【マツダ ロードスター 新型試乗】「RS」と「990S」フィーリングの違いとは、…九島辰也
このところ国産メーカーは走りについてかなり細かなところを言及している。スバル然り、ホンダ然り、トヨタ然り。『BRZ』と『GR 86』がそうだったが、『ソルテラ』と『bZ4X』もそうだった。
そんな中、そうした行いをずいぶん前から我々にアピールしているメーカーがある。マツダだ。人馬一体をモチーフに先日も『ロードスター』の改良版の試乗会が行われた。
重量を増やさずに成し遂げた、さらなる人馬一体
今回の目玉は「キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPS)」と呼ばれるもので、旋回中の車体の浮き上がりを抑制する技術である。コーナーの手前でブレーキをかけた時にボディが沈み込む特性を活かして、リアを安定させ路面に吸い付くような走りをする手法だ。2019年にニュルブルクリンクで走り込んで完成させていたという。
発想は、ロードスターは常用域での走りを大切にしてきたが、高速&高Gの場面では頼りないという声に基づく。であれば、バネ上で安定させるしかない。ところが、単純にダンパーの減衰圧とバネレートを上げるとアバルト『124スパイダー』(編集部注:ロードスターのOEM車として日本でも2016年に発売されたモデル)になってしまう。そこで、ロールの浮き上がりを抑えて安定させることに決めたそうだ。ちなみに、バネ下だけ軽くしても軽薄な感じの走りになってしまうので、そこは論外となる。
ユニークなのは、車両重量を増やさずに成し遂げたこと。そのためオプション設定していたRAYSの軽量ホイールを標準化した。また重量が軽いという理由からブレーキはブレンボ製キャリパーにし、さらにローターを大きくすることも実現した。タイヤはYOKOHAMAのアドバンを継続するが、理由はシンプルで、タイヤを替えると燃費申請など新たに行わなくてはならなくなるためコストがかかるからだ。コストアップはそのまま販売価格に影響するのでありがたい選択だ。
で、それを装備した「RS」と話題の「990S」を試乗した。どちらもMT。コースは全行程ワインディングだ。
「RS」と「990S」の違いは
まずはRSだが、最初からコーナリングのスタビリティが上がったのがわかった。コーナー進入時から出口まで沈み込んだままクルッと回る。リアの踏ん張りが強く感じる分、コーナリングスピードは上がったはずだ。もしかしたら出口でアクセルを踏み込むタイミングもコンマいくつか早まったかもしれない。確実にイン側のトラクション効率も上がっている。きっとサーキットに持ち込んで周回を重ねれば、KPS未装着車とのタイム差は如実に現れるだろう。
990Sは機関的には同じなのだが、フィーリングが異なる。リアのスタビライザーとセンタートンネルの補強が無い分、ボディのしなりが感じられる。なので、よりクルマ全体でコーナーを回る各部の状況が全身に伝わってくる。人間だけでなくクルマが受けるGフォースも一緒に味わうといった感覚だ。
よってこの違いは好みでしかないと思われる。RSがマシン的というなら990Sは人間的。というか、極端に表現するなら990Sのボディのしなる感じは、昭和のスポーツカーに通じるところがある。
いずれにせよ、久しぶりのロードスターでのワインディングは終始楽しいものだった。先日某自動車雑誌で「あなたにとっての偉大なスポーツカーは?」というアンケートで第二位に挙げたほどである。第一位は自分の愛車なのでご勘弁を。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。
そんな中、そうした行いをずいぶん前から我々にアピールしているメーカーがある。マツダだ。人馬一体をモチーフに先日も『ロードスター』の改良版の試乗会が行われた。
重量を増やさずに成し遂げた、さらなる人馬一体
今回の目玉は「キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPS)」と呼ばれるもので、旋回中の車体の浮き上がりを抑制する技術である。コーナーの手前でブレーキをかけた時にボディが沈み込む特性を活かして、リアを安定させ路面に吸い付くような走りをする手法だ。2019年にニュルブルクリンクで走り込んで完成させていたという。
発想は、ロードスターは常用域での走りを大切にしてきたが、高速&高Gの場面では頼りないという声に基づく。であれば、バネ上で安定させるしかない。ところが、単純にダンパーの減衰圧とバネレートを上げるとアバルト『124スパイダー』(編集部注:ロードスターのOEM車として日本でも2016年に発売されたモデル)になってしまう。そこで、ロールの浮き上がりを抑えて安定させることに決めたそうだ。ちなみに、バネ下だけ軽くしても軽薄な感じの走りになってしまうので、そこは論外となる。
ユニークなのは、車両重量を増やさずに成し遂げたこと。そのためオプション設定していたRAYSの軽量ホイールを標準化した。また重量が軽いという理由からブレーキはブレンボ製キャリパーにし、さらにローターを大きくすることも実現した。タイヤはYOKOHAMAのアドバンを継続するが、理由はシンプルで、タイヤを替えると燃費申請など新たに行わなくてはならなくなるためコストがかかるからだ。コストアップはそのまま販売価格に影響するのでありがたい選択だ。
で、それを装備した「RS」と話題の「990S」を試乗した。どちらもMT。コースは全行程ワインディングだ。
「RS」と「990S」の違いは
まずはRSだが、最初からコーナリングのスタビリティが上がったのがわかった。コーナー進入時から出口まで沈み込んだままクルッと回る。リアの踏ん張りが強く感じる分、コーナリングスピードは上がったはずだ。もしかしたら出口でアクセルを踏み込むタイミングもコンマいくつか早まったかもしれない。確実にイン側のトラクション効率も上がっている。きっとサーキットに持ち込んで周回を重ねれば、KPS未装着車とのタイム差は如実に現れるだろう。
990Sは機関的には同じなのだが、フィーリングが異なる。リアのスタビライザーとセンタートンネルの補強が無い分、ボディのしなりが感じられる。なので、よりクルマ全体でコーナーを回る各部の状況が全身に伝わってくる。人間だけでなくクルマが受けるGフォースも一緒に味わうといった感覚だ。
よってこの違いは好みでしかないと思われる。RSがマシン的というなら990Sは人間的。というか、極端に表現するなら990Sのボディのしなる感じは、昭和のスポーツカーに通じるところがある。
いずれにせよ、久しぶりのロードスターでのワインディングは終始楽しいものだった。先日某自動車雑誌で「あなたにとっての偉大なスポーツカーは?」というアンケートで第二位に挙げたほどである。第一位は自分の愛車なのでご勘弁を。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
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