを含むハイブリッドおよびEVモデルに「リチャージ」という名前を与えた。<Re-Charge>つまり“外部からの再充電可能”という意味なのだが、新しい感じがしてなんだかカッコいい。このあたりのネーミングセンスは、さすが今や世界一のお洒落カーブランドたるボルボならではである。
◆ボルボ独自のハイブリッド4WDシステム
さて、今回の試乗の主な目的は先にも書いたXC90の雪道走行性能の体感だが、もうひとつ、広報担当によれば、ボルボのプラグインハイブリッド4WDシステムについて「走行中にバッテリーの電気がなくなったら、エンジンだけの2輪駆動になっちゃうの?」と懸念するユーザーがいるので、それについての正しい情報を伝えたいということだった。
結論からいうとその心配はなくて、XC90のプラグインハイブリッド4WDシステムは電気が少なくなればエンジンパワーを利用してバッテリーを充電しするので、“電欠”により2駆になってしまうことはない、ということだ。というわけで我われも安心して雪山に向かうことにした。
八戸港でイカ釣り漁船をバックに演歌のレコードジャケットぽい撮影を済ませると、八甲田山方面へ向かった。走り始めは電気モーターが2370kgの巨体をしずしずと押し出し、深くアクセルを踏むとターボとスーパーチャージャーを二丁掛けする2リットルガソリンエンジンが起動して力強く加速させる。ちなみにエンジンを使わずモーターだけで走るEVモードもあり、その状態では約40km走行することができる(カタログ値ゆえじっさいはそれより短くなると思うが)。
山道を上りはじめると、やがて両脇の木立が雪景色に変わる。そしていつのまにかあたり一面真っ白な雪道になった。それもそのはず、この八甲田山周辺は世界有数の豪雪地帯なのである。明治35年、青森の歩兵連隊が雪中行軍の演習中に猛吹雪に遭い、210名中199名が遭難死した事件(八甲田山雪中行軍遭難事件)はあまりに有名だ。この事件をもとにした新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』は読みましたか? 読んでなくても当時流行語になった、映画『八甲田山』のセリフ「天は我々を見放した……」を覚えている人は多いだろう。
◆「気にさせない」ことが最大の魅力
しかしXC90をドライブする我々は、天に見放されるどころか、ヒーティングされたほかほかのシートに収まり、「Bowers&Wilkins」のオーディオが奏でる80sシティポップス(竹内まりや、松原みきなど)を聴きながら、申し訳ないほどの極上ドライブを楽しんだ。
道の脇にかなりの深さの雪が積もるガチの雪山道を、21インチのスタッドレスタイヤを履いたXC90はなんの不安も感じさせず駆け抜けた。道中、雪中行軍遭難事件のさい直立したまま仮死状態で発見されたという後藤房之助伍長の像を見学したいと思ったが、周辺の雪が深く行くことができなかったのは残念だった。
XC90に限らず最近のボルボ車をドライブすると思うのだが、ボルボ車の魅力は「クルマのことをあれこれ考えさせない」ところだ。つまり走りも、乗り心地も、今回でいえば雪道での身のこなしも、すっと自然で気になるところがない。
決して出しゃばらないが、いつも優しくエスコートし、いざというときはしっかり守ってくれる。うーん、そんなオトコに、私はなりたい! で、それゆえにこのような試乗でもクルマを仔細にチェックするというより、ついつい「どこに行こっかな?」とドライブ気分になってしまうのである。つまりそれほどいいクルマである、ということなのだが。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
河西啓介|編集者/モータージャーナリスト
自動車雑誌『NAVI』編集部を経て、出版社ボイス・パブリケーションを設立。『NAVI CARS』『MOTO NAVI』『BICYCLE NAVI』の編集長を務める。現在はフリーランスとして雑誌・ウェブメディアでの原稿執筆のほか、クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、テレビコメンテーターなどとしても活動する。
ボルボ『XC90』に試乗するため青森県に行った。新幹線で八戸まで行き、そこから八甲田山を超えて青森市に向かうという試乗コースだ。ご存知ボルボは北欧スウェーデンの自動車メーカーであり、必然的に“雪に強い”というイメージがある(ありますよね?)。で、スノードライブのシーズンになったことだし、そのあたりを今いちど体感してみようというのが、今回の試乗のテーマなのである。
我われが東北新幹線を降り八戸駅に降り立つと、そこは一面の雪景色…ではなく、東京と変わらない、サラッサラのドライ路面だった。一瞬、試乗終わったか…?と思ったが、幸い前日に山のほうで雪が降り、八甲田方面はしっかり積もっているという。「一面の銀世界に佇むボルボ」を撮るべく雪装備に余念のないカメラマンともども、ほっとひと安心した。
