【試乗記】トヨタ・ハリアー プロトタイプ
- トヨタ・ハリアー ハイブリッドZ プロトタイプ(4WD/CVT)/ ハイブリッドZ プロトタイプ(FF/CVT)/G“レザーパッケージ”プロトタイプ(FF/CVT)
進化する和製スペシャリティー
都市型プレミアムSUVの元祖であり、トヨタが誇る人気モデルの一台にも数えられる「ハリアー」。レクサスとたもとを分かった現行型の“味”を引き継ぎつつ、あらためて世界に挑もうとする新型の出来栄えは? クローズドコースでプロトタイプの走りを確かめた。
販売現場の声に救われた人気モデル
1997年に登場した「レクサスRX」は、乗用車のアーキテクチャーをベースに構築されるSUVにラグジュアリー性を付加した、今日のプレミアムSUVの先駆けとされるモデルだ。当時レクサスブランドの展開がなかった日本では、それがハリアーとして販売されたのはご存じの通り。このダブルスタンダード状態は日本市場でレクサスブランドが展開された後の2013年まで続き、一時は2代目RXがハリアーとして3代目RXと併売されるというこじれた事態も生じていたわけだ。
そして2013年、主権を完全にレクサスに移譲し、いよいよハリアーが大団円を迎えようかという際に、一部の国内販売網から上がったのがハリアー存続の熱烈な要望だったという。その声に応えるかたちで投入された3代目ハリアーが、販売最終年次の2019年でも月販平均約3000台というヒットになったわけだ。情報収集解析能力はハンパないだろうトヨタ本体の国内営業でも読み違えそうになったニーズを、地方の販売現場がしっかりつかんでいたというのも、なかなかイイ話ではないだろうか。
かくして4代目となる新型ハリアーは、国内専用に開発され……と思ったら、ちょっと事情が違っていた。課せられたタスクは、そもそも北米市場向けに開発・販売される「トヨタ・ヴェンザ」との統合だ。
そして2013年、主権を完全にレクサスに移譲し、いよいよハリアーが大団円を迎えようかという際に、一部の国内販売網から上がったのがハリアー存続の熱烈な要望だったという。その声に応えるかたちで投入された3代目ハリアーが、販売最終年次の2019年でも月販平均約3000台というヒットになったわけだ。情報収集解析能力はハンパないだろうトヨタ本体の国内営業でも読み違えそうになったニーズを、地方の販売現場がしっかりつかんでいたというのも、なかなかイイ話ではないだろうか。
かくして4代目となる新型ハリアーは、国内専用に開発され……と思ったら、ちょっと事情が違っていた。課せられたタスクは、そもそも北米市場向けに開発・販売される「トヨタ・ヴェンザ」との統合だ。
日本的な感性で世界市場に挑む
ヴェンザはSUVというよりはMPV的な色合いの強いモデルで、そのコンセプトはかつての「ホンダ・アヴァンシア」や「オペル・シグナム」にほど近い。無理をすれば7人乗りにもしつらえられそうな空間を、大人4人(諸元表の乗車定員は5名だが)の快適な移動のためにゆったりと使うというクルーザー的な立ち位置のそれは、しかし前述のモデルたちと同様、市場の理解がなかなか得られず、既に北米市場では販売を休止している。
そのヴェンザを“左ハンドル版のハリアー”として復活させるにあたり懸案となったのが、どちら側寄りでクルマのテイストを決めるかということだ。市場論理でいえば優位は販売台数が多く見込めるヴェンザの側となるだろう。が、今回はあえてハリアーの味付けをそのままヴェンザの側に用いることにしたという。これまで培ってきた日本的なスペシャリティーカーづくりの感覚が、ともすれば仕向け地でも通じるのでは……。その新たなトライは、思い切りドメスティックな「アルファード」がアジアで受け入れられたトヨタの自信だろうか。ちなみに、ハリアーは前型がマレーシアやシンガポールにも輸出され好評を博したことから、新型では他のアジア市場でも展開を想定しているという。
