【試乗記】ダイハツ・タントカスタムRS(FF/CVT)
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- ダイハツ・タントカスタムRS(FF/CVT)
くつろぎの運転席
今や軽自動車の主流と呼べるほどの人気を誇るスーパーハイトワゴン。その元祖というべき「ダイハツ・タント」が4代目に生まれ変わった。新たなシャシーやパワートレインに加えて、強力な先進運転支援システムを手にした新型の出来栄えを確かめた。
“上”にはまだ余裕あり
軽自動車は、いつもボディーのタテヨコ上限いっぱいでつくられる。例外的に規格枠を使い切らなかったのは、振り返ると、ふたり乗りの「スズキ・ツイン」、事実上ひとり乗りの軽トラック「ダイハツ・ミゼット」などがあるが、売れなかった。
唯一、使い切ってこなかったボディー外寸枠は2.0mの全高だ。全長3.4m、全幅1.48mに対して、バランスってものがあるし、そもそも“座って乗る”クルマにむやみに高い天井は必要ないはずである。威風堂々のVIPカー「トヨタ・センチュリー」だって1.5mだ。ちなみに2mの全高リミットは小型車(5ナンバー)と同じである。厳しい規格枠の中でつくられる軽は「引き算のクルマだ」、なんてことを言われるが、全高に限っては軽独自の縛りがあるわけではないのである。
そんな法の盲点(?)をついて、高さ競争を続けてきたのが、トールボーイ系の軽ワゴンだ。1.7m以上はスーパーハイトワゴンと呼ばれ、いまや軽の一番人気がこのクラスである。
その1台であるタントが7月にモデルチェンジした。プラットフォーム(車台)を刷新し、パワートレインをブラッシュアップしたほか、軽初の駐車サポート機構など、最新の運転支援システムも採り入れている。今回試乗したのは、若向き仕立て“カスタム”シリーズの最上級モデル、RS(174万9600円)である。
唯一、使い切ってこなかったボディー外寸枠は2.0mの全高だ。全長3.4m、全幅1.48mに対して、バランスってものがあるし、そもそも“座って乗る”クルマにむやみに高い天井は必要ないはずである。威風堂々のVIPカー「トヨタ・センチュリー」だって1.5mだ。ちなみに2mの全高リミットは小型車(5ナンバー)と同じである。厳しい規格枠の中でつくられる軽は「引き算のクルマだ」、なんてことを言われるが、全高に限っては軽独自の縛りがあるわけではないのである。
そんな法の盲点(?)をついて、高さ競争を続けてきたのが、トールボーイ系の軽ワゴンだ。1.7m以上はスーパーハイトワゴンと呼ばれ、いまや軽の一番人気がこのクラスである。
その1台であるタントが7月にモデルチェンジした。プラットフォーム(車台)を刷新し、パワートレインをブラッシュアップしたほか、軽初の駐車サポート機構など、最新の運転支援システムも採り入れている。今回試乗したのは、若向き仕立て“カスタム”シリーズの最上級モデル、RS(174万9600円)である。
運転席で脚が組める
新型ボディーにも受け継がれたタントのお家芸は、ミラクルオープンドアである。左側の前後ドアにピラーを内蔵することで、センターピラーを取り払い、助手席側に長さ約1.5mの大開口を標準装備する。人の乗降はもちろんのこと、後席を畳んでかさモノを出し入れするときもメリットは大きい。
さらに今度の新趣向は「世界初」をうたう運転席のロングスライド機構である。脚の長さに合わせたシートスライドとは別に、停車中、ドライバーズシートを最大540mm後ろへ下げることができる。そうすると、センターピラーのない左側から乗り降りができたり、運転席に居ながらにして、後席の子どもの面倒がみられたり、といったカタログ的使い道には正直ピンとこなかったのだが、高速道路のサービスエリアに立ち寄り、初めてシートをロングスライドさせたとき、効用を実感した。
ハンドルのある運転席で脚が組める。背もたれを寝かせれば、脚を伸ばしてくつろげる。運転席でこんなにリラックスできるクルマがあるだろうか。ロングスライド機構は、Pレンジに入っているときしか作動しない。つまり、ミラクルオープンドア同様、スタティックな“部屋”として使っているときの工夫である。そういう付加価値を次々に考案する軽自動車が売れるのも当然だと思う。
カスタムRSの室内はブラック。「フォルクスワーゲンup!」のような安いガイシャより高い軽だから、内装に安っぽさはない。助手席ダッシュトレーやドア内張に使われる斜め格子柄のパッドなどは、ベントレーみたいである。
さらに今度の新趣向は「世界初」をうたう運転席のロングスライド機構である。脚の長さに合わせたシートスライドとは別に、停車中、ドライバーズシートを最大540mm後ろへ下げることができる。そうすると、センターピラーのない左側から乗り降りができたり、運転席に居ながらにして、後席の子どもの面倒がみられたり、といったカタログ的使い道には正直ピンとこなかったのだが、高速道路のサービスエリアに立ち寄り、初めてシートをロングスライドさせたとき、効用を実感した。
ハンドルのある運転席で脚が組める。背もたれを寝かせれば、脚を伸ばしてくつろげる。運転席でこんなにリラックスできるクルマがあるだろうか。ロングスライド機構は、Pレンジに入っているときしか作動しない。つまり、ミラクルオープンドア同様、スタティックな“部屋”として使っているときの工夫である。そういう付加価値を次々に考案する軽自動車が売れるのも当然だと思う。
カスタムRSの室内はブラック。「フォルクスワーゲンup!」のような安いガイシャより高い軽だから、内装に安っぽさはない。助手席ダッシュトレーやドア内張に使われる斜め格子柄のパッドなどは、ベントレーみたいである。
