三菱車にはやっぱり“土”が似合う!オフロードでも驚きの乗り心地!?新型『トライトン』に先行試乗
舞台は、同社が新しいテストフィールドとして開設した北海道の「十勝アドヴェンチャートレイル」ということで、試したのはクローズドのオフロードのみ。しかしながら、おかげで一般道では体験できない高い走破性の一端を覗くことができた。
◆クルマの根幹部分は三菱の自社設計
試乗車は日本導入予定の4枚ドアを備えた「ダブルキャブ」の上級グレードで、外装にはオーバーフェンダー、荷台のスタイリングバーなどが備わる。そもそもフォルムは直線基調で、アイデンティティであるダイナミックシールドと大きなグリルを融合させた顔つきも精悍。しかもサイズは全長5360mmにもなるだけに、存在感は相当なものと言える。
この新型トライトンはフレーム付きのボディ構造やサスペンション、2.4リットルディーゼルエンジンといったハードウェアは完全に新設計。しかも日産、ルノーとのアライアンスの財産はADAS系に用いるだけで、これらクルマの根幹部分は三菱の自社設計とされている。独創性ある商品でなければ市場で受け入れられないという思い、あるいは強い危機感が、その背景にはある。
◆オフロードでも驚きの乗り心地!?
早速、走り出そう。コースはすべてダート路面で。山を切り拓いて作ったというだけにアップダウンが激しい。しかも、その中には大小のうねり、車体が大きく横に傾くキャンバー路面、左右互い違いに盛り上がった道を超えていくモーグル、最大40度という急勾配が用意されている。アジアンクロスカントリーラリーの車両もここで鍛えたという正真正銘のテストフィールドだ。
トルク感応型LSDを用いたセンターデフを装備し、基本前後駆動力を40:60に設定したスーパーセレクト4WD-IIは4輪駆動の「4H」にセット。走行モードは「NORMAL」のまま、いよいよ走り出す。
ここでまず感じたのは、乗り心地の良さだった。オフロードで? と言われるかもしれないが、路面の荒れたところでもゴツゴツとした感触が直接的に響いてくることがなく、大入力に対してもガンッと突き上げないとしなやかに受け止めてくれる。
しかも姿勢はフラット。フレーム別体構造のボディにありがちな微妙な揺れ感や、ブルブルとした感触もまったく感じ取れなかった。操舵応答性もリニアで、切った通りにクルマが曲がる。基本的な素性の良さに加えて、電動パワーステアリングのチューニング、ブレーキ制御によるAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)なども効いているのだろう。フレーム付きだということを忘れさせる、SUV感覚の乗り味である。
◆「横転しそう!」と手に汗握るのはドライバーだけ
横に30度近く車両が傾くキャンバー路面は、横転しそうに思えて手に汗握るが、不安を感じているのはドライバーだけで、クルマにとっては全然余裕だ。平地に戻る際には一気に荷重がかかるが、その時もドスンと落ちるのではなく、ひたっと接地してくれるので安心感は高い。
高いボディ剛性はもちろん、リアサスペンションの3枚リーフもこの乗り味に貢献しているのは間違いない。通常時は2枚でしなやかに衝撃をいなしながら、大きな荷重がかかった時には3枚目をヘルパーのように機能させて、しっかり入力を受け止めているのである。
モーグル路面の走破性にも舌を巻いた。車体が大きく傾く場面でもサスペンションのストロークにとにかく余裕があり、タイヤが路面から離れない。特にリアはリジッドなので「えっ」と思うほどの姿勢になっても、トラクションを失うことはないのだ。
◆オンロードの走りにも相当期待できそう
実はトライトンの後に『アウトランダーPHEV』や『デリカD:5』、『デリカミニ』などもほぼ同じコースで試したが、トライトンの懐深さはやはりダントツと感じた。パリ・ダカの“レジェンド”、増岡浩氏の激しいデモランでも、激しく見える走りにも関わらず挙動は穏やかで、そのポテンシャルの高さを実感させたのである。
これはオンロードでの走りにも相当期待できそう。短時間の試乗だったが、早く試してみたいという思いがますます募ってしまった。生まれ変わりつつある三菱を象徴するモデルとしてこのトライトン、注目しておくべきモデルであることは間違いない。
島下泰久(しました・やすひさ)
1972年神奈川県生まれ。走行性能だけに留まらない、クルマを取り巻くあらゆる事象を守備範囲に自動車専門誌、一般誌、ファッション誌、webなど様々なメディアを舞台に活動。2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動運転技術、電動モビリティを専門的に扱うサイト「サステナ(http://sustaina.me)」を主宰する。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社刊)など。
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