そのヴェンザを“左ハンドル版のハリアー”として復活させるにあたり懸案となったのが、どちら側寄りでクルマのテイストを決めるかということだ。市場論理でいえば優位は販売台数が多く見込めるヴェンザの側となるだろう。が、今回はあえてハリアーの味付けをそのままヴェンザの側に用いることにしたという。これまで培ってきた日本的なスペシャリティーカーづくりの感覚が、ともすれば仕向け地でも通じるのでは……。その新たなトライは、思い切りドメスティックな「アルファード」がアジアで受け入れられたトヨタの自信だろうか。ちなみに、ハリアーは前型がマレーシアやシンガポールにも輸出され好評を博したことから、新型では他のアジア市場でも展開を想定しているという。
「RAV4」と同じところと違うところ
新型ハリアーの車台は現行「RAV4」と同じ「GA-Kプラットフォーム」をベースとして、各部に専用のチューニングが加えられている。ホイールベースは同じ。トレッドは装着タイヤサイズの違いによって、若干幅広になるという。TNGA世代となったことによる骨格レベルからの動的質感改善は明らかで、その数値化のひとつを挙げれば、静的ねじり剛性は前型比で実に78%の向上をみた。
一方で、“ハリアーらしさ”という点で強く意識されたのは静粛性で、遮音・吸音・制振材の配置は吟味され、物量も豊かに投入されている。また、すっきりと上質な乗り心地を目指し、直進時の低摩擦性と旋回時の高摩擦性を機械的に両立した専用ダンパーを設定。これは「カローラ スポーツ」で用いられたアイデアを活用したものだという。加えてEPS(電動パワーステアリング)も直進時の据わりのよさや操作質感の向上を狙って、ラック同軸型ではなくラックパラレル型を採用している。
搭載されるパワートレインは2リッター4気筒ガソリンエンジンと2.5リッター4気筒ガソリンエンジン+ハイブリッドの2つ。いずれも現行RAV4と同じ、最新世代の「ダイナミックフォースユニット」となる。ともに4WDの設定もあるが、純ガソリン車のシステムは「RAV4アドベンチャー」などで採用されたダイナミックトルクベクタリング型ではなく、コンベンショナルなダイナミックトルクコントロール型を採用。ハイブリッドの側は後軸モーターを積極的に多用する新世代のE-Fourとなっている。
いずれも、今回の車両は未登録のプロトタイプということもあり、試乗環境も限られたものとなったが、逆に公道では試せない限界挙動などはきちんとチェックできた。
一方で、“ハリアーらしさ”という点で強く意識されたのは静粛性で、遮音・吸音・制振材の配置は吟味され、物量も豊かに投入されている。また、すっきりと上質な乗り心地を目指し、直進時の低摩擦性と旋回時の高摩擦性を機械的に両立した専用ダンパーを設定。これは「カローラ スポーツ」で用いられたアイデアを活用したものだという。加えてEPS(電動パワーステアリング)も直進時の据わりのよさや操作質感の向上を狙って、ラック同軸型ではなくラックパラレル型を採用している。
搭載されるパワートレインは2リッター4気筒ガソリンエンジンと2.5リッター4気筒ガソリンエンジン+ハイブリッドの2つ。いずれも現行RAV4と同じ、最新世代の「ダイナミックフォースユニット」となる。ともに4WDの設定もあるが、純ガソリン車のシステムは「RAV4アドベンチャー」などで採用されたダイナミックトルクベクタリング型ではなく、コンベンショナルなダイナミックトルクコントロール型を採用。ハイブリッドの側は後軸モーターを積極的に多用する新世代のE-Fourとなっている。
いずれも、今回の車両は未登録のプロトタイプということもあり、試乗環境も限られたものとなったが、逆に公道では試せない限界挙動などはきちんとチェックできた。
快適性にはかなり期待できる
走りだしから感じられるのは、力を入れたという静粛性の高さだ。頻繁にモーターで駆動するハイブリッドはもちろん、ガソリンユニットの側も発進のための専用ギアを持つCVTを採用することもあり、回転をぶざまに高めずとも効率的に駆動力を引き出すことができる。そういった双方の基本特性に加えて、前述の通り遮音が気遣われていることもあって、低中速域での静かさはクローズドコースという路面のよさを差し引いても際立っていた。