高さに挑み続けたからこその走行性能
4人部屋のアメニティーだけでなく、走る性能のほうもトップクラスである。
軽量設計を織り込んだ新型プラットフォームの採用で、車重(920kg)は先代カスタムRSより40kgカットされた。一方、新しいCVTと組み合わされる3気筒エンジンの最高出力は、自主規制値マックス64PSのままだが、最大トルクは92N・mから100N・mに向上している。だからといってピーキーなパワフルさを持つわけではないが、動力性能はひとくちに余裕たっぷりである。
シャシーも安定している。腰から下にズッシリした落ち着きがあり、ワインディングロードをハイペースで走ってもイビツに背が高い感じはしない。急発進や急加速時でも前輪が接地を失って路面をかきむしるようなこともない。頭上の空気を重く感じるばかりなので、クルマの天井がこんなに高い必要はないと思うが、高さのデメリットを克服する努力を重ねてきたからこそ、このフォルムが受け入れられているのだろう。
ひとつ気になったのは、軽なのに意外や小回りが利かないこと。Uターンのときそう感じて、カタログをチェックしたら、165/55R15を履くカスタムRSだけは他グレードより最小回転半径が30cm大きかった。
試乗の数日前、たまたま「三菱eKワゴン」で遠出をした。いやがうえにも比較してしまったその印象を記せば、ボディーの剛性感は日産設計のeKワゴンが一枚上手に感じた。eKワゴンの乗り心地はドイツ車のように硬い。それはそれでスゴイが、しかしボディー剛性も含めて、ちょっとユルいタントのほうが、長時間乗っていて快適だった。パワートレインはシャリシャリした軽っぽいエンジン音をたてるeKワゴンより、タントのほうが大人びていて、より高級に思えた。
軽量設計を織り込んだ新型プラットフォームの採用で、車重(920kg)は先代カスタムRSより40kgカットされた。一方、新しいCVTと組み合わされる3気筒エンジンの最高出力は、自主規制値マックス64PSのままだが、最大トルクは92N・mから100N・mに向上している。だからといってピーキーなパワフルさを持つわけではないが、動力性能はひとくちに余裕たっぷりである。
シャシーも安定している。腰から下にズッシリした落ち着きがあり、ワインディングロードをハイペースで走ってもイビツに背が高い感じはしない。急発進や急加速時でも前輪が接地を失って路面をかきむしるようなこともない。頭上の空気を重く感じるばかりなので、クルマの天井がこんなに高い必要はないと思うが、高さのデメリットを克服する努力を重ねてきたからこそ、このフォルムが受け入れられているのだろう。
ひとつ気になったのは、軽なのに意外や小回りが利かないこと。Uターンのときそう感じて、カタログをチェックしたら、165/55R15を履くカスタムRSだけは他グレードより最小回転半径が30cm大きかった。
試乗の数日前、たまたま「三菱eKワゴン」で遠出をした。いやがうえにも比較してしまったその印象を記せば、ボディーの剛性感は日産設計のeKワゴンが一枚上手に感じた。eKワゴンの乗り心地はドイツ車のように硬い。それはそれでスゴイが、しかしボディー剛性も含めて、ちょっとユルいタントのほうが、長時間乗っていて快適だった。パワートレインはシャリシャリした軽っぽいエンジン音をたてるeKワゴンより、タントのほうが大人びていて、より高級に思えた。
駐車支援システムは使えたものの……
軽初の駐車支援システムを使ってみた。縦列駐車もできるらしいが、手頃なロケーションがなかったので、ほかにクルマがいない駐車場の白線区画内に90度曲げながらお尻から入れるというパターンを試す。
止める区画をカメラが認識し、ドライバーが承認すると、ハンドル操作はクルマがやってくれる。ドライバーはリアカメラの映像に出る文字情報や音声ガイドに従って、アクセルとブレーキを操作する。ハンドルが勝手に動くというのは、桁違いに自動運転感が増す。
結論を言うと、できた。けれど、同じことをやろうとしても、なぜか駐車区画を認識してくれないことがある。最初の停車位置が悪いのか、路面や光線の加減だろうか、初めての使用だと、人間が悩んでいる時間のほうが長かった。一番条件のいい駐車でこれだから、次から次へと後続車がやってくるような公共駐車場で、気軽に使えるかどうかは疑問である。いつも決まった自宅の車庫入れなら大丈夫かもしれないが、自分で車庫入れができない人や、できなくなった人は、クルマを運転するべきではない。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
止める区画をカメラが認識し、ドライバーが承認すると、ハンドル操作はクルマがやってくれる。ドライバーはリアカメラの映像に出る文字情報や音声ガイドに従って、アクセルとブレーキを操作する。ハンドルが勝手に動くというのは、桁違いに自動運転感が増す。
結論を言うと、できた。けれど、同じことをやろうとしても、なぜか駐車区画を認識してくれないことがある。最初の停車位置が悪いのか、路面や光線の加減だろうか、初めての使用だと、人間が悩んでいる時間のほうが長かった。一番条件のいい駐車でこれだから、次から次へと後続車がやってくるような公共駐車場で、気軽に使えるかどうかは疑問である。いつも決まった自宅の車庫入れなら大丈夫かもしれないが、自分で車庫入れができない人や、できなくなった人は、クルマを運転するべきではない。
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