【スバル レヴォーグ STI スポーツR 新型試乗】最上級の2.4Lは、その真価を発揮できるのか…中村孝仁

  • スバル レヴォーグ STI スポーツR
2.4リットルのフラット4を搭載する最上級モデル
例によって恵比寿のスバルビルから広報車を借りだして、都内の雑踏に繰り出す。毎度のことながら恵比寿はいつも人とクルマであふれている。

そんなわけだから、車速も大して上がらず、幹線道路に出ても40~50km/hがいいところだ。あい変わらずとてもスムーズで快適な乗り心地とそこそこに質の良いインテリアに包まれた移動は心地よい。そのように走る限り、最上級モデルとして君臨する『レヴォーグ STI スポーツR』の性能的な片鱗は姿を見せることがなく、まあこうした移動の多い人にとってはこの最上級モデルは大きな意味を持たないかな?とも思ったものである。

大きな違いは2.4リットルのフラット4を搭載していること。それも他のレヴォーグに搭載されている1.8リットルの拡大版ではなく、北米中心に販売される『アセント』のそれをベースにしたもので、これはスバルの高性能モデル『WRX S4』に搭載されているモノと同じである。勿論チューニングまで同じわけではないが、WRX用から若干デチューンされただけだから、エンジン側から見れば本質的にはWRXの血統を受け継いでいる。

例によってドライブセレクトモードを持つZF製の電子制御ダンパーを持ち、2ピニオンの電動アシストステアリングを装備する。昨年来スバルに乗ってこの可変ダンパーと2ピニオンステアリングの良さを知ってしまってからというもの、どの車に乗ってもステアフィールと足の動き具合については辛口の評価になっている気がしないでもない。とにかく相当にお金がかかっているはずなのだが、今のスバルはちゃんとかけるべきところにお金をかけて作っている印象が強く、とても好感が持てる。

次元の異なるハイパフォーマンスを発揮できるか
それだけに走りの質が素晴らしく高い。実はこの2.4リットルを積んだレヴォーグ、すでに昨年サーキットでは試乗を行っている。その時の走りっぷりはやはり1.8リットルとは次元の異なるハイパフォーマンスぶりを発揮して大いに感銘を受けたものだ。もっともさすがにWRXと比べると走りの鋭さはだいぶ削がれるが…。

2ピニオンステアリングの良さはとにかくスムーズで、とげとげしさのないこと。ステアフィールは決してシャープという印象ではない。ステアリングを切り始めにいきなり想定以上のゲインが立ち上がるようなクィックさはなく、まさに切ったなり。想定した通りの転舵で想定した通りのコーナリングが行える。

ダンパーもデフォルトのノーマルから最もハ―ドなダンピングを示すスポーツ+まで、明確な変化を感じさせてくれるわかり易いもの。ドライブモードセレクトはこのサスペンション、ステアリングの他にエンジンの出力特性やアイサイトの性能、さらにはエアコンの効きやAWDの反応速度まで微に入り細に入り変えてくれる。長年4WDの開発に取り組んできたスバルならではで、これらをわかって使い分ければ、このクルマのパフォーマンスはただの飾りではなくなるはずである。

しかしそうは言っても都会の雑踏ではその次元の異なるハイパフォーマンスを発揮できるところが少なく、冒頭記した通りで1.8リットルと選ぶところが無いという印象になってしまうのだ。まあ、ドライ路面では高速道路でその真価を発揮してくれる。厚めのトルクは本来低速からでも違いを発揮してもよさそうなものだが、このクルマの場合いたずらにパフォーマンスをひけらかすようなチューニングとはなっておらず、まさに能ある鷹。いざという時は俄然力を発揮するという印象である。少しワインディングを攻めてみると、コーナーからの立ち上がりでクルマがぐいぐいと後ろから押される印象を受ける。力強さを感じさせるシーンである。

すべてにおいてワンランク上のレヴォーグ
一般的に使うにあたりどうしても気になったのは、ブレーキホールドモードの物理スイッチがなく、デフォルトでは遮断されてしまうこと。探しても見つからなかったのでもしあるとしたら申し訳ないのだが、とにかくいちいちディスプレイから呼び出してオンにしなくレはならず、とても不便だったことをお伝えしよう。

使いにくさを感じたのはそれだけ。このところガソリン価格が上昇しているので、ハイオク指定のこのクルマには少し不利に働くが、すべてにおいてワンランク上のレヴォーグであることは間違いなく、所有欲も満足できること請け合いである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

[提供元:レスポンス]レスポンス

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