【試乗記】トヨタ・ハリアー ハイブリッドG(4WD/CVT)
- トヨタ・ハリアー ハイブリッドG(4WD/CVT)
目印を忘れずに
トヨタのラグジュアリーSUV「ハリアー」が4代目となる新型に生まれ変わった。その仕上がりにスキはなく、見ても乗ってもさすが最新モデルという完成度だ。だけどオーナーは出来栄えに満足する一方で、それに付随する別な悩みを抱えることになるだろう。
売れっ子SUV兄弟
新型コロナウイルスによる需要の消失で、2020年4~6月期の日本は戦後最悪のマイナス成長を記録したそうだ。同じころ、1カ月で1年2カ月分以上の需要を掘り起こしていたのが新型ハリアーである。6月17日の発売から立ち上がりひと月で4万5000台の受注があったという。月販目標は3100台。1年あまり先発の「RAV4」も快進撃中だが、あちらは月販目標3000台に対して立ち上がり2万4000台だったから、ハリアーの出足はそれをさらに大きく上回る。まるでコロナ知らずのトヨタ車だ。
ハリアーとRAV4は新世代プラットフォームとランニングコンポーネントを共用する兄弟車である。もともとはクラスが違っていた。しかもRAV4は今回復活するまでの数年間、日本市場を不在にしていた。その2車種をミドルクラスのSUVとして同じ素材の違う味つけでつくったら、両方とも当たった。プリウスの着せ替えSUVみたいな成り立ちの「C-HR」も相変わらず好調だ。いまSUVで攻勢をかけるメーカーは数多いが、たくさん出しても決してハズさないトヨタのうまさには恐れ入る。
今回試乗したのは「ハイブリッドG」のE-Four(422万円)。2リッターガソリンと2.5リッターハイブリッドのどちらにもグレードは「Z」「G」「S」の3つが用意される。Gは上から2番目で、Zの19インチに対して18インチホイールを履く。ボイスコントロールでガラス屋根の明るさが変えられる調光パノラマルーフはGでは選択できない。しかし試乗車には60万円を超すオプションが付き、Zより高くなっていた。それなら最初から474万円のZにすればよかったと思うわけだが、トヨタ車初の調光パノラマルーフは最上級グレードでもさらに約20万円のオプションになる。そういうところもうまくできている。
ハリアーとRAV4は新世代プラットフォームとランニングコンポーネントを共用する兄弟車である。もともとはクラスが違っていた。しかもRAV4は今回復活するまでの数年間、日本市場を不在にしていた。その2車種をミドルクラスのSUVとして同じ素材の違う味つけでつくったら、両方とも当たった。プリウスの着せ替えSUVみたいな成り立ちの「C-HR」も相変わらず好調だ。いまSUVで攻勢をかけるメーカーは数多いが、たくさん出しても決してハズさないトヨタのうまさには恐れ入る。
今回試乗したのは「ハイブリッドG」のE-Four(422万円)。2リッターガソリンと2.5リッターハイブリッドのどちらにもグレードは「Z」「G」「S」の3つが用意される。Gは上から2番目で、Zの19インチに対して18インチホイールを履く。ボイスコントロールでガラス屋根の明るさが変えられる調光パノラマルーフはGでは選択できない。しかし試乗車には60万円を超すオプションが付き、Zより高くなっていた。それなら最初から474万円のZにすればよかったと思うわけだが、トヨタ車初の調光パノラマルーフは最上級グレードでもさらに約20万円のオプションになる。そういうところもうまくできている。
漂う外車感
近くに住む親戚が旧型の2リッターハリアーに乗っていて、最近も何度かハンドルを握った。そこからの新型ハリアーは、ウインカーを出すとたまにワイパーが動いてしまうクルマだった。
外車は左側にウインカーレバーがある。そのため、初めて外車を運転する人が右左折のときにワイパーを動かすのは外車あるあるである。筆者の場合、それを日本車でやってしまうことがたまにある。乗り味に“外車感”があるクルマだと、そっちからの入力でつい左側のワイパーレバーを動かしてしまうのだ。長年の職業病だ。
新型ハリアーに感じる外車感のみなもとは乗り心地である。剛性感の高いボディーの下で、サスペンションがしなやかに動く。想定速度域の高い欧州車に多い、いわゆる「フラットな乗り心地」だ。プラットフォームが変わるとこうも変わるのかと思った。
車重は1730kg。後輪駆動用のモーターをリアに置くE-Fourは、2WDのハイブリッドより70kg重い。乗り心地は基本、ズッシリ系だが、一方、低速域での路面からのゴツゴツした突き上げもよく抑えられている。いかにもストロークのし始めからスムーズなダンパーが付いている感じだ。18インチというほどほどのホイールセットをチョイスしていることも大きいはずだ。それやこれやで、走りだしたときから外車感が高かった。アウディのSUV「Q5」あたりを彷彿させる上等な乗り心地である。
外車は左側にウインカーレバーがある。そのため、初めて外車を運転する人が右左折のときにワイパーを動かすのは外車あるあるである。筆者の場合、それを日本車でやってしまうことがたまにある。乗り味に“外車感”があるクルマだと、そっちからの入力でつい左側のワイパーレバーを動かしてしまうのだ。長年の職業病だ。
