【試乗記】プジョー508GTライン(FF/8AT)/508GT BlueHDi(FF/8AT)
- プジョー508GTライン(FF/8AT)/508GT BlueHDi(FF/8AT)
フランス車は天才だ
セダンからハッチバックへと、車型を変えつつフルモデルチェンジした「プジョー508」。「サルーンの概念のすべてを変える」という2代目の仕上がりを、ガソリン車とディーゼル車に試乗して確かめた。
意欲を感じる一台
久々のプジョーサルーンが、新型508である。もともとフランス車にセダンのイメージは薄い。現行のシトロエンやDSやルノーにも、3BOX型の「セ・ダ・ン」と言えるようなモデルはない。フランス勢で唯一の品ぞろえはプジョー508なのだが、2010年登場の初代モデルはいささか影が薄かった。日本での販売台数はシリーズ全体で3000台。しかもそのうち65%はワゴンだったという。
しかし、今度の2代目はセダンルネッサンスの意欲を感じさせる新型だ。うたい文句は“プレミアム・ラジカルセダン”。4750mm×1860mmのタテヨコに対して、1420mmと低めの全高のおかげで4ドアクーペふうに見えるが、実はテールゲートのある5ドアに変わった。デザインテイストも一新された。
このクルマのオリジナルデザインは、2014年の北京ショーで公開されたコンセプトセダンの「EXALT(イグザルト)」。すでにヨーロッパではワゴンの「508SW」もデビューしているが、新型シリーズはメーカーとしてもまず“セダン押し”に思える。
日本仕様のエンジンは、1.6リッター4気筒ガソリンと、2リッター4気筒クリーンディーゼル。試乗会ではガソリンの「GTライン」(459万円)とディーゼルの「GT BlueHDi」(492万円)を味見することができた。
しかし、今度の2代目はセダンルネッサンスの意欲を感じさせる新型だ。うたい文句は“プレミアム・ラジカルセダン”。4750mm×1860mmのタテヨコに対して、1420mmと低めの全高のおかげで4ドアクーペふうに見えるが、実はテールゲートのある5ドアに変わった。デザインテイストも一新された。
このクルマのオリジナルデザインは、2014年の北京ショーで公開されたコンセプトセダンの「EXALT(イグザルト)」。すでにヨーロッパではワゴンの「508SW」もデビューしているが、新型シリーズはメーカーとしてもまず“セダン押し”に思える。
日本仕様のエンジンは、1.6リッター4気筒ガソリンと、2リッター4気筒クリーンディーゼル。試乗会ではガソリンの「GTライン」(459万円)とディーゼルの「GT BlueHDi」(492万円)を味見することができた。
動き出しからファン・トゥ・ドライブ
牙のようなLEDポジションランプを配したフロントマスクもなかなかアグレッシブだが、新型508は乗り込んでも鮮烈だ。
小径ハンドルの上方にメーターを置くのは“ i-Cockpit(iコックピット)”という現行プジョーの特徴的なレイアウトだが、508は室内幅がたっぷりしているため、i-Cockpitの意図するところがよくわかる。8インチのセンタースクリーン下に並ぶトグルスイッチや、幅の広いセンターパネルから突き出すATセレクターなど、コックピットにあるものが、いちいちカッコイイ。「デザイナー、がんばりました」という感じの室内である。
最初に乗ったのは、ガソリンのGTライン。路上へ出ると、走りも鮮烈だった。まず感心したのは、アシの軽さだ。新型508は電子制御ダンパーを備えて、アクティブサスペンションをうたう。その足まわりは、なによりバネ下の軽さが印象的で、乗り心地も軽やかだ。ワイドトレッド感はあるのに、身のこなしは「208」のように軽い。当然、動き出した途端、ファン・トゥ・ドライブである。
アイシン・エィ・ダブリュ製8段ATと組み合わされる1.6リッター4気筒ターボは、プジョー/シトロエンとBMWが共同開発した、いわゆる“プリンスエンジン”。新型508にはリファインされた最新バージョンが載る。
アクセルを戻しても、シフトアップをちょっと待つような味つけは、ひと昔前のフランス製AT車を思い出させたが、静かで、回転マス感の小さいエンジンそのものは、とても気持ちいい。シャシーのテイストにマッチしたパワートレインである。ボンネット、フロントフェンダーをアルミ化し、大きなテールゲートを軽量複合素材でつくったボディーは、車重1540kgに収まる。180psのパワーも不満ない。
今回は正味30分あまりの試乗で、高速道路も走れなかったが、チョイ乗りの結論をひとことでいうと、「サプライズ」である。これまでのDセグメントセダンのどれにも似ていない新しさを感じた。
小径ハンドルの上方にメーターを置くのは“ i-Cockpit(iコックピット)”という現行プジョーの特徴的なレイアウトだが、508は室内幅がたっぷりしているため、i-Cockpitの意図するところがよくわかる。8インチのセンタースクリーン下に並ぶトグルスイッチや、幅の広いセンターパネルから突き出すATセレクターなど、コックピットにあるものが、いちいちカッコイイ。「デザイナー、がんばりました」という感じの室内である。
最初に乗ったのは、ガソリンのGTライン。路上へ出ると、走りも鮮烈だった。まず感心したのは、アシの軽さだ。新型508は電子制御ダンパーを備えて、アクティブサスペンションをうたう。その足まわりは、なによりバネ下の軽さが印象的で、乗り心地も軽やかだ。ワイドトレッド感はあるのに、身のこなしは「208」のように軽い。当然、動き出した途端、ファン・トゥ・ドライブである。
