【試乗記】スバルXVアドバンス(4WD/CVT)
- スバルXVアドバンス(4WD/CVT)
“電動化”のメリットは?
新しいプラットフォームを採用するクロスオーバー「XV」に追加設定された「アドバンス」には、スバル伝統の水平対向エンジンにモーターを組み合わせた「e-BOXER」が搭載されている。700kmに及ぶロングドライブに連れ出し、その実力を確かめた。
シリーズ中で唯一の電動化モデル
SUBARU GLOBAL PLATFORM(スバル・グローバル・プラットフォーム)の頭文字をとって“SGP”と略される、現行「インプレッサ」から始まったスバル自慢の新ボディー骨格。その採用に伴う総合性能のアップなどをうたい文句に、現行XVがデビューしたのは2017年春のことだ。
インプレッサの派生モデルとして扱われた初代モデルからカウントすれば「3代目」となる現行XVシリーズの、2018年10月に行われたリファインに合わせて追加設定されたのが、ここに紹介するアドバンスである。この新グレードは、XVシリーズ中で唯一の電動化モデル。搭載パワーパックは水平対向エンジンとモーターの組み合わせを連想させる、“e-BOXER”なるネーミングとなっている。
エンジン→トランスミッション(CVT)→後輪駆動用のプロペラシャフト……と、直列でレイアウトされるパワートレイン系の中で、トランスミッションケースの後端部分に駆動/回生用のモーターとトルクフロー断続用の多板クラッチをコンパクトにビルトインしたというのが、e-BOXERの基本システム構成だ。
この時点で、「あ、それって前のXVにもあったじゃない!」と気が付いた人もいるはず。組み合わされるエンジンが直噴化されたり、駆動用バッテリーがニッケルからリチウムイオンに変更されたりといった違いもあるものの、システムの基本は確かに従来型からのキャリーオーバー。
従来型ではずばり「ハイブリッド」とうたっていたユニットが、現行型ではe-BOXERへと改められたのだ。ちなみにこのシステムは、兄貴分である現行「フォレスター」にも設定されている。
インプレッサの派生モデルとして扱われた初代モデルからカウントすれば「3代目」となる現行XVシリーズの、2018年10月に行われたリファインに合わせて追加設定されたのが、ここに紹介するアドバンスである。この新グレードは、XVシリーズ中で唯一の電動化モデル。搭載パワーパックは水平対向エンジンとモーターの組み合わせを連想させる、“e-BOXER”なるネーミングとなっている。
エンジン→トランスミッション(CVT)→後輪駆動用のプロペラシャフト……と、直列でレイアウトされるパワートレイン系の中で、トランスミッションケースの後端部分に駆動/回生用のモーターとトルクフロー断続用の多板クラッチをコンパクトにビルトインしたというのが、e-BOXERの基本システム構成だ。
この時点で、「あ、それって前のXVにもあったじゃない!」と気が付いた人もいるはず。組み合わされるエンジンが直噴化されたり、駆動用バッテリーがニッケルからリチウムイオンに変更されたりといった違いもあるものの、システムの基本は確かに従来型からのキャリーオーバー。
従来型ではずばり「ハイブリッド」とうたっていたユニットが、現行型ではe-BOXERへと改められたのだ。ちなみにこのシステムは、兄貴分である現行「フォレスター」にも設定されている。
最もゴージャスな仕上がり
そんなスバルの最新電動化モデルでのテストドライブは、高速道路がそのメインフィールドとなった。
具体的には、「東京都心と愛知県豊田市間の往復を含んだ700kmほどの行程のうち、9割余りは高速道路上」というのがその内容である。付け加えれば、取材終了時点で総走行距離が5000kmを超えたテスト車には、ブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「VRX2」が装着されていた。すなわち、以下に記すのはそんなモデルでの印象であることをあらかじめお断りしておきたい。
1泊2日の取材初日夕刻に、都心の幹線道路沿いで初めて対面した際の天候は小雨。ボディー上の雨粒が行き交うクルマのライトで照らされるたびに、ボディー色と周囲の街の明かりが織りなす色彩のコントラストが、美しく目に飛び込んできた。
実は、テスト車が身にまとっていたのは「ラグーンブルー・パール」と名付けられた、このグレード専用の鮮やかなブルー。インテリアも、ネイビーとライトグレーでコーディネートされ、ブルーステッチが配された専用のフロント本革シートがオプション設定されるなど、なるほどXVシリーズの中にあっては、最もゴージャスな仕上がりである。
