【BMW i5 海外試乗】ステアリングの最中はBEVであることを忘れる…渡辺慎太郎
BMW『5シリーズ』は1972年に初代がデビューし、50年以上の時を経て8代目となった。歴代の5シリーズと比較して決定的に異なるのは、新型5シリーズにはBEV版があるということである。『7シリーズ』のBEVを『i7』と呼ぶように、5シリーズのBEVも『i5』の称号が与えられた。
◆998万円、挑戦的な日本価格の『i5』
ポルトガル・リスボンで開催された国際試乗会にずらりと並んだのはi5のみ。残念ながら内燃機搭載モデルは見当たらなかったが、日本でも近いうちに試乗する機会が訪れるそうだ。BMWは日本市場をことのほか重要視している。生産が開始されたのは8月末で、10月には日本へ到着するというから、初期の生産ロットに日本向けがしっかりと確保されていることになる。
ご存知のように、すでに日本国内での発表は済んでおり、日本仕様と価格は公になっている。ガソリンとディーゼルはいずれも48Vのマイルドハイブリッド仕様で、「523iエクスクルーシブ」が798万円、「523iスポーツ」が868万円、「523d xDrive Mスポーツ」が918万円、「i5 eDrive 40エクセレンス」が998万円、「i5 eDrive 40 Mスポーツ」が998万円、そして「i5 M60 xDrive」が1548万円のプライスタグを掲げている。
この中でも注目すべきはi5の価格設定だ。eDrive 40とM60 xDriveに相当すると思われるメルセデスの『EQE350+』と『AMG EQE53 4MATIC+』の価格はそれぞれ1248万円と1922万円。円安が叫ばれる昨今の情勢を鑑みて、かなり挑戦的な価格設定になっていることがわかる。
◆Eクラスよりはるかに大きいサイズ
新型5シリーズでまず目を惹かれるのは堂々たるボディである。全長は97mm、全幅は32mm、全高は36mm、ホイールベースは20mm、それぞれ従来型よりも延長され、全長はついに5mを超え、全幅は1900mmに達してしまった。メルセデスの新型『Eクラス』は全長が4949mm、全幅が1880mmだから、Eクラスよりもはるかに大きい。ちなみにEQEの全長は4970mm、全幅は1905mmである。新型5シリーズをメルセデスと比較するときに、i5のライバルはEクラスなのか、あるいはEQEとするべきなのかちょっと悩んでしまう。
プラットフォームは現行『3シリーズ』から始まり7シリーズでも共有するものを5シリーズも使っている。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤが5リンクだが、i5はリヤのみが、空気ばねを採用したエアサスペンションとなっている。
ホイールベースは2995mm。BEVの場合、ホイールベース=電池容量となるので、長いほど(重くなるが)電池容量は増えて航続距離も伸びる。実際、EQEのホイールベースは3mを超えて3120mmとし、電池容量は90.6kWh、最大航続距離は624km(350+)を確保している。いっぽうi5のホイールベースは2995mmで電池容量は81.2kWh、最大航続距離は582km(eDrive 40)となっている。
メルセデスがBEV専用のアーキテクチュアをわざわざ用意したのは、バッテリー容量を最大限確保するためだ。内燃機と共有するBMWはその点に関しては不利だが、ホイールベースが長くなると曲がりにくくなるのも事実。操縦性を何より重視するBMWとしては、2995mmのホイールベースは航続距離と操縦性の両立を図る上での落とし所だったのだろう。
新型5シリーズの室内の風景は7シリーズに似ているが、BMW初となる試みも見られる。“ビーガンインテリア”と呼ばれるそれは、シート/ダッシュボード/ドアトリム/ステアリングに使われる表皮が、本革のような風合いの人工素材となっている。見た目や手触りは本革と比べても遜色ない質感で、今後は自動車業界でも広く使われるようになるかもしれない。機能全般はセンターのタッチパネルで操作するが、ダイヤル式スイッチをセンターコンソールに残しているのはBMWの見識と言えるだろう。タッチパネルは運転中に操作するとミスタッチが多く使いにくいからだ。
◆ステアリングを切っている最中はBEVであることを忘れる
eDrive 40はリヤのみにモーターを配置する後輪駆動で、最高出力340ps/最大トルク430Nmを発生する。車両重量は2130kg(DIN)。日本仕様のi5には標準装備のインテグレイテッド・アクティブ・ステアリング(後輪操舵)が試乗車にも装着されていた。2トン超えの車重がほとんど気にならないパワフルな動力性能で、後輪操舵の手助けもあってか回頭性も良好。ステアリングフィールは少し希薄で、ダイレクト感に乏しかったのはひょっとすると個体差の問題かもしれない。というのも、後で試したM60 xDriveではそんなことなかったからである。
M60 xDriveはその名の通り、フロントにもモーターを置く四輪駆動で、システムとしての最高出力は601ps、最大トルクは795Nm(日本仕様)を発生する。“M”を冠することから、前後のサブフレームには補強が施され、アクティブ・スタビライザーも前後に標準装備されている。
ローンチコントロールを使用した場合の0-100km/hは3.8秒。ちょっとしたスポーツカー並みの動力性能である。ターンインからの所作は、ばね上の動きを抑えてキレイな過渡の姿勢変化を見せるBMWらしいもので、ステアリングを切っている最中はBEVであることを忘れて駆け抜ける喜びを満喫できる。
新型5シリーズには最新のOSである“BMW OS 8.5”が採用されている。車両に搭載する電子デバイスの数が年々増えていくなかで、各社とも独自のOSの開発に余念がない。8.5ではインフォテイメント/ADAS/ドライビングの各種デバイスを統合制御。停車中にはスマホをコントローラーにしてオリジナルのゲームが楽しめたりするという。自動運転を見据えて、車内での過ごし方が新しい段階へ入りつつあるらしい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
