【試乗記】プジョー208GTライン(FF/8AT)
- プジョー208GTライン(FF/8AT)
きっと期待を裏切らない
新型「プジョー208」のトップグレード「GTライン」をロングドライブに連れ出し、新開発プラットフォームや進化したパワートレインの仕上がりをチェック。2020年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた、その実力やいかに。
コンパクトで軽量
コンパクトカーを得意とするプジョーのラインナップ。その中にあって、兄貴分である「308」と共にブランドの主軸となる存在が、2012年に初代モデルが誕生した208シリーズだ。
初代208は2006年に登場した「207」の後を継ぐ存在だったが、ここに紹介する新型は、さらにそのフルモデルチェンジ版という位置づけ。かつてはモデルチェンジを行うたびに3桁数字の末尾が1つずつ繰り上げられていったプジョー車の名称だが、この先の“枯渇”を見越して(?)か、2010年代に命名ルールを変更。2019年春に開催されたジュネーブモーターショーで正式に披露された新型は、すなわち「2代目の208」ということになる。
この新型208においては、ピュアEVバージョン「e-208」も同時に発表されている。e-208は、「大半のユーザーは、高価なEVなど手に入れることはできない」というお説ごもっともなフレーズとともに、「燃料代や整備代、税金などまでを含めたランニングコストで考えれば、負担額はエンジン車と大差ない水準になる」というプロモーション展開や、389万9000円からという価格設定も話題である。
気になるボディーサイズは、全長×全幅=4095×1745mm。4mを下回った従来型に比べると全長がひと回り大きくなったのは確かだが、1.7m台半ばの全幅は同等で、今の世の中では明確に“コンパクト”と呼ぶに値するという印象は変わらず。1.1t台に収まった車両重量も、同様に文句なく“軽量”と表現できる水準にある。
ちなみに、従来型に存在した3ドアボディーは消滅し、新型は5ドアボディーのみの生産。本国にはディーゼルエンジン搭載モデルも設定されているものの、日本に導入されるエンジン車のパワーパックは、従来の6段から8段へと多段化されたステップATと組み合わされる、最高出力100PSを発生する1.2リッターのターボ付き3気筒ガソリンエンジンのみとされている。
初代208は2006年に登場した「207」の後を継ぐ存在だったが、ここに紹介する新型は、さらにそのフルモデルチェンジ版という位置づけ。かつてはモデルチェンジを行うたびに3桁数字の末尾が1つずつ繰り上げられていったプジョー車の名称だが、この先の“枯渇”を見越して(?)か、2010年代に命名ルールを変更。2019年春に開催されたジュネーブモーターショーで正式に披露された新型は、すなわち「2代目の208」ということになる。
この新型208においては、ピュアEVバージョン「e-208」も同時に発表されている。e-208は、「大半のユーザーは、高価なEVなど手に入れることはできない」というお説ごもっともなフレーズとともに、「燃料代や整備代、税金などまでを含めたランニングコストで考えれば、負担額はエンジン車と大差ない水準になる」というプロモーション展開や、389万9000円からという価格設定も話題である。
気になるボディーサイズは、全長×全幅=4095×1745mm。4mを下回った従来型に比べると全長がひと回り大きくなったのは確かだが、1.7m台半ばの全幅は同等で、今の世の中では明確に“コンパクト”と呼ぶに値するという印象は変わらず。1.1t台に収まった車両重量も、同様に文句なく“軽量”と表現できる水準にある。
ちなみに、従来型に存在した3ドアボディーは消滅し、新型は5ドアボディーのみの生産。本国にはディーゼルエンジン搭載モデルも設定されているものの、日本に導入されるエンジン車のパワーパックは、従来の6段から8段へと多段化されたステップATと組み合わされる、最高出力100PSを発生する1.2リッターのターボ付き3気筒ガソリンエンジンのみとされている。
ライバルとは異なる独自性
- いわゆるBセグメントに位置づけられる5ドアハッチバックの「208」。今回試乗した「GTライン」のボディーサイズは、全長×全幅×全高=4095×1745×1445mm、ホイールベース=2540mm。パノラミックガラスルーフ装着車の車重は1180kgと発表されている。