電動化が最大の特徴となるアドバンスは、パワーパックへの凝ったメカニズムの採用もあって、XVシリーズ中で最も高価なプライスタグを掲げる。そうした価格設定が納得されやすいようにと、このモデルにはシリーズ中のトップグレードという位置づけが与えられているわけだ。
具体的には、「東京都心と愛知県豊田市間の往復を含んだ700kmほどの行程のうち、9割余りは高速道路上」というのがその内容である。付け加えれば、取材終了時点で総走行距離が5000kmを超えたテスト車には、ブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「VRX2」が装着されていた。すなわち、以下に記すのはそんなモデルでの印象であることをあらかじめお断りしておきたい。
1泊2日の取材初日夕刻に、都心の幹線道路沿いで初めて対面した際の天候は小雨。ボディー上の雨粒が行き交うクルマのライトで照らされるたびに、ボディー色と周囲の街の明かりが織りなす色彩のコントラストが、美しく目に飛び込んできた。
実は、テスト車が身にまとっていたのは「ラグーンブルー・パール」と名付けられた、このグレード専用の鮮やかなブルー。インテリアも、ネイビーとライトグレーでコーディネートされ、ブルーステッチが配された専用のフロント本革シートがオプション設定されるなど、なるほどXVシリーズの中にあっては、最もゴージャスな仕上がりである。
電動化が最大の特徴となるアドバンスは、パワーパックへの凝ったメカニズムの採用もあって、XVシリーズ中で最も高価なプライスタグを掲げる。そうした価格設定が納得されやすいようにと、このモデルにはシリーズ中のトップグレードという位置づけが与えられているわけだ。
電動化による重量増加は110kg
ダッシュボード上のシステム起動用スイッチに刻まれた表記は、電動化モデルではあっても「ENGINE START STOP」なるもの。実際、システムオフの状態からこのスイッチをプッシュすると、まずは必ずエンジンが始動するという設定になっている。
これは、「起動時のシステムチェックに必要な動作」と説明されているが、実際にはエンジンが完全に暖機されたアイドリングストップ状態からのスタート時でも、「アクセルを踏み込めばほぼ即座にエンジンが掛かる」というのが実情。モーター最高出力は13.6ps(10kW)。これで1550kgという重量のクルマを“エンジンのパワー無し”で軽快にスタートさせるのは、そもそも無理な相談というものだ。
というよりも、そんな発進の動作を何度も体験しているうちに、徐々に気になってしまったのは、「これは普通のXVよりも動き始めが重々しいのでは?」という印象。実際、ガソリンモデルの「2.0i-Sアイサイト」に対する重量増加分は110kgと小さくない。さらに、燃費を意識してか最終減速比が3.900から3.700へとハイギアード化(燃費寄り)されたことも、そうした印象に微妙に拍車を掛けている要因なのだろう。
絶えず加速と減速が連続する街乗りのシーンでは、メーターやディスプレイの表示から頻繁なエンジン停止が確認できるし、加速時には「エンジン回転数に対して、期待以上の加速感が味わえる」といった、いわゆる“モーターブースト”の威力が認められるシーンもたびたびあった。
それでも、全般に“EVテイスト”がかなり薄味というのは事実で、何の予備知識もナシに走り始めてしまうと、「モーターが装備されていることすら気付かない」という人の方が多いかもしれない。
これは、「起動時のシステムチェックに必要な動作」と説明されているが、実際にはエンジンが完全に暖機されたアイドリングストップ状態からのスタート時でも、「アクセルを踏み込めばほぼ即座にエンジンが掛かる」というのが実情。モーター最高出力は13.6ps(10kW)。これで1550kgという重量のクルマを“エンジンのパワー無し”で軽快にスタートさせるのは、そもそも無理な相談というものだ。
というよりも、そんな発進の動作を何度も体験しているうちに、徐々に気になってしまったのは、「これは普通のXVよりも動き始めが重々しいのでは?」という印象。実際、ガソリンモデルの「2.0i-Sアイサイト」に対する重量増加分は110kgと小さくない。さらに、燃費を意識してか最終減速比が3.900から3.700へとハイギアード化(燃費寄り)されたことも、そうした印象に微妙に拍車を掛けている要因なのだろう。
絶えず加速と減速が連続する街乗りのシーンでは、メーターやディスプレイの表示から頻繁なエンジン停止が確認できるし、加速時には「エンジン回転数に対して、期待以上の加速感が味わえる」といった、いわゆる“モーターブースト”の威力が認められるシーンもたびたびあった。
それでも、全般に“EVテイスト”がかなり薄味というのは事実で、何の予備知識もナシに走り始めてしまうと、「モーターが装備されていることすら気付かない」という人の方が多いかもしれない。
