【試乗記】フォルクスワーゲン・パサートTDIエレガンス アドバンス(FF/7AT)
“最新”をキャッチアップ
7年目のマイナーチェンジ
そこから数えて8代目となるのが、フォルクスワーゲンの横置きパワーユニット用として最新のモジュラー骨格「MQB」を採用、2014年に発表されたB8型と呼ばれる現行モデルだ。今回ステアリングを握ったのは、この4月6日に日本で発売されたばかりの、マイナーチェンジが施された最新バージョンである。
単にパサートと紹介される「セダン」に加えて、フォルクスワーゲンの流儀で「ヴァリアント」を名乗るステーションワゴン、さらにそれをベースとしながら専用デザインのバンパーやフェンダーエクステンションなどで軽くSUV仕立ての装飾を施し、シリーズ中で唯一となる4WDシャシーが与えられた「オールトラック」という3タイプで構成されるのは、マイナーチェンジ以前と同様だ。
日本仕様では、セダンとヴァリアントにはターボ付きの4気筒直噴のガソリンとディーゼルエンジンが設定され、オールトラックはディーゼルのみという設定も従来通りだが、今回のマイナーチェンジで目玉となるニュースのひとつは、ガソリンユニットの排気量がこれまでの1389ccから1497ccへとライトサイジング化されたこと。さらに、ディーゼルエンジンと組み合わされる「DSG」、すなわちデュアルクラッチトランスミッション(DCT)が、これまでの6段から新たに7段へと変更されたこともトピックのひとつである。
新デザインのロゴがポイント
とはいえ、ユーザー層の若返りを図ろうとあえてトリッキーなデザインを入れ込む例が少なくない最近の一部モデルに比べると、いかにも端正で無理のないセダンルックのスタイリングには、事実、得も言われぬ安心感や好感を抱くことができる。こんな落ち着けるデザインのセダンが欲しいという人々は、さほど多くはないとしても少なからず存在することは間違いないだろう。
同時に、そんな最新のパサートセダンのルックスにどこか新しさも感じられたのは、前後バンパーのデザイン刷新などマイナーチェンジによる化粧直しの効果ももとより、フロントグリルやオープナーを兼用するトランクリッド中央に配された「VW」のロゴが、「デジタルメディアとの親和性の高さも狙った」と紹介される、新デザインへと変更されていたからでもあったように思う。
もちろん、「V」と「W」の2文字をモチーフとする点には変更はなく、「書体がより平板なものへと変更されただけ」とも言えそうだ。けれども、旧ロゴが長年見慣れたものであっただけに、それが微妙に変更された効果は意外にも大きく感じられたのだ。
インテリアの雰囲気が変わったと思えたのも、ステアリングホイール中心に入るこのロゴの変更が効いていそうだ。一方で、これまで存在したダッシュボード中央の小さなアナログ時計が姿を消してしまったのは、パサートならではのインテリアのアイコンを失ったようにも思え、ちょっと残念だった。
滑らかな7段DCT
経年変化で変速の質が低下し、特に微低速シーンでのギクシャク感が増加するなどと、一部で耐久性への不安も耳にするDSGだが、総走行距離がまだ1000km強にすぎなかったテスト車ではもちろんそうした兆候などみじんもなし。むしろ微低速時のアクセルワークに伴う滑らかさという点では、これまで乗った経験のある各社のDCT搭載モデルの中にあっても、「最上級」という感覚を覚えることとなった。
走行中の静粛性は悪くはないが、「特に静か」という印象を受けることもなかった。相対的には、自らが発するノイズよりも「サイドウィンドウを透過して届く車外からのノイズが目立つ」という傾向が強かったようにも思えた。いずれにしても、マイナーチェンジによる静粛性の向上は感じられなかったと報告しておきたい。
VW車の中にあって、かねてパサート系で好んで用いられてきたパンクを補修するシール材入りタイヤの採用は今回も踏襲。タイヤ内面にあらかじめ特殊なシール材を塗布しておくことで、くぎ踏みなどトレッド面の小さな穴あきに対して、それを瞬時にふさいでくれるテスト車のタイヤはピレリ製だった。注意喚起のためのセブラ舗装が施された路面などにおける振動のダンピングは今ひとつの印象で、ややバタつき感が目立つことになったのは、あるいはそんな特殊タイヤの影響があってのことかもしれない。
一方で、スペアタイヤはもちろん、パンク修理剤などの搭載も不要になるので、ただでさえ広大なトランクルームのボリュームをさらに拡大する効用が確認できたことは言うまでもない。
運転支援システムは一線級
日本語では同一車線内全車速運転支援システムと紹介されるトラベルアシストは、実際のドライビング中にすこぶる使いやすかった。それはこの機能が、ステアリングホイール上のスイッチ操作ひとつですぐに起動するというロジックになっていたからでもある。
他社の同類システムではほとんど場合、作動前の準備段階としてまずメインスイッチを押し、システムを立ち上げる必要がある。もちろんそこに「より安全性を高めたい」という理由があることは理解できるのだが、実際にはそんな“ひと手間”が使い勝手を著しく低下させていると常々感じていた。
ところが、そこをスキップできるパサートのロジックは、使うたびに手軽さと快適さを実感。そもそも、ブレーキペダルをわずかでも踏めば機能は瞬時に解除される仕組みなので、むしろ操作が煩雑化して分かりにくくなる準備段階を設けることは、「安全の理念に反する」とさえ思えることになった。
逆に、狭い道などで車線を示す白線に触れるとステアリングホイールに補正トルクが介入するため、あえて「レーンキープアシスト」を解除しても、次回のエンジン始動時には必ずそれが復帰してしまうロジックには閉口させられることに。あるいは、回避する設定があったのかもしれないが、限られた試乗時間内にそれを発見することはできなかった。
eSIMの内蔵で常時通信が可能になるなど、進化がうたわれたコネクティビティーの機能も、やはり試乗時間内にその優位性を実感するまでには至らず。それでも、「ナビの地図更新がOTAによるオンライン方式で可能になった」と聞けば、ありがたみは増す。
デビューから丸6年が経過して、その間の世の中の進歩をキャッチアップ──要はそのように理解できるリファインが行われた最新パサートである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4790×1830×1470mm
ホイールベース:2790mm
車重:1560kg
駆動方式FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190PS(140kW)/3500-4000rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1900-3300rpm
タイヤ:(前)235/45R18 94W/(後)235/45R18 94W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:534万9000円/テスト車=538万2000円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万3000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1022km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:224.4km
使用燃料:13.1リッター(軽油)
参考燃費:17.1km/リッター(満タン法)/16.7km/リッター(車載燃費計計測値)
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