- 大型グリルや牙をモチーフとしたデイタイムランニングライト(DRL)など、最新のプジョー車に共通するデザイン要素で構築された「208」のフロントフェイス。「GTライン」では、3本の爪痕を表現するというDRL内蔵のフルLEDヘッドランプを標準装備し、さらに印象的な顔つきに仕上げられている。
それにしても、同じ名称を受け継ぎつつ従来型から大きく変わったのが、一見しての華やかさだ。
“3本爪”をモチーフとしたヘッドランプユニットと、その下に伸びる“牙”をほうふつさせるデイタイムランニングランプが目を引く「GTライン」のフロントマスクは、好みが分かれそうではありながらも周りのコンパクトカーの中に埋没することのない個性をアピール。左右に走るブラックバンド両端に、やはり“3本爪”をモチーフとしたテールランプをビルトインするという「3008」や「5008」、そして「508」といった最新プジョー車に共通する手法を採用した後ろ姿も、数多いこのクラスのライバルとは一線を画す独自性をアピールする。
そうしたディテールは別としても、全体の雰囲気が従来型よりも一層ダイナミズムに富んで感じられるのは、Aピラーの設置ポイントの変更により長さが強調されることになったフロントフードや、ゆるやかに傾斜したリアウィンドウ、そして、25mmほど低下した全高などによるところが大きそう。
さらに、独自性の真骨頂とも思えるのがインテリアのデザインで、ドライバーの前面、ダッシュボードの最も高い位置にメータークラスターを置き、それと同等の高さの中央部に多彩な機能を内蔵したディスプレイをレイアウト。エアコンの吹き出し口を挟んでその下部に空調コントロール関係をメインとした7つのトグルスイッチを横一列に並べる……というデザインは、3Dホログラム風のメーター表示とともになかなかに斬新だ。
もっとも、プジョーが「iコックピット」と呼ぶ、前出の高い位置に置かれたメーターをステアリングホイールの上側から読み取るという初代208に端を発したドライバー向けの空間デザインは、上下がつぶされ、かつ極端に小径化されたステアリングホイールをさらに不自然に低い位置にセットしないと、やはりメーターと干渉してしまうなど個人的にはどうしても相いれないものだった。
ただ一方でそれは、「全然気にならない」という意見を言う人が少なくないデザインであることも、また事実ではあるのだが。
“3本爪”をモチーフとしたヘッドランプユニットと、その下に伸びる“牙”をほうふつさせるデイタイムランニングランプが目を引く「GTライン」のフロントマスクは、好みが分かれそうではありながらも周りのコンパクトカーの中に埋没することのない個性をアピール。左右に走るブラックバンド両端に、やはり“3本爪”をモチーフとしたテールランプをビルトインするという「3008」や「5008」、そして「508」といった最新プジョー車に共通する手法を採用した後ろ姿も、数多いこのクラスのライバルとは一線を画す独自性をアピールする。
そうしたディテールは別としても、全体の雰囲気が従来型よりも一層ダイナミズムに富んで感じられるのは、Aピラーの設置ポイントの変更により長さが強調されることになったフロントフードや、ゆるやかに傾斜したリアウィンドウ、そして、25mmほど低下した全高などによるところが大きそう。
さらに、独自性の真骨頂とも思えるのがインテリアのデザインで、ドライバーの前面、ダッシュボードの最も高い位置にメータークラスターを置き、それと同等の高さの中央部に多彩な機能を内蔵したディスプレイをレイアウト。エアコンの吹き出し口を挟んでその下部に空調コントロール関係をメインとした7つのトグルスイッチを横一列に並べる……というデザインは、3Dホログラム風のメーター表示とともになかなかに斬新だ。
もっとも、プジョーが「iコックピット」と呼ぶ、前出の高い位置に置かれたメーターをステアリングホイールの上側から読み取るという初代208に端を発したドライバー向けの空間デザインは、上下がつぶされ、かつ極端に小径化されたステアリングホイールをさらに不自然に低い位置にセットしないと、やはりメーターと干渉してしまうなど個人的にはどうしても相いれないものだった。
ただ一方でそれは、「全然気にならない」という意見を言う人が少なくないデザインであることも、また事実ではあるのだが。