それにしてもボルボXC90に試乗して記事を書くのは何度目だろう?たぶん片手では足りないような気がする。現行XC90のデビューは2015年。もうそれなりに時間が経っている。思えば現在のボルボの“イケメン路線”はこのXC90から始まり、今や『V90』、『V60』、『XC60』、『XC40』などすべての兄弟がイケメン化完了。長兄たるXC90はその間、新たなグレード追加やマイナーチェンジを受けてきたが、そろそろモデルチェンジも近い、と言われている。
今回試乗するのは「XC90 Recharge(リチャージ)プラグインハイブリッドT8 AWD」という複雑なパスワードのような長い名前なのだが、どこが新しくなったのですか?と(ボルボの方に)尋ねると、ざっくり言えばとくに変わったところはないという。いやあえて言うなら名前が変わった。
XC90のプラグインハイブリッド(PHEV)モデルは前輪をガソリンエンジン、後輪を電気モーターで駆動させる独自の四駆システムを持ち、これを「ツインエンジン」と称していたのだが、昨年からこのツインエンジンを含むハイブリッドおよびEVモデルに「リチャージ」という名前を与えた。<Re-Charge>つまり“外部からの再充電可能”という意味なのだが、新しい感じがしてなんだかカッコいい。このあたりのネーミングセンスは、さすが今や世界一のお洒落カーブランドたるボルボならではである。
◆ボルボ独自のハイブリッド4WDシステム
さて、今回の試乗の主な目的は先にも書いたXC90の雪道走行性能の体感だが、もうひとつ、広報担当によれば、ボルボのプラグインハイブリッド4WDシステムについて「走行中にバッテリーの電気がなくなったら、エンジンだけの2輪駆動になっちゃうの?」と懸念するユーザーがいるので、それについての正しい情報を伝えたいということだった。
結論からいうとその心配はなくて、XC90のプラグインハイブリッド4WDシステムは電気が少なくなればエンジンパワーを利用してバッテリーを充電しするので、“電欠”により2駆になってしまうことはない、ということだ。というわけで我われも安心して雪山に向かうことにした。
八戸港でイカ釣り漁船をバックに演歌のレコードジャケットぽい撮影を済ませると、八甲田山方面へ向かった。走り始めは電気モーターが2370kgの巨体をしずしずと押し出し、深くアクセルを踏むとターボとスーパーチャージャーを二丁掛けする2リットルガソリンエンジンが起動して力強く加速させる。ちなみにエンジンを使わずモーターだけで走るEVモードもあり、その状態では約40km走行することができる(カタログ値ゆえじっさいはそれより短くなると思うが)。
山道を上りはじめると、やがて両脇の木立が雪景色に変わる。そしていつのまにかあたり一面真っ白な雪道になった。それもそのはず、この八甲田山周辺は世界有数の豪雪地帯なのである。明治35年、青森の歩兵連隊が雪中行軍の演習中に猛吹雪に遭い、210名中199名が遭難死した事件(八甲田山雪中行軍遭難事件)はあまりに有名だ。この事件をもとにした新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』は読みましたか? 読んでなくても当時流行語になった、映画『八甲田山』のセリフ「天は我々を見放した……」を覚えている人は多いだろう。
◆「気にさせない」ことが最大の魅力
しかしXC90をドライブする我々は、天に見放されるどころか、ヒーティングされたほかほかのシートに収まり、「Bowers&Wilkins」のオーディオが奏でる80sシティポップス(竹内まりや、松原みきなど)を聴きながら、申し訳ないほどの極上ドライブを楽しんだ。
道の脇にかなりの深さの雪が積もるガチの雪山道を、21インチのスタッドレスタイヤを履いたXC90はなんの不安も感じさせず駆け抜けた。道中、雪中行軍遭難事件のさい直立したまま仮死状態で発見されたという後藤房之助伍長の像を見学したいと思ったが、周辺の雪が深く行くことができなかったのは残念だった。
XC90に限らず最近のボルボ車をドライブすると思うのだが、ボルボ車の魅力は「クルマのことをあれこれ考えさせない」ところだ。つまり走りも、乗り心地も、今回でいえば雪道での身のこなしも、すっと自然で気になるところがない。
決して出しゃばらないが、いつも優しくエスコートし、いざというときはしっかり守ってくれる。うーん、そんなオトコに、私はなりたい! で、それゆえにこのような試乗でもクルマを仔細にチェックするというより、ついつい「どこに行こっかな?」とドライブ気分になってしまうのである。つまりそれほどいいクルマである、ということなのだが。
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