【試乗記】トヨタ・グランエースG(FR/6AT)/グランエース プレミアム(FR/6AT)
- トヨタ・グランエースG(FR/6AT)/グランエース プレミアム(FR/6AT)
ニッチな世界の車窓から
上級ミニバン「アルファード/ヴェルファイア」よりもさらに大きなワンボックス車としてデビューした「トヨタ・グランエース」。新たな市場の開拓を目指すピープルムーバーの乗り心地、そして使い勝手は?
デカくてもキングにあらず
グランエースが出ると、トヨタの最高級ミニバンは何になるのでしょうか?
「変わりません。これが出ても、トヨタのキング・オブ・ワンボックスはアルファード/ヴェルファイアです」
グランエースの石川拓生チーフエンジニアは即答した。
長さ5.3m、幅ほぼ2mという日本車ばなれしたサイズから、ついアル/ヴェルの上かと思いがちだが、違った。グランエースは“上級送迎車”として開発された2.8リッタークリーンディーゼルのFRワゴンである。さすがにこのサイズだと“ミニバン”とは自称しにくいとみえ、プレスリリースでは“フルサイズワゴン”と書かれている。
メインターゲットはリムジンとして使う法人。高級ファミリーカーとして買われているアル/ヴェルとは客層が異なる。乗用車登録ではあるが、あくまでこちらは送迎というプロユースが主体のクルマである。
グレードは3列シート6人乗りの「プレミアム」(650万円)と4列8人乗りの「G」(620万円)。前席うしろの空間に豪華キャプテンシートを4席据えたのがプレミアム。4列目をチップアップ式にするなどして、より多用途性を持たせたのがG。高いほうのプレミアムでも、アル/ヴェルの最上級リムジンモデル「エグゼクティブラウンジ」のトップグレードよりは100万円近く安い。価格ヒエラルキーでもアル/ヴェルは超していない。
横浜みなとみらいを基地に行われた試乗会は撮影を含めてひとコマ1時間という超特急だったが、ふたつのグレードにチョイ乗りすることができた。
「変わりません。これが出ても、トヨタのキング・オブ・ワンボックスはアルファード/ヴェルファイアです」
グランエースの石川拓生チーフエンジニアは即答した。
長さ5.3m、幅ほぼ2mという日本車ばなれしたサイズから、ついアル/ヴェルの上かと思いがちだが、違った。グランエースは“上級送迎車”として開発された2.8リッタークリーンディーゼルのFRワゴンである。さすがにこのサイズだと“ミニバン”とは自称しにくいとみえ、プレスリリースでは“フルサイズワゴン”と書かれている。
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グレードは3列シート6人乗りの「プレミアム」(650万円)と4列8人乗りの「G」(620万円)。前席うしろの空間に豪華キャプテンシートを4席据えたのがプレミアム。4列目をチップアップ式にするなどして、より多用途性を持たせたのがG。高いほうのプレミアムでも、アル/ヴェルの最上級リムジンモデル「エグゼクティブラウンジ」のトップグレードよりは100万円近く安い。価格ヒエラルキーでもアル/ヴェルは超していない。
横浜みなとみらいを基地に行われた試乗会は撮影を含めてひとコマ1時間という超特急だったが、ふたつのグレードにチョイ乗りすることができた。
運転してみて「オッ!」
まず運転した印象はどうか。無差別級サイズの巨体に身構えて走りだすと、肩透かしを食った。たしかに大きくて高いが、気になる死角はなく、意外や取り回しはラクである。ありがたいのは、このガタイにして小回りがきくこと。トヨタ製FF系ミニバンの前輪最大舵角は38~39度だが、グランエースは45度まできれる。ハンドルをフルにきって動くと、その場回転かと思うほど景色が真横に流れる。
短いボンネットの中に縦置きされる2754cc 4気筒ターボディーゼルは「ランドクルーザープラド」用と同じ。177PSのパワーと450N・mのトルクも変わらない。一方、車重は、重いほうのG(2770kg)だとプラドの7人乗りディーゼルより440~550kg重いが、力不足は感じなかった。もっともこの日は3人乗車がマックスだったが。これくらいの重量車だと、ブレーキを踏んだときに予想より制動力が不足して車重を実感することがままあるが、今回の荷重ではとくにそんな不満もなかった。
運転席でいちばん好印象だったのは乗り心地である。走りだしてすぐ「オッ!」と思ったほど滑らかで静かだ。アンダーフロアにストレートラダー構造を採用したモノコックボディーには高い剛性感がある。コイルスプリングで吊った車軸式リアサスペンションもしっとり落ち着いている。荒れた舗装路面でのフラットな乗り心地はアル/ヴェルをしのぐと思う。
メーカーが実験車を買ってベンチマークにしたのは、「メルセデス・ベンツVクラス」。では、Vクラスに負けないところはどこかと聞くと、「100km/h以上での走行性能を除いてぜんぶ」と石川CEは答えた。
短いボンネットの中に縦置きされる2754cc 4気筒ターボディーゼルは「ランドクルーザープラド」用と同じ。177PSのパワーと450N・mのトルクも変わらない。一方、車重は、重いほうのG(2770kg)だとプラドの7人乗りディーゼルより440~550kg重いが、力不足は感じなかった。もっともこの日は3人乗車がマックスだったが。これくらいの重量車だと、ブレーキを踏んだときに予想より制動力が不足して車重を実感することがままあるが、今回の荷重ではとくにそんな不満もなかった。
運転席でいちばん好印象だったのは乗り心地である。走りだしてすぐ「オッ!」と思ったほど滑らかで静かだ。アンダーフロアにストレートラダー構造を採用したモノコックボディーには高い剛性感がある。コイルスプリングで吊った車軸式リアサスペンションもしっとり落ち着いている。荒れた舗装路面でのフラットな乗り心地はアル/ヴェルをしのぐと思う。
メーカーが実験車を買ってベンチマークにしたのは、「メルセデス・ベンツVクラス」。では、Vクラスに負けないところはどこかと聞くと、「100km/h以上での走行性能を除いてぜんぶ」と石川CEは答えた。
自慢のイスはどう使う?