フットワークは上質
今回のテストドライブで大半の距離を占めることとなった高速道路でのクルージング場面では、“EV感覚”はさらに「ほとんど皆無と表現してもいいくらい」というのが現実だった。
こうしたシーンでもディスプレイ表示に気を配っていれば、それなりの頻度で「時々回生、時々エンジン停止」……等と、ハイブリッドモデル特有の動作が行われていることは確認ができる。けれども、空気抵抗を筆頭に街乗りに比べると走行抵抗が格段に大きくなるこうした場面では、加速の段階で「10kWの上乗せ」を実感することはもはや困難。事実上、常時エンジンが稼働するので、静粛性面での優位性を感じることもできない。
フットワークのテイストは上質そのもので、さすがは“SGP”採用車と納得。スタッドレスタイヤを履くものの、操縦安定性や静粛性(ロードノイズ/パターンノイズ)にマイナス面が皆無だったのは、タイヤそのものの出来の良さも当然関係がありそうだ。
クルーズコントロールの設定可能上限速度が、表示上の114km/h止まりなのは、すでに制限速度の上限が110km/hで、この先120km/h区間の設定も時間の問題という今になっては腑(ふ)に落ちない点。前車追従モード中、追従車両を検知できなくなるとワーニング音が鳴り、再度検知しても同様にワーニング音が鳴るのは気ぜわしい。ユーザー設定でオン/オフできる機能を設けてほしいと思う。
ところで、一定速走行が続き回生の機会が少ないという高速道路特有の条件が続いたとはいえ、平均燃費の表示がなかなか13km/リッターのラインを越えられなかったのは、何としても物足りなかった。「もしかすると、これならば“非電動”仕様の方が、燃費に優れるのでは?」と、そんな思いを何度も抱かされたほどだ。
結局のところこのモデルの場合、駆動力や回生能力を決定づけるモーター出力がわずか10kWにすぎないのが、“電動化”のメリットに大きな足かせとなっている最大の要因ではないだろうか。
自らが掲げたハイブリッドという金看板を降ろし、e-BOXERなる言葉と共に新たな訴求の切り口を模索しなければならなくなったのも、自身がまだ「この程度では“ハイブリッド”を名乗るにはポテンシャルが不足している」ことを認めた結果だと思う。実際に乗りエンジニアとハナシをした上での、それが今の筆者の率直な気持ち。自身で選ぶならば、迷うことナシに“普通のXV”である。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
こうしたシーンでもディスプレイ表示に気を配っていれば、それなりの頻度で「時々回生、時々エンジン停止」……等と、ハイブリッドモデル特有の動作が行われていることは確認ができる。けれども、空気抵抗を筆頭に街乗りに比べると走行抵抗が格段に大きくなるこうした場面では、加速の段階で「10kWの上乗せ」を実感することはもはや困難。事実上、常時エンジンが稼働するので、静粛性面での優位性を感じることもできない。
フットワークのテイストは上質そのもので、さすがは“SGP”採用車と納得。スタッドレスタイヤを履くものの、操縦安定性や静粛性(ロードノイズ/パターンノイズ)にマイナス面が皆無だったのは、タイヤそのものの出来の良さも当然関係がありそうだ。
クルーズコントロールの設定可能上限速度が、表示上の114km/h止まりなのは、すでに制限速度の上限が110km/hで、この先120km/h区間の設定も時間の問題という今になっては腑(ふ)に落ちない点。前車追従モード中、追従車両を検知できなくなるとワーニング音が鳴り、再度検知しても同様にワーニング音が鳴るのは気ぜわしい。ユーザー設定でオン/オフできる機能を設けてほしいと思う。
ところで、一定速走行が続き回生の機会が少ないという高速道路特有の条件が続いたとはいえ、平均燃費の表示がなかなか13km/リッターのラインを越えられなかったのは、何としても物足りなかった。「もしかすると、これならば“非電動”仕様の方が、燃費に優れるのでは?」と、そんな思いを何度も抱かされたほどだ。
結局のところこのモデルの場合、駆動力や回生能力を決定づけるモーター出力がわずか10kWにすぎないのが、“電動化”のメリットに大きな足かせとなっている最大の要因ではないだろうか。
自らが掲げたハイブリッドという金看板を降ろし、e-BOXERなる言葉と共に新たな訴求の切り口を模索しなければならなくなったのも、自身がまだ「この程度では“ハイブリッド”を名乗るにはポテンシャルが不足している」ことを認めた結果だと思う。実際に乗りエンジニアとハナシをした上での、それが今の筆者の率直な気持ち。自身で選ぶならば、迷うことナシに“普通のXV”である。
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