【三菱 エクスパンダーHEV 海外試乗】素性のよさが光る走り!新ハイブリッドの恩恵は…諸星陽一
◆ASEANで人気の3列シートMPV『エクスパンダー』
エクスパンダーは2017年にインドネシアで発表された3列シートのMPV(ミニバン)で、製造もインドネシアで開始された。当初からアジア戦略モデルであり、ASEAN諸国を中心に輸出も行われ、人気モデルとなっている。
ボディタイプは4ドア(リヤドアはスライドでなくヒンジ式)+リヤハッチの背高ワゴンで、3列シートを備える多人数乗車タイプ。2列目、3列目シートを折りたたむことで荷物の搭載能力を向上できることも大きな魅力である。ボディサイズは全長が4595mm。全幅はエクスパンダーが1750mm、樹脂製のオーバーフェンダーが装着されたエクスパンダークロスが1790mm。全高は1750mmとなる。この寸法は仕様違いで若干の差があるもののICE(エンジン)車も同一。最低地上高は205mm(ICE車は220mm)が確保されている。
HEVに採用されるパワーユニットは、『アウトランダーPHEV』のフロントモーター、インバーター、ジェネレーターを流用したもの。エンジンは1.6リットルに変更されている。エンジンのスペックは95馬力/134Nm、モーターのスペックは116馬力/255Nm。バッテリーは1.1kWhのリチウムイオンが組み合わされる。駆動方式はFFのみである。
今回の試乗は2024年2月に追加になったHEVモデルを体感することが大きな目的で、テストコースに設けられた3種のコースにそれぞれICEとHEVが用意され比較できるようになっていた。各コースに用意されたICEとHEVはタイヤ銘柄とサイズも揃えられていた。
◆素性の良いサスの動き、ハイブリッドの低重心化も効いている
まず不整路面を試乗した。この路面では出力差による違いを感じ取るのは難しいが、バッテリー搭載により重心が低くなった効果なのだろう、乗り心地がいい。もともとのサスペンションの動きもよく、ICEでは柔軟に路面を追従することを確認できた。HEVの場合はそれに加えて乗り心地そのものがいいのだ。車重が重くなればそれに対応してサスペンションのスプリングを硬くする必要があるので普通なら乗り心地は悪化するものだが、車重増よりも重心が下がったことが乗り心地の改善につながっているのだろう。
同様のフィーリングはハンドリングをチェックするスラロームや車線変更、定常円旋回のステージでも体感できた。ICEはステアリングを切ってノーズがインを向き、ロールが収まってからの動きに若干の遊びというか不安定な部分があるのだが、HEVではそれが解消されロールしきったところで動きが安定する。さらにHEVには路面ごとのドライブモードが選べるようになっており、その差も大きい。
エクスパンダークロスのHEVに用意されるドライブモードは全部で5種。ノーマル、ターマック、ウエット、マッド、グラベルである。制御される内容はトラクションコントロール、AYC、アクセルレスポンス、ステアリングアシスト量、シフトポジション(DまたはB)で、5種でこれが路面に合わせた組み合わせで用意される。
日本の場合だとこれにスノーと自分で組み合わせを設定できるインディビデュアルが組み合わされて7モードとなることがあるが、ASEANでは当然スノーは不要。インディビデュアルもまあなくても問題ない。普段走りならノーマルモードで何ら問題ないのは当たり前。ターマックモードで走るとアクセルレスポンスがよくなるのでスラロームがクイックになる。マッドやグラベルではトラクションコントロールの効きを弱めるので少し滑らせながらの走行などが可能となるだろう。
◆注目度が高まる三菱のハイブリッド
最後に高速周回路を使っての試乗を行った。コース上に1台という好条件だったので、停止からのフル加速といった試みもできた。発進加速、中間加速ともにHEVのほうが力強く快適だ。とくに中間加速のよさは気持のいいものである。7名定員モデルということでフル乗車での加速も必要となるだろうから、このトルクフルなパワーユニット特性は重要。日本ではあまりフル乗車ということはないが、なにせピックアップトラックの荷台に多人数の人を乗せて走るような習慣のあるお国柄だけに、重量増への対応は重要要件だろう。
高速レーンチェンジの安定性も高い。ASEAN諸国は高速道路が発達しているところも多いので安定性の高さは重要。シャシーの基本性能が高いのはもちろんだが、FFであってもAYCを採用し、安定性と安全性を高めていることに関心させられる。
タイ国内でもEV熱が高まって来ているが、まだまだすんなりとEVに移行できないユーザーも多い。そうしたなか、PHEVやHEVの注目度は高い。EV技術をもった三菱のPHEVやHEVは、タイをはじめとしたASEAN諸国での注目度が高く、このエクスパンダーHEV&エクスパンダークロスHEVの登場により、市場の活性化がより進みそうな予感を感じる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:-(国内未販売)