アイシン・エィ・ダブリュ製8段ATと組み合わされる1.6リッター4気筒ターボは、プジョー/シトロエンとBMWが共同開発した、いわゆる“プリンスエンジン”。新型508にはリファインされた最新バージョンが載る。
アクセルを戻しても、シフトアップをちょっと待つような味つけは、ひと昔前のフランス製AT車を思い出させたが、静かで、回転マス感の小さいエンジンそのものは、とても気持ちいい。シャシーのテイストにマッチしたパワートレインである。ボンネット、フロントフェンダーをアルミ化し、大きなテールゲートを軽量複合素材でつくったボディーは、車重1540kgに収まる。180psのパワーも不満ない。
今回は正味30分あまりの試乗で、高速道路も走れなかったが、チョイ乗りの結論をひとことでいうと、「サプライズ」である。これまでのDセグメントセダンのどれにも似ていない新しさを感じた。
楽しさの秘密はコックピット
続いて乗ったGT BlueHDiのエンジンは、「308」系にも使われている2リッター4気筒ターボディーゼル。177psのパワーや400Nmのトルクなど、アウトプットのスペックは、発生回転数なども含めて同一である。車重があるので、308のような力強さはないが、箱根・乙女峠への上りでも過不足ない。滑らかさと静粛性は欧州2リッタークリーンディーゼルのなかでもトップクラスである。
ただ、1.6リッターガソリンモデルから乗り換えると、あれほどの感動はなかった。車重は120kg重い。特にノーズが重くなっていることが、運転していても体感できる。それが残念だ。
とはいえ、こちらも全幅1.86mの中型2リッターディーゼルとは思えない軽いドライブフィールが身上だ。その印象に貢献しているのは、i-Cockpitである。ハンドルの直径は35cm。上下をつぶした垂直方向は32cmしかない。ハンドルを好みのアフターパーツに交換して楽しんでいた昔でも、ここまではなかったサイズである。この“純正”小径ハンドルのおかげで、新型508は操舵の動線がどんなクルマよりもコンパクトだ。電動パワーステアリングの操舵力も軽い。大きなボディーを小さな操作で動かせる。それがこのクルマのファン・トゥ・ドライブのみなもとである。
ただ、1.6リッターガソリンモデルから乗り換えると、あれほどの感動はなかった。車重は120kg重い。特にノーズが重くなっていることが、運転していても体感できる。それが残念だ。
とはいえ、こちらも全幅1.86mの中型2リッターディーゼルとは思えない軽いドライブフィールが身上だ。その印象に貢献しているのは、i-Cockpitである。ハンドルの直径は35cm。上下をつぶした垂直方向は32cmしかない。ハンドルを好みのアフターパーツに交換して楽しんでいた昔でも、ここまではなかったサイズである。この“純正”小径ハンドルのおかげで、新型508は操舵の動線がどんなクルマよりもコンパクトだ。電動パワーステアリングの操舵力も軽い。大きなボディーを小さな操作で動かせる。それがこのクルマのファン・トゥ・ドライブのみなもとである。
薦めたくなる快作セダン
センターピラーを過ぎたあたりからルーフが下降し始めるファストバックスタイルなので、リアシートの頭上空間は狭い。しかも後席座面はなぜかシアターシートのように高い。大きめの子どもに楽しく乗ってもらうようなコンセプトなのだろうか。
一方、5ドア化で積載性能は向上した。テールゲートが長いため、大きな荷物のアクセス性はステーションワゴンよりいいはずだ。2019年夏にはSWも国内導入されるが、個人的には絶対“セダン押し”である。車重は40kg軽いし、カッコもいいし。
2018年、約1万台を売ったプジョーの国内販売で、4分の1を占めたのは、4桁数字車名のSUV、「3008」である。さらに「5008」と「2008」を合わせると、SUVが全体の6割近くになる。プジョーもこのままSUVシフトしてしまうのかと思っていたら、こんな快作セダンを出してきた。フランス車はやっぱり天才だなあと思った。昔、「405」や「406」に乗っていたプジョーセダンファンだけでなく、セダン嫌いにもぜひ一度試してもらいたいクルマである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
一方、5ドア化で積載性能は向上した。テールゲートが長いため、大きな荷物のアクセス性はステーションワゴンよりいいはずだ。2019年夏にはSWも国内導入されるが、個人的には絶対“セダン押し”である。車重は40kg軽いし、カッコもいいし。
2018年、約1万台を売ったプジョーの国内販売で、4分の1を占めたのは、4桁数字車名のSUV、「3008」である。さらに「5008」と「2008」を合わせると、SUVが全体の6割近くになる。プジョーもこのままSUVシフトしてしまうのかと思っていたら、こんな快作セダンを出してきた。フランス車はやっぱり天才だなあと思った。昔、「405」や「406」に乗っていたプジョーセダンファンだけでなく、セダン嫌いにもぜひ一度試してもらいたいクルマである。
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