【試乗記】スバル・レヴォーグ1.6 STI Sport EyeSight(4WD/CVT)
技術の基本にヒューマニズムがある
スバル・レヴォーグ1.6 STI Sport EyeSight(4WD/CVT)
従来よりも幅広い車速域での運転支援を実現したアイサイト・ツーリングアシスト。この最新機能は、走りを磨いた最上級グレード「STI Sport」にどのような“愉しさ”を与えたのだろうか。「レヴォーグ1.6 STI Sport EyeSight」に試乗した。
従来よりも幅広い車速域での運転支援を実現したアイサイト・ツーリングアシスト。この最新機能は、走りを磨いた最上級グレード「STI Sport」にどのような“愉しさ”を与えたのだろうか。「レヴォーグ1.6 STI Sport EyeSight」に試乗した。
いわく「疲れを減らし、愉しさを深める新機能」
ステレオカメラによる目を得たAIがぶつからないように運転を支援するスバル自慢の「アイサイト」が、新たに「ツーリングアシスト」機能を得て「アイサイト・ツーリングアシスト」へと進化していることはwebCGでも既報の通り。
以前のアイサイトver.3にもクルーズコントロール機能は付いていたのだけれど、60km/h以下では作動しなかった。それが60km/h以下でも活躍してくれるようになった。0~120km/hという幅広い車速域で、先行車と区画線をステレオカメラが認識し、車線内中央付近を維持しつつ、先行車がいない場合は設定速度で巡航することが可能になった。いわば「やっちゃえ××」のスバル版ということになる。
ただし、スバルは「疲れを減らし、愉しさを深める新機能」と表現し、自動運転うんぬんとはうたっていない。「高速道路における、長く単調な巡航と、ストレスのかかる渋滞。ツーリングアシストは、そんな疲れやイライラから、乗る人を解放することを目指した機能です」とカタログで書くのみである。そこにスバルのクルマづくりにおける思想・哲学があるわけである。
で、「アイサイト・ツーリングアシスト」のスバル車への搭載は順次始まっていて、本年8月に発売となったレヴォーグの場合、同時にサスペンションと電動パワーステアリングの改良も受けているほか、静粛性を向上させてもいる。
と再び「ただし」、六連星栄光のモータースポーツ部門の名を冠したSTI Sportに限り、ビルシュタインとの共同開発によるダンパーをフロントにおごったチューニングを施してからわずか1年ちょっとということもあって、足まわりに変更はない。
外観についても、フツウのレヴォーグはLEDライト類とフロントバンパーが新しくなり、顔つきがより精悍(せいかん)になっているということだけれど、STI SportはLEDヘッドランプを先行採用していたこともあって、う~む、フォグランプの位置が上から下に来た程度の違いしか見つけられない。
以前のアイサイトver.3にもクルーズコントロール機能は付いていたのだけれど、60km/h以下では作動しなかった。それが60km/h以下でも活躍してくれるようになった。0~120km/hという幅広い車速域で、先行車と区画線をステレオカメラが認識し、車線内中央付近を維持しつつ、先行車がいない場合は設定速度で巡航することが可能になった。いわば「やっちゃえ××」のスバル版ということになる。
ただし、スバルは「疲れを減らし、愉しさを深める新機能」と表現し、自動運転うんぬんとはうたっていない。「高速道路における、長く単調な巡航と、ストレスのかかる渋滞。ツーリングアシストは、そんな疲れやイライラから、乗る人を解放することを目指した機能です」とカタログで書くのみである。そこにスバルのクルマづくりにおける思想・哲学があるわけである。
で、「アイサイト・ツーリングアシスト」のスバル車への搭載は順次始まっていて、本年8月に発売となったレヴォーグの場合、同時にサスペンションと電動パワーステアリングの改良も受けているほか、静粛性を向上させてもいる。
と再び「ただし」、六連星栄光のモータースポーツ部門の名を冠したSTI Sportに限り、ビルシュタインとの共同開発によるダンパーをフロントにおごったチューニングを施してからわずか1年ちょっとということもあって、足まわりに変更はない。
外観についても、フツウのレヴォーグはLEDライト類とフロントバンパーが新しくなり、顔つきがより精悍(せいかん)になっているということだけれど、STI SportはLEDヘッドランプを先行採用していたこともあって、う~む、フォグランプの位置が上から下に来た程度の違いしか見つけられない。
判断が的確で迷いなし
170psの1.6と300psの2.0があるレヴォーグSTI Sportのうち、今回のテスト車は1.6で、ま、1.6であれ、2.0であれ、注目はおのずと「アイサイト・ツーリングアシスト」に絞られてくる。で、早速なるほど、便利だ、と思ったのは、首都高速の4号線、新宿のちょっと先の山手トンネルからの合流でいつも渋滞しているところでだった。当日、都内はいまにも雨が降り出しそうで、その雨を避けるべく、河口湖方面へと筆者は向かっていた。渋滞手前で、ステアリングホイールの3時の位置のスポークに4つ並んだアイサイトのメインスイッチをONにして、その上のSETを押すと先行車を捉えたことを確認するイラストが液晶画面に出る。そうすると、先行車が減速すれば、こちらも減速、停止すれば停止する。合流が完了して加速するとなればグワッと豪快に加速する。判断が的確で、迷いがない。アイサイトver.3までだったら、この渋滞でのステアリングアシストが効かないことになる。
なぜスバルがver.3で渋滞時の作動を可能にしなかったというと、ようするに合流等をカメラだけで認識するのに複雑なロジックが必要になるからだ。そりゃあ人間にだってむずかしい。あるいは、人間だからむずかしい。ぶつからずとも、いざこざの原因をつくったりもする。
