【ホンダ WR-V 新型試乗】かけ蕎麦か素うどんか?「素」の基本性能は見事…中村孝仁

  • ホンダ WR-V
インドから輸入されるホンダWR-V』に試乗した。その第1印象は「かけ蕎麦?それとも素うどん?」というものだった。イタリアならさしずめ「スパゲッティ・アリオ・エ・オリオ」である。

しかし、かけ蕎麦にしても素うどんにしてもトッピングを載せて楽しむケースが多い。スパゲッティ・アリオ・エ・オリオに関して言えば、これが美味いお店は他の料理も美味しいとよく言われるものである。つまりベーシックとは基本。これが良いかどうかで評価が決まるというわけで、WR-Vに関して言えば、素の部分は見事にまとめていると言って良いと思う。

◆実はヴェゼルとほとんど同じサイズ
実は『ヴェゼル』に続いてこのクルマをお借りした。価格的に安い=車両が小さいと、古いヒエラルキーの概念でクルマを見ていたものだから、てっきりヴェゼルよりもコンパクトなモデルだと思い込んでいた(事前の勉強を全くしていない)。ところが全長4330×全幅1790×全高1590mm(e:HEV Z)というヴェゼルのサイズに対し、WR-Vは同4325×1790×1650mm。まあ、ほとんど同じなのだ。

クルマをお借りして乗り出した直後の印象としては、それまで乗っていたヴェゼルよりもうるさいかな?というもの。当たり前である。ヴェゼルはe:HEV Z。つまりエンジンが止まっている頻度の高い電気で走る時間の長いクルマである。一方のWR-Vの場合は1.5リットルエンジンをしっかり回して走るいわゆるICEだけで動くクルマ。振動や騒音がe:HEVより多くて当然だ。

個人的に今回評価する部分としては、ギアのセレクターがヴェゼルにしてもWR-VにしてもPからDまでを一直線上に配置していること。わけのわからない押しボタンのPやRが存在しないこと。まあ、古いと言えば確かに古いやり方だが、昔から慣れ親しんだ方法だから、間違えることがない。最新のクルマはそれが押しボタンだったり、前後に動かすスイッチ系の操作レバーだったりして、慣れるまでに時間がかかる。

先日も某英国製のモデルに乗ったが、シフトレバーの上にPの押しボタンがあって、パーキングはそれを押せばよいということは頭で解っていても、操作は結局シフトレバーは一番前側に移動させればそれでパーキングに入ると慣れがそうさせて、クルマが突然バックして冷や汗をかいた。本当にこうした部分はユニバーサルデザインにして欲しいものである。個人で乗り慣れていればよいが、カーシェアやレンターカーの頻度が高くなると、間違えるケースが出て来ると思う。

◆素の基本性能に不満なし
素の基本性能という部分の話をすると、まず「走る、曲がる、止まる」という自動車の基本3要素については前述した通りきちっと作り込んでいるから不満はまずない。粗を探せば出て来るのかもしれないけれど、それはあくまでも粗であって、ことさらにそこを誇張する必要はまるでないレベルのまとまり感だと思う。

何よりクルマの見切りがとても楽。きっちりとボンネットの両端がドライバーズシートからしっかり確認でき、そこからは絶壁のような屹立したグリルが付いているから、実に先端が読みやすい。同様にリアもほとんどストンとウィンドー下からまっすぐに車両後端が直立しているので、こちらもつかみやすい。つまり車両感覚をつかみやすいから運転がしやすい、ということになる。

冒頭、かけ蕎麦と素うどんに関するトッピングの話をした。巣が良ければあとは自分好みにトッピングを載せて完成させるわけだが、まあ例えばホンダ・コネクトを含むディスプレイとナビは必要最低限として、上乗せするものがあまりない(試乗したモデルはZ+という最上級グレード)のだけれど、多少の不満がなくはない。

例えばACCは付いているけれど、パーキングブレーキがEPBじゃないから完全停止までは作用しない。素というのには必要ないのかもしれないけれど、停車中にブレーキを踏み続ける必要のないホールドモードなどが省かれている等々、楽をすることを覚えてしまったドライバーにはあれやこれや付けておいて欲しかったアイテムが無いという、これもないものねだりの不都合もある。それでもクラス最大級のラゲッジスペースを持っていたり、快適で広々した室内空間を持っていたり、やはり素の良さはい確実に持ち合わせているクルマである。

因みにホンダコネクトとナビなどのオプションを含めた試乗車のお値段は282万8100円。てんこ盛りの装備を含んだe:HEVのヴェゼルより100万円近く安い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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