- いわゆるBセグメントに位置づけられる5ドアハッチバックの「208」。今回試乗した「GTライン」のボディーサイズは、全長×全幅×全高=4095×1745×1445mm、ホイールベース=2540mm。パノラミックガラスルーフ装着車の車重は1180kgと発表されている。
- 大型グリルや牙をモチーフとしたデイタイムランニングライト(DRL)など、最新のプジョー車に共通するデザイン要素で構築された「208」のフロントフェイス。「GTライン」では、3本の爪痕を表現するというDRL内蔵のフルLEDヘッドランプを標準装備し、さらに印象的な顔つきに仕上げられている。
グレードの差異は装備の違い
ボディーサイズからして多くを期待する人は少ないだろうが、大人4人が実用的に過ごせるキャビンを備えるとはいっても、後席空間には、やはりさほどの余裕はないのがこのモデルのパッケージングの現実でもある。
前席下への足入れ性には優れる一方で、「ニースペースは最低限」というのが、後席へと腰を下ろして感じる率直な第一印象。そんなリアシートはサイズそのものも小さめ。2540mmというホイールベースは先代から変わっていないこともあり、従来型に対する空間上のアドバンテージは感じられない。
一方ラゲッジスペースは、“床面積”はそれなりながら深さは予想と期待以上で、実際の使い勝手は悪くなさそう。ボード下にリペアキットではなくテンパータイヤを搭載するのは、サイドウオールへのダメージなどで一度でも“パンク立ち往生”の経験がある人にとっては、好感をもって迎えられるに違いないポイントだろう。
今回テストドライブを行ったGTラインは、日本において3グレードが用意されるエンジン搭載車の中では最上位となるモデル。“GT”とはうたうものの、いわゆるスポーツサスペンションなどの設定はなく、前述の“3本爪”ヘッドライトやドアミラー死角をカバーするアクティブブラインドスポットモニター(ステアリングに反力を与えて車線逸脱を抑制する機能付き)、専用シートの採用などといった装備の充実が下位グレードとの主な違いとなる。
加えて下位グレードが195/55の16インチのシューズを履くのに対し、こちらは205/45の17インチを装着。こちらは、走行テイストへの影響が考えられるポイントだ。
ちなみに、オプションでパノラミックガラスルーフが装着可能なのはGTラインのみ。そして今回のテスト車は、このアイテムを装着していた。
前席下への足入れ性には優れる一方で、「ニースペースは最低限」というのが、後席へと腰を下ろして感じる率直な第一印象。そんなリアシートはサイズそのものも小さめ。2540mmというホイールベースは先代から変わっていないこともあり、従来型に対する空間上のアドバンテージは感じられない。
一方ラゲッジスペースは、“床面積”はそれなりながら深さは予想と期待以上で、実際の使い勝手は悪くなさそう。ボード下にリペアキットではなくテンパータイヤを搭載するのは、サイドウオールへのダメージなどで一度でも“パンク立ち往生”の経験がある人にとっては、好感をもって迎えられるに違いないポイントだろう。
今回テストドライブを行ったGTラインは、日本において3グレードが用意されるエンジン搭載車の中では最上位となるモデル。“GT”とはうたうものの、いわゆるスポーツサスペンションなどの設定はなく、前述の“3本爪”ヘッドライトやドアミラー死角をカバーするアクティブブラインドスポットモニター(ステアリングに反力を与えて車線逸脱を抑制する機能付き)、専用シートの採用などといった装備の充実が下位グレードとの主な違いとなる。
加えて下位グレードが195/55の16インチのシューズを履くのに対し、こちらは205/45の17インチを装着。こちらは、走行テイストへの影響が考えられるポイントだ。
ちなみに、オプションでパノラミックガラスルーフが装着可能なのはGTラインのみ。そして今回のテスト車は、このアイテムを装着していた。
プジョーらしいフットワーク
- メーターパネルは遠近2層式。立体的に見えることから、プジョーではこれを「3Dデジタルヘッドアップインストゥルメントパネル」と呼んでいる。表示デザインは「ダイヤル/ドライブ/最小/パーソナル1/パーソナル2」の5種類から任意に選ぶことができる。
“ピュアテック”の愛称が与えられた1.2リッターのターボ付きエンジンは、相変わらず低中回転域でのトルクの太さと、3気筒ユニットであることを意識させないスムーズさがゴキゲンな仕上がり。まさに「ガソリンとディーゼルの良いとこどり」をしたかのようなテイストを備えたこの心臓が、昨今のプジョー(とシトロエン)車の魅力を高める大きな一因になっていることは疑いがない。