限られた環境の中、路面のパッチや舗装の境目、ゼブラゾーンなどを使ってみた限りの話にはなるが、新型ハリアーは乗り心地についても期待しておいてよさそうだ。タイヤは3つのグレードに応じて17~19インチが装着され、今回は18インチと19インチでの試乗となったが、フィードバックに大差はない。バネ下の大きさ、重さを持て余す感もなく、大入力があってもオツリは最小限にスッと収束させる。公道では不規則なくぼみやわだち、人工的な目地段差など、特性の異なる入力もゴマンとあるが、足まわりからはそれらに柔軟に対応できそうな余力が感じられた。
基本的にはRAV4と同じパワートレインながら、80kg前後と大人1人分の重量差があることも影響してか、動力性能のほうはハイブリッドでは余裕が感じられるも、ガソリンでは“きっちりカツカツ”という印象だ。スペシャリティーモデルへの期待値から、さらなるゆとりが欲しいというニーズがあってもおかしくはないだろう。とあらば、同じアーキテクチャーゆえ転用は難しくないだろう「RAV4 PHV」のシステムを搭載するプレミアムグレードの設定なども今後は考慮されるかもしれない。
限られた環境の中、路面のパッチや舗装の境目、ゼブラゾーンなどを使ってみた限りの話にはなるが、新型ハリアーは乗り心地についても期待しておいてよさそうだ。タイヤは3つのグレードに応じて17~19インチが装着され、今回は18インチと19インチでの試乗となったが、フィードバックに大差はない。バネ下の大きさ、重さを持て余す感もなく、大入力があってもオツリは最小限にスッと収束させる。公道では不規則なくぼみやわだち、人工的な目地段差など、特性の異なる入力もゴマンとあるが、足まわりからはそれらに柔軟に対応できそうな余力が感じられた。
基本的にはRAV4と同じパワートレインながら、80kg前後と大人1人分の重量差があることも影響してか、動力性能のほうはハイブリッドでは余裕が感じられるも、ガソリンでは“きっちりカツカツ”という印象だ。スペシャリティーモデルへの期待値から、さらなるゆとりが欲しいというニーズがあってもおかしくはないだろう。とあらば、同じアーキテクチャーゆえ転用は難しくないだろう「RAV4 PHV」のシステムを搭載するプレミアムグレードの設定なども今後は考慮されるかもしれない。
“日本のクルマづくり”を支える一台となるか
ハンドリングは至って理にかなったものにまとめられている。くだんのダンパーも貢献してか、ロール量やロールの推移は中立的で、変なクセは感じられない。車格や重心、装着タイヤ等を鑑みれば、かなり高いところにある限界付近まで、後軸はしっかり粘り抜き、そこから向こうも穏やかなアンダーステアが発生……と、セオリーに忠実なセットアップだ。
運動性能という点でいえば、車重の軽さが生きるガソリン+FFの組み合わせがベストかと思いきや、意外と最重量級のハイブリッド+4WDの組み合わせも悪くない。重さの大半が低位置にあるがゆえの落ち着いた挙動と、後輪を積極的に駆動して旋回にも活用するE-Fourのアクティブ感とのバランスが、スペシャリティーカーらしい動きの上質さとして受け止められる。
取材時点では新型ハリアーの価格帯は未定だったが、聞くところによれば「同級装備比でも前型に限りなく近いところに収まりそう」とのこと。そして生産は、輸出仕様も含めて現状はすべて高岡工場の予定となっている。豊田社長のコミットである国内300万台生産体制を支える上でも、相当強力な一台になるだろう。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
運動性能という点でいえば、車重の軽さが生きるガソリン+FFの組み合わせがベストかと思いきや、意外と最重量級のハイブリッド+4WDの組み合わせも悪くない。重さの大半が低位置にあるがゆえの落ち着いた挙動と、後輪を積極的に駆動して旋回にも活用するE-Fourのアクティブ感とのバランスが、スペシャリティーカーらしい動きの上質さとして受け止められる。
取材時点では新型ハリアーの価格帯は未定だったが、聞くところによれば「同級装備比でも前型に限りなく近いところに収まりそう」とのこと。そして生産は、輸出仕様も含めて現状はすべて高岡工場の予定となっている。豊田社長のコミットである国内300万台生産体制を支える上でも、相当強力な一台になるだろう。
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