【試乗記】トヨタRAV4 PHV G(4WD/CVT)
これぞ令和の旦那グルマ
最初に感じたのは上質感
ただ乗れば乗るほど、「このシャシーを使って、もっとスペシャルな一台をつくればいいのに」という気持ちが強くなった。いたずらに「ハイパワー4WD万歳!」と叫んでいるわけではない。人間で言うところの“体幹”が鍛えられているかのような、アスリート的な身のこなし。これを使い切っていないことが、なにかもったいなく感じたのだ。
それを告げると、「もう少し待っていてください」と、開発陣のひとりは自信ありげに答えてくれた。それがこの、RAV4 PHVだったわけである。
とはいえその実物は、事前に想像していたものとは違うクルマだった。ジャーマンスリーで言うところの“AMG”や“M”“RS”という感じではない。みてくれこそエッジーだが、それは標準のRAV4も同じ。全幅も拡大されず、全高はむしろ高められているようである。
走りだしても、まず印象に残ったのは静かさだった。これからの時代においてトレンドとなってゆく、ピュアEVの乗り味である。編集部から借り出して、夜の街並みを音もなく走りだす。クランキング時のキシュッ! というさく裂音や、ブルブルン! と震える低級振動なしに、いきなりこの巨体がスーッと走りだす様は、わかっていても新鮮。そして、洗練されたもてなしを味わったような気持ちになる。
走りだしてからも、エンジンの気配は感じられない。というか、エンジンがなかなかかからない。ロードノイズを完全にシャットアウトするほど遮音は効いていないが、エンジンの存在が消された車内は癒やしにあふれている。ここでお気に入りの音楽を流せば、気持ちをさらに落ち着かせるのも、アゲるのも自在だ。
……うーん、上質。MやRSじゃなくても、いいかもしんない。
もはやデフォルトはEV走行
それにしても、RAV4 PHVはハイブリッド走行時も静かだ。走行のほとんどをモーターで走り、いつの間にかかかっていたエンジンは、残り1割でどのように動いていたのかを、乗り手に悟らせない。そこには総電力量18.1kWhを誇るリチウムイオンバッテリーと、前述した遮音性、そしてパワートレインの静粛性の高さが表れている。
従って、RAV4 PHVでは“静かな走り”が求められるシーンだからと「EVモード」を選択する必要はないとまで感じた。かつてエンジンの始動に耳を澄まし、そこにツッコミを入れた時代が懐かしくなるほど快適である。後は純粋に、環境負荷や経済性を気にするオーナーが、近場であれば「EVモード」、ロングドライブであれば「HVモード」というようにいろいろ試しながら、自身の使い方で最もエネルギー効率のよい走りを実践するのに使えばよいだろう。
こうしたパワートレインへの理解に対し、ハンドリング等その他の操作感に関しては、最初軽い戸惑いを覚えた。
まずステアリングインフォメーションが薄い。そしてそこそこ大柄なボディーを街なかで操る上で、微少舵角域が落ち着かない。ハンドルを切れば、確実にクルマは曲がる。でも、そこにやや実感が伴わないのである。これはダンパーの初期減衰力の立ち上がりが遅いからだろう。そこに電動パワーステアリングの“軽さ”が加わって、手のひらでタイヤの存在が感じ取りにくくなっているのだ。
またアクセルも重めに感じた。それが実際の重さなのか、モーターの初期トルクを抑えたことによる反応の鈍さからなのか。恐らくはその両方だろう。
「スポーツモード」がしっくりくる
というのも、ここまではドライブモードセレクトが「ノーマルモード」での話で、これを「スポーツモード」に入れると、電動パワステやモーター出力のレスポンスなどが総合的にリニアさを増し、とにかくクルマの挙動がよくなるのだ。
ステアリングには適切な据わりがあり、直進安定性が高まる。操舵応答性はシャープ過ぎず、カーブでは誰もが安心してこれを切り込んでいけるだろう。ハンドルを切った瞬間から車体が滑らかに反応し、手のひらにはタイヤの踏ん張り感がジワーッと伝わってくる。だから中・高速コーナーがとても気持ちいい。逆にその巨体ゆえタイトコーナーは得意じゃないが、それでも内輪ブレーキや4WDのトルク制御などが黒子的に働いてか、思った以上に小回りが利く。これがデフォルトであってもよいと思える仕上がりだった。
2.5リッター直列4気筒エンジン(177PS/219N・m)も、ここぞとばかりに自然吸気(NA)ユニットのシャープなサウンドを盛り上げる。それと同時に、まさに間髪入れずというタイミングで圧倒的なトルクが押し寄せ、一瞬のけぞるような加速をみせる。これがシステム出力で306psを発生する、“E-Booster”の真骨頂か。
減速と制動にもこだわりを
ただ、これだけの加速性能を持っているならば、ブレーキ性能もより高いほうが望ましい。この速さと重さに対して現状でもうまくバランスが取れてはいるが、制動力で絶対の余裕を持たせ、タッチの正確性を高めてほしいのだ。タイヤのグリップ性能を上げてしまうと、そのしなやかな乗り味が失われてしまうジレンマがあるかもしれない。また摩擦ブレーキと回生ブレーキを連携させるブレーキシステムのペダルタッチにソリッドさを求めるのは酷なのかもしれない。しかし、それを技術で克服して、このしなやかさに強靱(きょうじん)さを加えられれば、ジャーマンスリーとはまた違う“トヨタのすごみ”が出せるのではないか。
さらに付け加えれば、シフトパドル(あるいは回生ブレーキの強さを調整するステアリングパドル)も付けてほしい。現状でもセレクターノブには6段の疑似変速を可能にするシーケンシャルシフトマチックが付いているし、アクセルオフで回生ブレーキが利いて、上手にフロントに荷重を乗せられるのだが、パドルによる段階的なブレーキ制御が可能になれば、さらにクルマを操っている感覚が強くなると思うのだ。
求む! GRバージョン
というわけで、最後は「バッテリーチャージモード」に入れて山道を下った。するとエンジンの稼働率が高まって、その存在感も少しだけ大きくなった。と言ってもその騒音は、普通のハイブリッド車のレベル。そして20kmほど走り、麓(ふもと)に降りる頃には、半分くらいまでバッテリーがチャージされていた。
総じてRAV4 PHVは、ジャーマンスリーで言うところのワークス格ではなかった。むしろBMWで言えばMよりアルピナ的で、その乗り心地のしなやかさや応答性のリニアさ、トヨタ的至れり尽くせり具合は、「人間がダメになってしまうのんじゃないかしらん?」と思えるほど周到だった。正直言えば、これで十分。
しかし、だからこそ、ここはひとつ「GR」バッジを付けた骨太モデルも出してほしい。昔は国産車にも、各モデルにそうしたグレードがあった。みんなが憧れるスペシャルモデルがあることで、シリーズ全体が活気づいた。そんなことが今できるのは、トヨタしかない。
もっとも、そんなグレードが存在しなくともベースモデルで469万円、上級グレードで539万円もするRAV4 PHVは売れている。バッテリーの生産が追いつかないほど注文を集め、今は受注を止めているというありさまなのだから、こんなことを提案してもトヨタ的には「余計なこと言わないでくれ」という感じだろうとは思うのだけど。
(文=山田弘樹/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)
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