最新アイサイトがそこのところ、どうだったかといえば、すいません、ごめんなさい、筆者はつい自分で手をくだしてしまい、本当のところどうなのか、しかと確認できていない。だって、ぶつかったらイヤだし……自動運転への道のテストというのは、公道上でなければデータを蓄積できないだろうけれど、公道上ではデータを集めきれないという悩みもあるのではあるまいか(筆者の推測です)。
いずれにせよ、もし自動的な合流というものが完璧にできるようになれば、強引な割り込みやそれに対抗するためのイジワルもなくなる。と、ちょっと関係ない話でごまかしたりして、どーも、すいません。
なぜスバルがver.3で渋滞時の作動を可能にしなかったというと、ようするに合流等をカメラだけで認識するのに複雑なロジックが必要になるからだ。そりゃあ人間にだってむずかしい。あるいは、人間だからむずかしい。ぶつからずとも、いざこざの原因をつくったりもする。
最新アイサイトがそこのところ、どうだったかといえば、すいません、ごめんなさい、筆者はつい自分で手をくだしてしまい、本当のところどうなのか、しかと確認できていない。だって、ぶつかったらイヤだし……自動運転への道のテストというのは、公道上でなければデータを蓄積できないだろうけれど、公道上ではデータを集めきれないという悩みもあるのではあるまいか(筆者の推測です)。
いずれにせよ、もし自動的な合流というものが完璧にできるようになれば、強引な割り込みやそれに対抗するためのイジワルもなくなる。と、ちょっと関係ない話でごまかしたりして、どーも、すいません。
ツーリングアシストがフラット4の魅力を引き出す!?
私が確認した範囲でアッパレだと思ったのは、加減速のコントロールに不安がないことで、状況は限られるにせよ、安心して見ていられたことである。見ていないと不安ではあるけど。あー、どっちなんだ! 過渡的な技術であるゆえ、このジレンマをどう考えるべきか。
合流の件についての弁明だけれど、だって本当にずーっと見ていたら危ない。事故を起こしたらバカを見るのは自分である。だからといって、こんなシステムなんぞはいらない、と切り捨てるのは21世紀の現代人らしからぬ態度というほかない。いずれ自動運転はやってくる。しかし、その自動運転は、おそらくAIが自動学習によって、人間が寝ている間に実現するわけではなくて、当事者であるエンジニアのみなさんの奮闘努力によってもたらされるのである(おそらく)。そこにかかわっていくのが自動車ジャーナリズムのはずだけれど、いかんせん、批評する側の思想・哲学というものが世の中の進歩の後れをとっている。陳謝。
ステアリングアシストについては、作動することもあるけれど、白線からはみ出る場合もある。中央道の八王子以降の山道での高速走行ともなると、まだまだである。あくまでアシストであって、自動運転に関する法律、国民的合意も整っていないのだから、いたしかたない。
筆者の不満は、アシストが入ることによるステアリングへのジャリジャリとした妙な抵抗フィールである。ごく単純にいって、キモチ悪い。なんだかリヴィングデッドなクルマに乗っているみたいで……。これは自動運転車に対する、時代に取り残されたおっさんの単なるつぶやきであるやもしれないけれど、せめてつぶやかせてください。
加速の制御については、「ツーリングアシスト」に任せているほうが、むしろ1.6リッター水平対向4気筒ターボの実力を味わうことができる。最高出力170psを4800-5600rpmで、最大トルク250Nmを1800-4800rpmで生み出す、リッター100ps以上のスポーティーなエンジンである。それも、スバル以外ではポルシェにしか世の中に存在しないフラット4の。なのに、自分で運転していると、そのスポーツフィールがリニアトロニックと呼ばれるCVTの変速機によって少々つや消しにされている。アクセルのレスポンスがCVTだとどうしても……、慣れの問題ともいえるけれど、本当にモッタイナイ。
合流の件についての弁明だけれど、だって本当にずーっと見ていたら危ない。事故を起こしたらバカを見るのは自分である。だからといって、こんなシステムなんぞはいらない、と切り捨てるのは21世紀の現代人らしからぬ態度というほかない。いずれ自動運転はやってくる。しかし、その自動運転は、おそらくAIが自動学習によって、人間が寝ている間に実現するわけではなくて、当事者であるエンジニアのみなさんの奮闘努力によってもたらされるのである(おそらく)。そこにかかわっていくのが自動車ジャーナリズムのはずだけれど、いかんせん、批評する側の思想・哲学というものが世の中の進歩の後れをとっている。陳謝。
ステアリングアシストについては、作動することもあるけれど、白線からはみ出る場合もある。中央道の八王子以降の山道での高速走行ともなると、まだまだである。あくまでアシストであって、自動運転に関する法律、国民的合意も整っていないのだから、いたしかたない。
筆者の不満は、アシストが入ることによるステアリングへのジャリジャリとした妙な抵抗フィールである。ごく単純にいって、キモチ悪い。なんだかリヴィングデッドなクルマに乗っているみたいで……。これは自動運転車に対する、時代に取り残されたおっさんの単なるつぶやきであるやもしれないけれど、せめてつぶやかせてください。
加速の制御については、「ツーリングアシスト」に任せているほうが、むしろ1.6リッター水平対向4気筒ターボの実力を味わうことができる。最高出力170psを4800-5600rpmで、最大トルク250Nmを1800-4800rpmで生み出す、リッター100ps以上のスポーティーなエンジンである。それも、スバル以外ではポルシェにしか世の中に存在しないフラット4の。なのに、自分で運転していると、そのスポーツフィールがリニアトロニックと呼ばれるCVTの変速機によって少々つや消しにされている。アクセルのレスポンスがCVTだとどうしても……、慣れの問題ともいえるけれど、本当にモッタイナイ。
