【試乗記】ポルシェ911スピードスター(RR/6MT)
- ポルシェ911スピードスター(RR/6MT)
最高のフィナーレ
スタイリッシュなオープンボディーに500psオーバーのハイチューンエンジンを組み合わせた限定車「ポルシェ911スピードスター」。このスペシャルモデルでどんな快楽が味わえるのか、イタリア・サルデーニャ島から報告する。
キレッキレなのに快適
991型911のファイナルモデルとして1948台限定で販売される911スピードスターは、2018年にポルシェの70周年を記念して発表された「911スピードスター コンセプト」の市販版で、その中身は「911 GT3」のスパイダーバージョンというべき一台である。
エンジンは991-IIのGT3に搭載された自然吸気(NA)の4リッターユニットと基本的に同じだが、新たに250barにアップした高圧フューエルインジェクター、個別スロットルバルブ付きインテークシステムを装着したことで、最高出力510ps/8400rpmへとチューンナップ。欧州排出ガス基準EU6DGもガソリンパティキュレートフィルターを2基備えることでクリアするなど、アップデートされたものとなっている。ギアボックスは6段MTのみで、「911R」や991-IIのGT3に搭載されたのと同じものだ。
一方シャシーもGT3に準ずるもので、リアアクスルステア、ダイナミックエンジンマウント、PTV(ポルシェトルクベクタリング)、PSM(ポルシェスタビリティーマネジメントシステム)、PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム)、PCCB(ポルシェセラミックコンポジットブレーキ)を標準で装備。そのほかフルCFRP製のボンネット、フロントフェンダー、リアフード、ステンレス製のエキゾーストシステムなどを採用し徹底的に軽量化した結果(6段MTを採用した理由のひとつはPDKより25kg軽いから)、911 GT3のわずか35kg増しとなる車重1465kgを実現している。
その効果は明らかで、鋭くキレのある走りはGT3そのもの。レッドゾーンの9000rpmまで軽々と吹け上がる4リッターNAエンジンはアイドリング状態から2速でも加速するほど扱いやすいうえ、オートブリッピング機能もセレクトできる6段MTとの相性も抜群。ロック機構だけが自動で、簡単に手動で開閉できるファブリック製のソフトトップを開け放てば、抜けのいい“NAサウンド”が楽しめるのも魅力のひとつである。
またダイナミックエンジンマウントが効いているのか、イタリア・サルデーニャの荒れたワインディングロードを飛ばしても、シャシーはガッチリした印象で、心配していたオープン化による剛性ダウンは特に感じられなかった。それどころか、リアステアの効果もあって、510psのRR車を操っているとは思えないほど常に姿勢は安定していて、驚くほどよく曲がる! ただし、これはカットスリックのような「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」を履いたドライ路面での話で、ウエット走行ならば無理は禁物。実際、低い速度域でも何度かテールがブレイクしてスタビリティーコントロールのお世話になってしまった。
いずれにしろ、公道においては911スピードスターが911 GT3に勝るとも劣らない実力を持ったピュアスポーツであることに異論の余地はないが、もうひとつ忘れてならないのは、タウンスピードでの意外なまでの乗り心地の良さと、快適性の高さだ。軽量化をうたいエアコンとインフォテインメントシステムがオプション扱いになっているのはスピードスターらしいところだが、ウインドスクリーンが50mm低いにも関わらず空力のコントロールが抜群で、コックピットには不快な風の巻き込みはなく快適。クローズドにしても十分な居住空間と視界が確保されているので窮屈な思いをすることは一切なかった。
そんな911スピードスターの唯一の欠点は、既に1948台分のオーナーリストが埋まっていること。この素晴らしい出来栄えの4リッターNAと6段MTの組み合わせを、992のシャシーでも味わえる日がくるといいのだが……。
(文=藤原よしお/写真=ポルシェ/編集=関 顕也)
エンジンは991-IIのGT3に搭載された自然吸気(NA)の4リッターユニットと基本的に同じだが、新たに250barにアップした高圧フューエルインジェクター、個別スロットルバルブ付きインテークシステムを装着したことで、最高出力510ps/8400rpmへとチューンナップ。欧州排出ガス基準EU6DGもガソリンパティキュレートフィルターを2基備えることでクリアするなど、アップデートされたものとなっている。ギアボックスは6段MTのみで、「911R」や991-IIのGT3に搭載されたのと同じものだ。
一方シャシーもGT3に準ずるもので、リアアクスルステア、ダイナミックエンジンマウント、PTV(ポルシェトルクベクタリング)、PSM(ポルシェスタビリティーマネジメントシステム)、PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム)、PCCB(ポルシェセラミックコンポジットブレーキ)を標準で装備。そのほかフルCFRP製のボンネット、フロントフェンダー、リアフード、ステンレス製のエキゾーストシステムなどを採用し徹底的に軽量化した結果(6段MTを採用した理由のひとつはPDKより25kg軽いから)、911 GT3のわずか35kg増しとなる車重1465kgを実現している。
その効果は明らかで、鋭くキレのある走りはGT3そのもの。レッドゾーンの9000rpmまで軽々と吹け上がる4リッターNAエンジンはアイドリング状態から2速でも加速するほど扱いやすいうえ、オートブリッピング機能もセレクトできる6段MTとの相性も抜群。ロック機構だけが自動で、簡単に手動で開閉できるファブリック製のソフトトップを開け放てば、抜けのいい“NAサウンド”が楽しめるのも魅力のひとつである。
またダイナミックエンジンマウントが効いているのか、イタリア・サルデーニャの荒れたワインディングロードを飛ばしても、シャシーはガッチリした印象で、心配していたオープン化による剛性ダウンは特に感じられなかった。それどころか、リアステアの効果もあって、510psのRR車を操っているとは思えないほど常に姿勢は安定していて、驚くほどよく曲がる! ただし、これはカットスリックのような「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」を履いたドライ路面での話で、ウエット走行ならば無理は禁物。実際、低い速度域でも何度かテールがブレイクしてスタビリティーコントロールのお世話になってしまった。
いずれにしろ、公道においては911スピードスターが911 GT3に勝るとも劣らない実力を持ったピュアスポーツであることに異論の余地はないが、もうひとつ忘れてならないのは、タウンスピードでの意外なまでの乗り心地の良さと、快適性の高さだ。軽量化をうたいエアコンとインフォテインメントシステムがオプション扱いになっているのはスピードスターらしいところだが、ウインドスクリーンが50mm低いにも関わらず空力のコントロールが抜群で、コックピットには不快な風の巻き込みはなく快適。クローズドにしても十分な居住空間と視界が確保されているので窮屈な思いをすることは一切なかった。
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