◆998万円、挑戦的な日本価格の『i5』
ポルトガル・リスボンで開催された国際試乗会にずらりと並んだのはi5のみ。残念ながら内燃機搭載モデルは見当たらなかったが、日本でも近いうちに試乗する機会が訪れるそうだ。BMWは日本市場をことのほか重要視している。生産が開始されたのは8月末で、10月には日本へ到着するというから、初期の生産ロットに日本向けがしっかりと確保されていることになる。
ご存知のように、すでに日本国内での発表は済んでおり、日本仕様と価格は公になっている。ガソリンとディーゼルはいずれも48Vのマイルドハイブリッド仕様で、「523iエクスクルーシブ」が798万円、「523iスポーツ」が868万円、「523d xDrive Mスポーツ」が918万円、「i5 eDrive 40エクセレンス」が998万円、「i5 eDrive 40 Mスポーツ」が998万円、そして「i5 M60 xDrive」が1548万円のプライスタグを掲げている。
この中でも注目すべきはi5の価格設定だ。eDrive 40とM60 xDriveに相当すると思われるメルセデスの『EQE350+』と『AMG EQE53 4MATIC+』の価格はそれぞれ1248万円と1922万円。円安が叫ばれる昨今の情勢を鑑みて、かなり挑戦的な価格設定になっていることがわかる。
◆Eクラスよりはるかに大きいサイズ
新型5シリーズでまず目を惹かれるのは堂々たるボディである。全長は97mm、全幅は32mm、全高は36mm、ホイールベースは20mm、それぞれ従来型よりも延長され、全長はついに5mを超え、全幅は1900mmに達してしまった。メルセデスの新型『Eクラス』は全長が4949mm、全幅が1880mmだから、Eクラスよりもはるかに大きい。ちなみにEQEの全長は4970mm、全幅は1905mmである。新型5シリーズをメルセデスと比較するときに、i5のライバルはEクラスなのか、あるいはEQEとするべきなのかちょっと悩んでしまう。
プラットフォームは現行『3シリーズ』から始まり7シリーズでも共有するものを5シリーズも使っている。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤが5リンクだが、i5はリヤのみが、空気ばねを採用したエアサスペンションとなっている。
ホイールベースは2995mm。BEVの場合、ホイールベース=電池容量となるので、長いほど(重くなるが)電池容量は増えて航続距離も伸びる。実際、EQEのホイールベースは3mを超えて3120mmとし、電池容量は90.6kWh、最大航続距離は624km(350+)を確保している。いっぽうi5のホイールベースは2995mmで電池容量は81.2kWh、最大航続距離は582km(eDrive 40)となっている。
メルセデスがBEV専用のアーキテクチュアをわざわざ用意したのは、バッテリー容量を最大限確保するためだ。内燃機と共有するBMWはその点に関しては不利だが、ホイールベースが長くなると曲がりにくくなるのも事実。操縦性を何より重視するBMWとしては、2995mmのホイールベースは航続距離と操縦性の両立を図る上での落とし所だったのだろう。
新型5シリーズの室内の風景は7シリーズに似ているが、BMW初となる試みも見られる。“ビーガンインテリア”と呼ばれるそれは、シート/ダッシュボード/ドアトリム/ステアリングに使われる表皮が、本革のような風合いの人工素材となっている。見た目や手触りは本革と比べても遜色ない質感で、今後は自動車業界でも広く使われるようになるかもしれない。機能全般はセンターのタッチパネルで操作するが、ダイヤル式スイッチをセンターコンソールに残しているのはBMWの見識と言えるだろう。タッチパネルは運転中に操作するとミスタッチが多く使いにくいからだ。
◆ステアリングを切っている最中はBEVであることを忘れる
eDrive 40はリヤのみにモーターを配置する後輪駆動で、最高出力340ps/最大トルク430Nmを発生する。車両重量は2130kg(DIN)。日本仕様のi5には標準装備のインテグレイテッド・アクティブ・ステアリング(後輪操舵)が試乗車にも装着されていた。2トン超えの車重がほとんど気にならないパワフルな動力性能で、後輪操舵の手助けもあってか回頭性も良好。ステアリングフィールは少し希薄で、ダイレクト感に乏しかったのはひょっとすると個体差の問題かもしれない。というのも、後で試したM60 xDriveではそんなことなかったからである。
M60 xDriveはその名の通り、フロントにもモーターを置く四輪駆動で、システムとしての最高出力は601ps、最大トルクは795Nm(日本仕様)を発生する。“M”を冠することから、前後のサブフレームには補強が施され、アクティブ・スタビライザーも前後に標準装備されている。
ローンチコントロールを使用した場合の0-100km/hは3.8秒。ちょっとしたスポーツカー並みの動力性能である。ターンインからの所作は、ばね上の動きを抑えてキレイな過渡の姿勢変化を見せるBMWらしいもので、ステアリングを切っている最中はBEVであることを忘れて駆け抜ける喜びを満喫できる。
新型5シリーズには最新のOSである“BMW OS 8.5”が採用されている。車両に搭載する電子デバイスの数が年々増えていくなかで、各社とも独自のOSの開発に余念がない。8.5ではインフォテイメント/ADAS/ドライビングの各種デバイスを統合制御。停車中にはスマホをコントローラーにしてオリジナルのゲームが楽しめたりするという。自動運転を見据えて、車内での過ごし方が新しい段階へ入りつつあるらしい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
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