わが道を行く
レヴォーグそれ自体、スバル独自のシンメトリー4WDシステムを持つ、ちょうどよいサイズのスポーツワゴンということで、まことに貴重である。世界を見回しても、こんなユニークなメカニズムを持つのはスバルだけだ。
STI Sportは独自の足まわりと内外装をもっている。乗り心地は最初硬いと思うけれど、すぐに慣れる。この足まわり、低速で悪い路面を走ると、それなりにいなそうとするため、けっこう揺すられる。速度を上げるにつれ、そのいなしかたがうまくなり、しなやかでフラットになる。
試乗車は車両本体価格359万6400円に、8万6400円のオプションの電動サンルーフが装着されていて、合計368万2800円。ツーリングアシスト前に比べると、およそ10万円ほど高くなっている。「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」のマニュアル、389万9000円にもうちょっとで手が届く領域だけれど、4WDでワゴンという万能性を考えると、レヴォーグを選ぶひとの気持ちもよ~く理解できる。STI Sportに限ってはマニュアルを、なんてことをチラリと思ったけれど、乗っているうちに、すっかり忘れた。CVTとしてはよくできているし、日常乗るのにオートマチックは楽チンである。
「アイサイト・ツーリングアシスト」は結局、この価格帯のクルマに安全装備ということで全車に標準としたところがすばらしい。技術の基本にヒューマニズムがある。この新装備のことを多くのユーザーが大いに認めていることは筆者が申し上げるまでもない。新型レヴォーグはそれまで国内ブランド別月間販売台数のトップ30に入っていなかったのに、8月に2119台で28位、9月には4350台で25位にまで上昇している。安全はみんなの願いである。
(文=今尾直樹/写真=池之平昌信/編集=竹下元太郎/取材協力=河口湖ステラシアター)
STI Sportは独自の足まわりと内外装をもっている。乗り心地は最初硬いと思うけれど、すぐに慣れる。この足まわり、低速で悪い路面を走ると、それなりにいなそうとするため、けっこう揺すられる。速度を上げるにつれ、そのいなしかたがうまくなり、しなやかでフラットになる。
試乗車は車両本体価格359万6400円に、8万6400円のオプションの電動サンルーフが装着されていて、合計368万2800円。ツーリングアシスト前に比べると、およそ10万円ほど高くなっている。「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」のマニュアル、389万9000円にもうちょっとで手が届く領域だけれど、4WDでワゴンという万能性を考えると、レヴォーグを選ぶひとの気持ちもよ~く理解できる。STI Sportに限ってはマニュアルを、なんてことをチラリと思ったけれど、乗っているうちに、すっかり忘れた。CVTとしてはよくできているし、日常乗るのにオートマチックは楽チンである。
「アイサイト・ツーリングアシスト」は結局、この価格帯のクルマに安全装備ということで全車に標準としたところがすばらしい。技術の基本にヒューマニズムがある。この新装備のことを多くのユーザーが大いに認めていることは筆者が申し上げるまでもない。新型レヴォーグはそれまで国内ブランド別月間販売台数のトップ30に入っていなかったのに、8月に2119台で28位、9月には4350台で25位にまで上昇している。安全はみんなの願いである。
(文=今尾直樹/写真=池之平昌信/編集=竹下元太郎/取材協力=河口湖ステラシアター)
テスト車のデータ
スバル・レヴォーグ1.6 STI Sport EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:170ps(125kW)/4800-5600rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1800-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:359万6400円/テスト車=368万2800円
オプション装備:サンルーフ(電動チルト&スライド式)(8万6400円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1987km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:359.4km
使用燃料:40.4リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:8.9km/リッター(満タン法)/10.2km/リッター(車載燃費計計測値)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1780×1490mm
ホイールベース:2650mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:170ps(125kW)/4800-5600rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1800-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:359万6400円/テスト車=368万2800円
オプション装備:サンルーフ(電動チルト&スライド式)(8万6400円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1987km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
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