日本仕様に組み合わされるトランスミッションは、新作の8段ステップATのみ。100km/hクルージングは7速ギアでこなし、そこはちょっとばかりの“宝の持ち腐れ”感が否めないものの、「今後、高速道路の120km/h制限区間が拡充される」というニュースを聞くにつけ、日本では従来の6段ユニットからのなかなかタイムリーなアップデートであることも間違いない。
そのかいもあって、動力性能は必要にして十二分。メカニカルなノイズはさほど気にならない一方で、相対的に目立ったのはロードノイズ。残念ながら、トータルでは決して「静か」とはいえないのがこのモデルの静粛性に対する実力でもある。
どんな場面でも持て余すことのないボディーサイズも味方につけて、緩急さまざまなコーナーのいずれをも“自然にクリアしていける”フットワークは、プジョー車の面目躍如たる印象。一時期のプジョー車はタイヤ内圧が妙に高く設定され、それゆえ“タイヤ任せ”で曲がっていくような感覚がなきにしもあらずだったが、このモデルではきちんと荷重移動をさせながら、しっかり路面を捉えていくテイストが感じられ好ましい。
ただし「プラットフォームを刷新」と聞いていたこともあってか、思いのほか気になってしまったのがボディーに入った振動のダンピングに少々時間がかかること。端的に言って、それゆえいわゆるボディーの剛性感は期待したほどには高くなかったし、路面状態によっては時にフロア振動が気になったりした場面もあった。このあたり、オプションのガラスルーフの有無やシューズが16インチであったりすると、またフィーリングが異なるのだろうか。
ともあれ、さまざまなADAS(先進運転支援システム)の望外な充実ぶりなどもあって、近年まれにみる商品力の高さが印象的なヨーロッパ発のコンパクトカーである。こうなれば当然、自らがその自信のほどを高らかにうたうピュアEVバージョンも大いに楽しみになってくる、2代目の208なのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
日本仕様に組み合わされるトランスミッションは、新作の8段ステップATのみ。100km/hクルージングは7速ギアでこなし、そこはちょっとばかりの“宝の持ち腐れ”感が否めないものの、「今後、高速道路の120km/h制限区間が拡充される」というニュースを聞くにつけ、日本では従来の6段ユニットからのなかなかタイムリーなアップデートであることも間違いない。
そのかいもあって、動力性能は必要にして十二分。メカニカルなノイズはさほど気にならない一方で、相対的に目立ったのはロードノイズ。残念ながら、トータルでは決して「静か」とはいえないのがこのモデルの静粛性に対する実力でもある。
どんな場面でも持て余すことのないボディーサイズも味方につけて、緩急さまざまなコーナーのいずれをも“自然にクリアしていける”フットワークは、プジョー車の面目躍如たる印象。一時期のプジョー車はタイヤ内圧が妙に高く設定され、それゆえ“タイヤ任せ”で曲がっていくような感覚がなきにしもあらずだったが、このモデルではきちんと荷重移動をさせながら、しっかり路面を捉えていくテイストが感じられ好ましい。
ただし「プラットフォームを刷新」と聞いていたこともあってか、思いのほか気になってしまったのがボディーに入った振動のダンピングに少々時間がかかること。端的に言って、それゆえいわゆるボディーの剛性感は期待したほどには高くなかったし、路面状態によっては時にフロア振動が気になったりした場面もあった。このあたり、オプションのガラスルーフの有無やシューズが16インチであったりすると、またフィーリングが異なるのだろうか。
ともあれ、さまざまなADAS(先進運転支援システム)の望外な充実ぶりなどもあって、近年まれにみる商品力の高さが印象的なヨーロッパ発のコンパクトカーである。こうなれば当然、自らがその自信のほどを高らかにうたうピュアEVバージョンも大いに楽しみになってくる、2代目の208なのである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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