「動的質感」って何だ? 大学自動車部員がスバルの研究センターに潜入!【スバルテックツアー】
◆「社外秘」の文字が躍るセンター内、出迎えたのは…
「スバルテックツアー」とは、スバルが同社の安全に関する取り組みなどをメディア向けに紹介するイベント。これまでに複数回開催されており、「走行安全編」と題された今回は、リアルイベントとして開催された。
アルバイト編集部員たちは大学の体育会自動車部に所属しているとはいえ、それ以外は普通の大学生と変わりない。会場となるスバル研究実験センターには「敷地内撮影禁止」や「社外秘」の文字が踊り、普段は絶対に入れない場所であるという事実に独特な高揚感を覚えた。
最初に案内されたのは、全長4.3kmのオーバルコース。東京ドーム38個分あるという敷地をぐるりと囲うように設置されており、最大バンク角は43度にも及ぶ。しばらく待っていると戦闘機のような音を響かせながら、ほとんど壁のようなそのバンクを4台のスバル車が走り抜けていった。
一糸乱れぬ隊列走行は、さながら集団行動のよう。120km/hを超える高速走行でドライバーの高い技量を示すと同時に、スバル車の安定性を知らしめるオープニングセレモニーであった。
◆素人でも分かる「動的質感」向上による大きな違い
第一のプログラムは、現行『XV』と新型『クロストレック』の比較試乗体験。事実上のフルモデルチェンジとなった両車を乗り比べ、スバルが力を入れた「動的質感」について体感するという内容だ。「動的質感」とはスバルが提唱するステアリングやペダル、クルマの動きなどから人が感じる“走りの気持ち良さ”のことだ。
この「動的質感」を体感する場所は商品性評価路と呼ばれるテストコースで、日本の峠道のようなアップダウンとコーナーが再現されている。
まずはXVから。お恥ずかしい話だが、我々大学生アルバイター2人が普段から乗るクルマは、30年以上前の(客観的に見て)オンボロ車。そもそも「現代のクルマ」のしっかりとした乗り味にまず感動してしまった。ハンドルを切った分だけ曲がる操舵性、高低差のあるコーナーでも変わらない乗り心地、すでに現行の時点で十分なほどである。コメントが未熟であることを承知で言えば、「これ以上の進化は考えられない」と思ってしまったほどだ。
続いて新型のクロストレックに乗りかえる。コーナーを抜けた途端、素人でもすぐに分かるほど2台の違いが大きく出ていた。不思議なことに、うねるようなコーナーでも運転姿勢が全くブレないのである。新型では腰の骨の要所を押さえることで車体の揺れを体に伝えないというシートが採用されているが、それの効果だという。見た目は量産タイプの純正シートだが、感覚としては自動車競技用のもののようなホールド性だ。
また、驚いたことに、どんな形状のコーナーに対しても一発でハンドルの舵角が定まるのである。言葉で説明することが難しいが、自身のハンドル操作に対してノータイムで車体が曲がっていく感覚だ。スバル曰く、接着剤の見直しなど車体の剛性を高めることで、このような運転感覚を実現したのだという。
今回のイベントの主題であるところの「走行安全」とは、動的性能や危険回避性能のことを指し、「走りを極めれば安全になる」という言葉でスバルは表現する。危険が生じた際も、車体を意のままにコントロールできればそれを回避できるという思想だ。クロストレックの試乗からは、確かに動的質感の向上が安全性の向上にも繋がるということを体感できた。
◆2トン越えの巨体でも、悠々と坂道発進
続いてのプログラムは昨年発売されたスバルのBEV『ソルテラ』について。始めに、対角に設置された障害物を走破するクロール路走行を見学。バネが伸びる限界よりも大きな障害を走行していくため、途中で対角のタイヤが浮いてしまう。そのような場面でも危なげなく走破してしまう様子は圧巻であった。四輪駆動だからこその走りである。
続いては30度もの急勾配、しかも砂利道という不安定な路面での登坂走行体験。このような状況では、特にトルクの大きい車両はタイヤが空転しがちで、非常に不安定になる。私が体験した際は登坂こそできたものの、タイヤを空転させて、車体がふらふらしながら登る状況であったため、同乗者を大いに不安がらせてしまった。タイヤが滑らないポイント、つまりグリップの限界を見つけることは困難な操作なのだ。
そこで活躍するのがソルテラに備えられた「X-MODE」と「グリップコントロール」。アクセルコントロールを自動で行い、一定の速度で登坂することで、ドライバーがハンドル操作に集中することができるというもの。実際に体験してみると、足に意識を向けなくてもよくなったことで路面を観察する余裕が生まれ、より安全な経路を走行して登坂することができた。
ソルテラの体験には、もう1つ印象的なシーンがある。他班が登坂中にスタックしてしまった際、車を少し後退させてから脱出するのかと思えば、ほとんど後退することなくすんなりと発進したのである。30度という急勾配での坂道発進、しかも2トンを超える巨体にもかかわらず、だ。電子制御恐るべし、と感じた瞬間である。
> 後編に続く
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