グランエースのハイライトは、プレミアムの前席うしろに2×2で並ぶ「エグゼクティブパワーシート」である。コンセプトは4人のVIPを平等にもてなすこと。アル/ヴェルのエグゼクティブラウンジでも大型高級シートは2脚だけだから、これがグランエースの存在意義の中核といえる。シートの骨格はアル/ヴェルのエグゼクティブパワーシートと同じだが、グランエースはより長距離でも疲れさせないためにレザーシートを少し硬めにしてあるという。
電動のオットマンやリクライニング、温熱機能などを備える1脚25kgのシートは、座ってみるとスピーチレス。言うことなしである。ただし、最大61cmスライドする2列目シートをいちばんうしろまで下げられてしまうと、3列目のレッグルームはさすがに余裕を失って、オットマンは使えなくなる。4人のVIPのひとりになる幸運に恵まれたら、「どうぞどうぞお先に」と謙譲の美徳を発揮して2列目をゲットするのが正しい。
一方、4列8人乗りのGは、2列目の2脚がエグゼクティブパワーシート、そのうしろがノーマルのキャプテンシートになる。4列目のチップアップシートもサイズはけっこう大きいので、キャビンを見渡すとさすがにイスでぎっしりという感じがする。4列目はいざというときの補助イスと考えて、ふだんはチップアップしたままという使われ方が多いのではないか。販売目標は年間600台だが、発売から40日間で950台を受注したという。そのうち7割は6人乗りのプレミアムだそうだ。
電動のオットマンやリクライニング、温熱機能などを備える1脚25kgのシートは、座ってみるとスピーチレス。言うことなしである。ただし、最大61cmスライドする2列目シートをいちばんうしろまで下げられてしまうと、3列目のレッグルームはさすがに余裕を失って、オットマンは使えなくなる。4人のVIPのひとりになる幸運に恵まれたら、「どうぞどうぞお先に」と謙譲の美徳を発揮して2列目をゲットするのが正しい。
一方、4列8人乗りのGは、2列目の2脚がエグゼクティブパワーシート、そのうしろがノーマルのキャプテンシートになる。4列目のチップアップシートもサイズはけっこう大きいので、キャビンを見渡すとさすがにイスでぎっしりという感じがする。4列目はいざというときの補助イスと考えて、ふだんはチップアップしたままという使われ方が多いのではないか。販売目標は年間600台だが、発売から40日間で950台を受注したという。そのうち7割は6人乗りのプレミアムだそうだ。
「色」と「高さ」は要チェック
ボディー外寸を比べると、グランエースはアル/ヴェルより35cm長く、12cm幅広く、4cm高い。しかし室内寸法の比較では唯一、室内高でグランエースが負けている。
FFプラットフォームを利したアル/ヴェルのほうがキャビンの天地は11cm高い。実際、グランエースの後席に座ると、キャビンの長さと幅に対して、天井が低めに感じられる。しかも試乗車の内装は2台とも黒だった。選ぶなら明るいベージュの内装をお薦めしたい。
ライフサイクルは、短くても12年を考えている。そのため、飽きのこない、ギラギラした派手さのないデザインを心がけたという。個人的には、見事に真四角でぬりかべみたいな後ろ姿がおもしろいと思った。
日本でのお披露目は2019年秋の東京モーターショーだが、そのときにキャンピングカーのメーカーから大きな反応をもらったそうだ。そんなニーズを考えると、商用車登録のバンモデルも検討していきたいという。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=関 顕也)
FFプラットフォームを利したアル/ヴェルのほうがキャビンの天地は11cm高い。実際、グランエースの後席に座ると、キャビンの長さと幅に対して、天井が低めに感じられる。しかも試乗車の内装は2台とも黒だった。選ぶなら明るいベージュの内装をお薦めしたい。
ライフサイクルは、短くても12年を考えている。そのため、飽きのこない、ギラギラした派手さのないデザインを心がけたという。個人的には、見事に真四角でぬりかべみたいな後ろ姿がおもしろいと思った。
日本でのお披露目は2019年秋の東京モーターショーだが、そのときにキャンピングカーのメーカーから大きな反応をもらったそうだ。そんなニーズを考えると、商用車登録のバンモデルも検討していきたいという。
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