新型ハリアーに感じる外車感のみなもとは乗り心地である。剛性感の高いボディーの下で、サスペンションがしなやかに動く。想定速度域の高い欧州車に多い、いわゆる「フラットな乗り心地」だ。プラットフォームが変わるとこうも変わるのかと思った。
車重は1730kg。後輪駆動用のモーターをリアに置くE-Fourは、2WDのハイブリッドより70kg重い。乗り心地は基本、ズッシリ系だが、一方、低速域での路面からのゴツゴツした突き上げもよく抑えられている。いかにもストロークのし始めからスムーズなダンパーが付いている感じだ。18インチというほどほどのホイールセットをチョイスしていることも大きいはずだ。それやこれやで、走りだしたときから外車感が高かった。アウディのSUV「Q5」あたりを彷彿させる上等な乗り心地である。
これぞスポーツハイブリッド
ハリアーハイブリッド、もうひとつのサプライズは“速さ”である。パワートレインは直噴2.5リッター4気筒に「THS II」を組み合わせたもの。RAV4はもとより「カムリ」や「レクサスES300h」にも使われている。最高出力はエンジンが178PS、モーターが120PS。E-Fourでは54PSの後輪用モーターも加勢する。
町なかで流していると、もちろん粛々と走る電動ユニットだが、ひとたび右足を踏み込めば“豪快”と言いたくなるほどパワフルだ。ドライブモードはノーマル、エコ、スポーツとあるが、エコでも踏めば速い。フル加速時のトルク感は、5リッターV8時代の「レクサスLS600h」を思い出させたが、あの重厚長大セダンのような大味な速さではない。パワー領域で走らせていると、スポーティーで楽しい。これをスポーツハイブリッドとうたわないトヨタは奥ゆかしすぎる。
ひとつ気になったのはフルパワー時のマナーだ。はずみグルマが回っているようなバイブレーションがハンドルに伝わる。飛ばすと豪快な印象を与えるのはそのせいでもある。SUVだからこの程度は大目に見てもいいが、日本製SUVの中では傑出した高級な乗り心地とはソゴがある。
約230kmを走って、燃費は13.6km/リッター(満タン法)だった。これだけパワフルな四駆SUVを堪能させてもらってこの数値は、わるくないと思った。
町なかで流していると、もちろん粛々と走る電動ユニットだが、ひとたび右足を踏み込めば“豪快”と言いたくなるほどパワフルだ。ドライブモードはノーマル、エコ、スポーツとあるが、エコでも踏めば速い。フル加速時のトルク感は、5リッターV8時代の「レクサスLS600h」を思い出させたが、あの重厚長大セダンのような大味な速さではない。パワー領域で走らせていると、スポーティーで楽しい。これをスポーツハイブリッドとうたわないトヨタは奥ゆかしすぎる。
ひとつ気になったのはフルパワー時のマナーだ。はずみグルマが回っているようなバイブレーションがハンドルに伝わる。飛ばすと豪快な印象を与えるのはそのせいでもある。SUVだからこの程度は大目に見てもいいが、日本製SUVの中では傑出した高級な乗り心地とはソゴがある。
約230kmを走って、燃費は13.6km/リッター(満タン法)だった。これだけパワフルな四駆SUVを堪能させてもらってこの数値は、わるくないと思った。
スキのない仕上がり
ハリアーが売れているのは間違いなく、発売2カ月あまりの都内で早くもチラホラ見かける。この時期、クルマを買った人がじっくり試乗して決めたとはとても思えない。多くは信用買いだったはずだが、ハリアーの場合、満足度は期待以上だろう。今回、試乗車をためしてそう実感した。
スタイリングも特に斜め後ろ姿などは外車感が高い。マツダが「CXシリーズ」などで追求してきた耽美的デザインを「それってこういうことでしょ」とばかり、もっと一般にわかりやすく見せている感じだ。
内装では馬の鞍をイメージしたというセンターコンソールがハリアーの特徴だ。でも試乗車は内装がグレーだったのであまりありがたみはなかった。馬の鞍が好きな人はブラウンのインテリアを選ぶに限る。
下降していくルーフラインのため、後席の頭上空間はそれほどでもないが、リアシートの足もとは広い。荷室も広い。高い荷室フロアに対して天井は低めだから、かさのある重量物を出し入れするのは得意ではないものの、9.5インチのゴルフバッグが3個入るという。ゴルファーにとってこれからの悩みは、駐車場に同じハリアーがいすぎることかもしれない。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
スタイリングも特に斜め後ろ姿などは外車感が高い。マツダが「CXシリーズ」などで追求してきた耽美的デザインを「それってこういうことでしょ」とばかり、もっと一般にわかりやすく見せている感じだ。
内装では馬の鞍をイメージしたというセンターコンソールがハリアーの特徴だ。でも試乗車は内装がグレーだったのであまりありがたみはなかった。馬の鞍が好きな人はブラウンのインテリアを選ぶに限る。
下降していくルーフラインのため、後席の頭上空間はそれほどでもないが、リアシートの足もとは広い。荷室も広い。高い荷室フロアに対して天井は低めだから、かさのある重量物を出し入れするのは得意ではないものの、9.5インチのゴルフバッグが3個入るという。ゴルファーにとってこれからの悩みは、駐車場に同じハリアーがいすぎることかもしれない。
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