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
三菱の試乗記事
-
-
【三菱 トライトン 新型試乗】デカくても快適! ピックアップ人気を再構築できるか?…中村孝仁
2024.07.01 クルマ情報
-
-
-
非現実の世界に誘う三菱・トライトンに必要なもの
2024.05.11 クルマ情報
-
-
-
三菱・トライトンは憧れなのか現実なのか
2024.05.04 クルマ情報
-
-
-
【三菱 エクスパンダーHEV 海外試乗】素性のよさが光る走り!新ハイブリッドの恩恵は…諸星陽一
2024.04.11 クルマ情報
-
-
-
【試乗記】三菱トライトンGSR(4WD/6AT)
2024.04.05 クルマ情報
-
-
-
【三菱 トライトン 新型試乗】乗り心地はSUV!新設計のラダーフレームあってこその全方位進化…諸星陽一
2024.03.21 クルマ情報
-
三菱に関する情報
-
-
ついに念願のモデルを手に入れた! オリジナル度が高い初代デリカスターワゴン
2024.12.16 愛車広場
-
-
-
三菱『アウトランダー』改良新型、日本にはないガソリン車の内装を先行公開
2024.12.14 ニュース
-
-
-
日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025決定…安東弘樹連載コラム
2024.12.12 コラム・エッセイ
-
-
-
ミラージュから始まったカーライフは再びミラージュへと回帰し、充実した時を刻む
2024.12.09 愛車広場
-
-
-
三菱のラリー活動での強さを象徴する“エボリューション”・・・グレード名で語る名車たち
2024.12.02 コラム・エッセイ
-
-
-
RJCカーオブザイヤー、スズキ『スイフト』が4代連続受賞、輸入車はMINI『クーパー』に
2024.11.14 ニュース
-
-
-
日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025 10ベストカー決定…安東弘樹連載コラム
2024.11.14 コラム・エッセイ
-
-
-
三菱『デリカD:5』、ブラック際立つ「BLACK Edition」新設定…473万3300円から
2024.11.08 ニュース
-
-
-
三菱『トライトン』新型、ベトナムのデザイン賞で金賞に…『エクスフォース』に続く受賞
2024.11.04 ニュース
-
最新ニュース
-
-
ついに1000万円超えた、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEV…510万円からの入門車も
2024.12.21
-
-
-
初心者必見! エアクリーナーフィルター交換で失敗しないためのポイント~カスタムHOW TO~
2024.12.21
-
-
-
トヨタ『MIRAI』が動力源の水素キッチンカー、汐留クリスマスマーケットに出店へ…12月21-22日
2024.12.21
-
-
-
日産『キックス』旧型を「キックス プレイ」として併売へ
2024.12.21
-
-
-
マルチスズキ、『ワゴンR』発売25周年を祝う…3年連続インドベストセラー車に
2024.12.21
-
-
-
横浜ゴムはタイヤ/ホイールの2ブース出展、織戸茉彩選手の『MAAYA GR86』展示も…東京オートサロン2025
2024.12.21
-
-
-
マツダが8車種と最多、米IIHS最高の安全性評価「トップセーフティピック+」獲得
2024.12.21
-
最新ニュース
-
-
ついに1000万円超えた、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』に初のPHEV…510万円からの入門車も
2024.12.21
-
-
-
初心者必見! エアクリーナーフィルター交換で失敗しないためのポイント~カスタムHOW TO~
2024.12.21
-
-
-
トヨタ『MIRAI』が動力源の水素キッチンカー、汐留クリスマスマーケットに出店へ…12月21-22日
2024.12.21
-
-
-
日産『キックス』旧型を「キックス プレイ」として併売へ
2024.12.21
-
-
-
マルチスズキ、『ワゴンR』発売25周年を祝う…3年連続インドベストセラー車に
2024.12.21
-
-
-
横浜ゴムはタイヤ/ホイールの2ブース出展、織戸茉彩選手の『MAAYA GR86』展示も…東京オートサロン2025
2024.12.21
-